表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/56

3章 48話 忍法2人羽織の術

「どうなされましたか? 冒険者様」


外から掠れたイスカンさんの声が聞こえてくる。


「……まずい、どうしよう? どうしよう?」


あの強気満々だったナーニャが脂汗を流して焦っている。

いたずらの心に多少性欲も出てくるは若気の至り?

男として生まれた野生の本能が発動したのかもしれない。


「この部屋には隠れる所は1つしかないかな?」


そう貯め気味に説明して僕はまた布団をめくり上げる。

全然モテなかった僕だからこそ、

女の子と一緒に寝れる夢みたいなシチュエーション。

弱みに漬け込む卑劣な行為と頭では理解している。

でもこの一世一代の大チャンスを逃すわけにもいかない。

ごめんなさい田崎さん。今日で僕は大人の階段を一段踏み上がるんだ。


「うん、ありがとう」


「いえいえ、どういたしまして」


2人頭を下げてのお見合い婚活。


「どうしたの? 早く布団に隠れないとイスカンさんに見つかるよ?」


恥ずかしい気持ちは僕も同じだからそんなに睨まなくてもいいんだよ。

別にお互い全裸で寝るわけでもないし、一緒の布団に入って

冷えた体を温め合うだけだから。だがナーニャは大きく腰を左に捻って、


「……なら早く布団から退きなさいよっ」


そんな些細な願いも天には届かず、繰り出される渾身の回し蹴り。

バシコーーーンッってばかりに一瞬僕の体が宙に浮いてしまって、


「わぁー」


わっと言う間に布団から冷たい床へと追い出されてしまう。


「痛てて……いきなりなにするんだよ、ナーニャっ」


電光石火のごとく膨れあがったお布団から、


「ナーニャなんて美少女ここにはいませんよ~だ」


って自画自賛の謎の美少女の声が聞こえてきた。

自分のことを美少女って言うあたりカティアの同じポンコツの匂いがする。

このままイスカンさんに謎の美少女を不審者として突き出してもいいのだが、

弱い者いじめをしているみたいで急に胸が苦しくなる。


「もう分かったよ。

 僕がイスカンさんを食い止めているからその隙に出て……」


「いったい何事ですじゃ? 冒険者様。いいですか? 開きますぞ」


やばい、声がそこまで来ている。

もう外でイスカンさんを出向かえる時間もない。

今入ったらダメですって応じるのも後で変な誤解を生みそうだし。

もうこれしか方法はないか? 


「ごめんな、ナーニャ」


僕は小さく呟くとナーニャが隠れている布団の中に

強引に下半身を滑り込ませる。


ガラガラガラ。

豪快に引き戸が開かれ、ひょっこりとイスカンさんの顔が現れる。


「いったいどうなされましたか? 冒険者様」


「大きなゴキブリが出たんですよ? それでつい慌てて。

 まるで僕は女の子みたいですね、あはは……」


ドス、ゴソ……おい、ナーニャ。

大きなゴキブリ呼ばわりしたのは悪かったけど暴れるなって。

僕が上半身でナーニャが下半身の変則2人羽織。

憧れた一緒の添い寝とは違う斬新なプレイスタイル。

膝を伸ばして座った状態にナーニャが丸くなって足に乗っている。

本来なら興奮するほど嬉しいシチュエーションのはずなのだが……。

ある意味で男の大事なシンボルが人質になっているわけだから

素直に喜ぶこともできない微妙な立ち位置で非情に困ったものである。


「女の子ですか? おおいに結構、結構」


「おおいに結構??」


「いえ、その男にも女性のような柔軟な優しさと申しますか?

 慈愛の母性と申しますか?」


「……それは太古昔の男女差別の考えですよ? イスカンさん。

 女の子でも繁殖期のゴリラのように日々暴力に慢心する者を

 僕は身に染みて知っています」


沙耶奈、元気にしているかな?

また腹を出して寝て風邪を引いてなければいいけど。


「ゴ、ゴリラですか? それは随分と野性的な女性ですな?」


さすがの落ち着いたイスカンさんさえドン引きしている。


「それはそうと部屋の掃除が行き届いていませんで冒険者様に

 多大な迷惑をかけてしまいました」


「いえいえ、迷惑なんて。

 こちらこそ大声を出してしまってすいませんでした」


「それは朝ご飯の準備に戻りますので私は失礼します」


「はい、お気遣いなく」


「どうかごゆっくりとくつろいでいて下さい」


そう言ってイスカンさんはのそのそと客室から出ていく。


「そこの美少女? イスカンさんは出ていったぞ」


「おい、誰がゴリラだってっ」


パッと手を使わずに自動的にお布団がめくり上がるマジック。

そのお布団からなんとナーニャの可憐なる姿が現れるって……。


「はぁはぁはぁ……それによくも股間に顔を押しつける

 変態行為の真似をしてくれたわね。変態っ」


酸素不足か? いや自分が野生のゴリラだと再認識して興奮している?

