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3章 52話 穴からの脱出02

ナーニャのロープを支えにしての華麗なる壁蹴りステップ。

今の僕はただのお荷物リックサックとして揺られ、息を潜めている。


「もう少しで頂上ね。

 玲音、また落ちないように腰を入れて踏ん張りなさいよ」


ナーニャはロープが緩んで落ちそうになったも

僕を器用に尻尾を使って助けてくれた。

それにナーニャの茶化した筋肉も女性らしくしなやかに引き締まっていて、

担いで登ってくれた恩も含めお釣りが出るぐらい癒やされた。

今まで召喚されて修羅場、修羅場で正直な気持ち生きた心地がしなかった。

だから今だけは女の子の良い香りに包まれて、

少々鼻を伸ばしても罰当たらないと思う。

まあ、キモって妹の沙耶奈に罵倒されそうなのはご愛敬ってことで。


「ラジャーー」


後はかっこくよくナーニャに別れを告げ、ノバラから立ち去ろう。

僕はスフレを助けるってカティアと約束したんだ。

ふとそんなキザこと考えいると青かった空がたちまち暗くなってくる。


「急な雨が降ってくるかもしれない。足場には気をつけてっ」


だが僕の言葉は聞こえなかったのか?

突然目の色を変えたナーニャが空を見上げ、


「ようやく姿を現れたわねっ、インゴッドドラゴン・ルミエール」


稲妻がほとばしり、そのナーニャの叫び通り強烈な地響きと共に

1匹のドラゴンが舞い降りてくる。

赤い胴から生えている3つの首に1つ目の顔。

1度引っかかれたら手足がバラバラになって引きちぎれそうなほど

まがまがしく鋭い爪に大きな茶翼。


「グギャーァァァーーー!」


3D映画館以上の画質とサウンドのハーモニー。

まさにラスボス級の大迫力でのご登場ある。


「そうそうインゴッドドラゴン・ルミエール。

 はい? 嘘でしょ、あの金貨30枚のインゴッドドラゴンが

 ま、まさか……現実に現れるなんて」


「たぶん玲音が思っているのは

 一般的な下位のインゴッドドラゴンね」


「下位って、冗談でしょ」


ギルドで見たインゴッドドラゴンの手配書は断トツに古ぼけていた。

それだけ冒険者が手を焼いて証明にもなるわけであり、

一方的な勝手な思い込みでもいい。僕には待っている友達がいるんだ。

だからここで死ぬわけにはいかない。でも戦うのは怖い。


「こら、ちょっと震えるなっ。そんな元気があるなら、

 迅速にあたしの頭や肩を踏んで地上まで上がりなさい。

 じゃないとここのまま2人とも共倒れになるっ」


「でもそれじゃあナーニャは……」


「あんたが重荷なのよ、それぐらい察してよ」


ナーニャの気迫に後押しされ、僕は右肩をかばい左腕を伸ばす。

そしてナーニャの肩一点に力を込める。


「……う、うぐぅ」


初めて聞いたナーニャの苦痛の声。だけど手を休めるわけにはいかない。

そのまま一気に体を持ち上げていく。一瞬、ナーニャの顔が交差。

歯を食いしばっているナーニャに僕は頭を下げ、


「ごめん」


「いーーーだ。謝る暇があるなら、早く登れっ」


それはごもっもの意見で……。ナーニャの気持ちも考えろ。

ナーニャは組体操のピラミッドで土台になって頑張っている

人々と気持ちが同じなんだぞ。そのことをもっと身に染みて、天を目指せ。

再び僕はナーニャの肩そして後頭部を踏み台にして強引に地上へと這い上がる。


「さあ次はナーニャの番だ」


僕は直ぐさま振り返り、四つん這いになってナーニャに手を差し伸べる。


「あたし達の協力関係もここで終わりよ。

 さあ、部外者のあんたはとっととあっちにいけっ」


「……まだ終わりじゃない」


そんな僕を気遣うようにナーニャは笑って、


「ノバラのヒトはみんな良いヒト。

 でもあのドラゴンが住み着いてこのノバラが悪に染まっていったのも事実。

 だからあたしの力でこの悪しきノバラの呪いを解放する」


僕の手に触れることなくロープを離すナーニャ。


「バイバイ、玲音」


ナーニャは真っ逆さまに落ちていく。


「ナーーニャっーーー」


自己犠牲は美しくてかっこよく僕がよく使うテンプレの逃げ道だった。

僕が全ての悪意を受け入れて悪者になる。

周りのヒトが僕をネタに笑ってくれればそれだけでいい。

僕以外は悲しむ者はこの世からいない幸せが溢れている夢のような世界。

今は立場がその、逆だから……あいつらのようにナーニャのことを

バカだと罵って笑えばいい。

ナーニャの遺体がドラゴンの注意を引きつけてくれたら

ラッキーなことだ。僕は優雅に散歩してノバラを離れればいい。

僕はカティアとスフレのためにも生きないといけない。

今は自分勝手な行動で犬死にはできない。でも……。

幼い頃は感情がないロボットってあだ名だったじゃないか?

早くここから逃げないとまたあの時みたいにスクラップにされてしまう。

ならカティアとスフレも見捨て自由になるのが正解なのか?

また頭が割れるように痛い。食道に大石が詰まったみたいで吐きそうだ。


「グオオャーァァァーーー」


聞こえてくるのは虚しきインゴッドドラゴンの咆哮。

何もかも終わった。

きっとナーニャはあの恐ろしいドラゴンに食い殺されたんだ。

次に目を開けるのが怖い。ボロボロになった人形を見るのが怖い。

また僕はナンバー32さんのように見殺しにしたのか?

僕は名探偵で出会った人々を地獄へと導いてしまう存在じゃないのか?

だったら、僕が生きる意味、いや資格がない。

もし仮に僕がまぐれで大切な友達が作れたとしても

それは一瞬の悲しみとなって心の中だけで生きていく。

そんな悲しいことってないよ。

お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。

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作者の書くモチベーションにも繋がってきます。

この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、

読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?

少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。

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