いまいちよく分からないけど怒っている? 完全にキレているよね?


「ゴリラって言うのはそう妹の沙耶奈のことで……。

 それにナーニャが思いの外に暴れるから仕方なくだなぁ……」


「そうか? 沙耶奈ってあんたの妹だったのねって

 ……そこじゃないわよっ」


「……はい、誠にその通りでございます」


「そもそもあんたが腹パンでも首チョップでもして長老様を気絶させて

 その隙にあたしが逃げるとかいくらでも選択肢があったでしょうがっ」


「そんな無茶苦茶な。あれは漫画の表現で本来は気絶しないよって……」


なにナーニャに言いくるめられているんだ?


「いやいやそもそも恩を仇で返すことになるよね、美少女のナーニャさん」


「いーーだ。これだから軟弱な男は大嫌いなのよ。もう借り1でいいわ」


「なんだよ、いきなり借り1って」


「そ、それは……あたしに皆まで言わせるなよ。

 あんたの頭で考えろバーーーカ」


お金の貸し借りじゃないけど恩を売る行為自体が恩着せがましいって

相手に思わせるから昔から嫌いなんだ。

恐怖と隣り合わせでナーニャの肌の温もりが気持ちいいとか全然思わなかった。

まるで子犬を抱いている安らかな気分。

でも女の子であるナーニャはかなり気にしているみたいだし、


「いい思いをさせて貰ったんだから借りなんかいいよ。

 むしろお釣りが出るぐらいだよ。わりとナーニャって筋肉付いていたねっ。

 ひょっとして夢は世界一のボディビルを目指しているの?」


って爽やか顔で言葉を発するとまたナーニャが大きく腰を左に捻って、


「この変態ーーー野郎っ!」


「シーー」


僕は人差し指を口の前に立ててひたすら防衛にまわる。


「ダメだって。大声も暴力も今出したらまたイスカンさんが

 戻ってくるかもしれないだろ」


「そ、それもそうね。あんた命拾いしたわね」


ナーニャの蹴りが僕の頬をかすめて止まる。

1回目の回し蹴りは早すぎて見えなかったけど時間が止まったように

ナーニャの純白のパンツがあらわになってしまう。


「……あ、白だ」


「うん? きゃああーーーー……どこ見ているのよ。スケベ」


「シーー、静かにってもしもし聞こえていますか?」


「あ……そ、そんなことあんたに教えられなくても分かってるわよ」


ただナーニャは口と暴力は連動していたみたい。

僕を蹴れなかったことでナーニャの体内リズムが狂ったのか?

まだナーニャはパンツ丸出しの破廉恥な状態でフィギアみたいに固まっている。

ずっとナーニャのパンツを拝んでいてもそれはそれで神々しくて嬉しい。

でもこのままナーニャを放置していると変態さんの仲間入りするだけなので、

目のやり場に困るんだ。その華麗で美しいパンツを隠してくれると

嬉しいなってキザなセリフを僕は使えるはずもなくて、


「オラ、汚いパンツなんか別に見たくねーぞ」


ってつい先走って本音とは真逆なことを叫んでしまう。


「汚くないわよ 失礼ねっ」


またナーニャの蹴りの時が動き出す。


「ちょっと、ストッ……うぎゃ」


もろに頬を抉ってナーニャの足が見事にクリティカルット。

そのままバタンって僕はお布団に倒されてしまう。

ナーニャは体勢を戻して自慢げに腰に手を当てて、


「ふん、ちゃんと毎日お風呂に入ってからパンツは履き替えています」


はあはあ……い、息が苦しい。しかしそんなにどや顔で語ることなのか?

まあ、百歩譲って汚ギャルよりは格段にマシだと思うけど。


「お、痛てて、そもそもナーニャは何でここに来たんだよ?」


音を最小限に抑えるために計算して布団に倒れるように手加減して蹴ったり、

僕の体への気遣いも至れり尽くせりで、もしかしてナーニャって賢いのか?


「あははそれは……あんたがあたしのことをキャバ嬢って

 いやらしい目で見るから話がややこしくなったんでしょうっ!」


「もしもしまた何事ですかな?」


ナイスタイミング? またイスカンさんの声が聞こえくる。


「だからシーーって」


「……あ」


今のは全て前言撤回。

ナーニャは知能は出なく感情で動く脳筋タイプの獣人でした。

お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。

上下にブックマークに追加。

および下にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』の

☆でも押して頂けると更に嬉しいです。

作者の書くモチベーションにも繋がってきます。

この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、

読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?

少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