2章 45話 真の仲間
「ここは?」
目を開けると僕は知らない固いベットの上に寝かされていた。
随分と時間が経ったような気がする。
「まだ僕は生きて……」
「ようやく起きました。あなたに聞きたいことが山ほどあります」
「……カティア」
丸いテーブルに本棚。花瓶にタンスと生活感ある部屋に
溶け込んでいたカティア。まだカティアとは数日間しか出会っていない。
だがその表情はいつもとは違う氷のようで。
別の魂が体に乗り移っているじゃないかってぐらい違う冷たい眼差しで
僕を見ていた。
「弱っているあなたにこんなことを言いたくはありませんが
ナンバー32を殺したんですか?」
寝起きから強烈なストレートパンチの言葉が脳に繰り出される。
「……ああ、僕が殺したんだ」
「わたしのことをずっと騙していたんですね。 この嘘つき」
冷徹な一撃必殺の言葉の数々。カティアのことを思って
僕はやっていたはずなのに。
「結果そういうことになるかな?」
どうしてカティアとの歯車が交わらなかったんだろう?
「あなたのことはお爺様と違って信じていたのに」
「実はカティアとはロージーさん頼まれただけの関係だったんだ」
もうカティアには嘘はつけない。
「……そうだったんですか? じゃ、あなたの大事な指輪がありませんけど。
それも、もしかしてわたしを助けるために売ったんですか?」
「うん」
「なら、何でそんなに優しいところもあるのにナンバー32を殺すんですか?
おかしいじゃないですか? 理由があるんでしょ、もし理由があるなら
このわたしにちゃんと分かるように簡単に説明して下さいよっ」
「通り魔だって、自由にヒトを殺すのに。
ヒトを殺すのにそもそも理由がいるかい?」
最低な答えだと分かっている。だってカティアの回復力が足りなくて
ナンバー32が死んだって言えるはずないだろって。
一方的に友達と思えるヒトが苦しむ姿を見るのはもうたくさんなんだ。
「あなたって最低のクズです。もうわたしの前から消えてくれますか?」
「うん」
「どうせ、あなたは優しいお人好しだから
これからスフレちゃんを探す旅をするんですか?」
「うん」
「なら仕方ないですね~、
この天才美少女僧侶であるわたしが手伝いましょうか?」
あんなに怒っていたカティアが譲歩してくれている。でも、
「その気持ちだけで嬉しいよ。これ以上犯罪者と行動すると
カティアに迷惑をかけることになるから僕1人で頑張るよ」
元々ずっと僕は1人だったんだ。
この異世界くる以前からずっとずっと……。
「なんで、なんでわたしを信用してくれないのですか?
わたしはレオンハルトの仲間じゃなかったんですか?」
「それは……」
カティアを大事な仲間だと思っているから一緒に居られないんじゃないか?
それぐらい天才美少女僧侶なら悟ってくれって……。
「もういい、わたしはあなたと別行動でスフレちゃんを探します」
情報を集めるには固まって行動するよりも別れて探した方が効率がいい。
そんなことは誰でも知っている。でも目から流れ落ちる涙は止まらなかった。
今謝ったらまたカティアと旅が出来るかもしれない。
でもそんな勇気は僕にはなくて……。
「このひねれれ野郎のレオンハルトさん、さようなら……」
カティアは悲しそうに扉に向かって走って行く。
カティアに真実を告げれば正しかったのか?
しばらく考えても結論が出なかった。
「行くか?」
僕は魂が抜けてように空いた扉に向かう。
そして近くにあった階段を降りて行く。
どうやらその階段はギルドの中に繋がっていたみたい。
「随分と遅かったわね」
僕が降りてくるタイミングを見計らうように現れるロージーさん。
「カティアちゃんにあなたのことを頼むってお願いされているのよ」
「何でまたカティアが……」
「あなたを必死に運んでくれたのもカティアちゃん。
酒飲みがあなたの愚痴を言ってきて守ったのもカティアちゃん。
この数日でどれだけあなたはカティアちゃんに愛されていたのよ」
「カティアを家族に届けるって約束したのに。
またカティアと離れ離れになってしまって。
ロージーさん。本当にすいませんでした」
深々とロージーさんに頭を下げる。
「仕方ないわよ、スフレちゃんって妖精を助けるために別行動するって話に
なったんでしょ。友達は時より家族よりも大事よ。
そもそも家族と友達は天秤には掛けられないのよ。
でもカティアちゃん自信がが自分の家族よりもスフレちゃんを優先したの。
その意味分かる?」
「……カティア」
「全てあなたのためかもしれないのよ。
カティアちゃんはラナリアで情報を集めるって言っていたわ。
レオンハルトはノバラをお願いって」
「僕はカティアにどんな顔して会えばいいのでしょうか?」
「普通がいいんじゃない? いつものエロい目で
女の子をなめ回して見る感じで」
「いつ僕がそんな目で女の子を見ていたって言うんですかっ」
「その意気よ、あなたも男の子なんでしょ。
そのぐらい覇気がないと女の子は守れないんだからね」
「……ロージーさん」
「もう私に恋しても手遅れよ。そう、それからこれを持っていきなさい。
手紙はもちろんカティアちゃんからよ」
ロージーさんはそう言って僕の手の平に手紙2枚と
お金の入った袋を乗せてくる。
「確かロージーさんはお金は貸せないって
言っていたような気がするんですが……」
「それはギルドでの話のことね。個人的にはまた話は別よ。
あなたが寝ていたベットだってどの冒険者にも貸せない
私個人の代物だからね」
「何から何まで本当にありがとうございました。ロージーさん」
「お礼を言う暇があるなら、早くスフレって妖精を助けるため情報を
集めてきなさい。マガディでの情報収集は全て私に任せてね」
「ありがとうございます。ロージーさん」
「またお礼言って、そこがあなたの1番なダメなところだと思うわ。
早く歳上の言うことを聞いて、カティアちゃんのためにも旅立ちなさい。
いつまでなってもカティアちゃんが家に帰れなくなるじゃない?」
「ありが……行ってきます、ロージーさん」
「うん、その志よ。頑張れ、玲音」
「はい、ところでまだ僕はお恥ずかしことに手紙の文字が読めないのです。
ですからあの、その読んで下さると助かります」
もし死が錯列している呪いの手紙ような内容だったらどうしよう?
でも読まない訳もいかないし、今は頭を空っぽにしてカティアからの
愛の告白のメッセージだと考えるんだ。
「そ、それを早く言いなさいよっ。もう」
強引に僕からロージーさんが手紙をかっさると、
「1枚目はマガディの通行許可書。これがないと
またマガディに戻ってこれないからね。
そしてこれが本題であるカティアちゃんの手紙」
「まだ心の準備が……」
「往生際が悪い。もうつべこべ言わずにカティアちゃんの言葉を聞きなさい」
カティアがくれた手紙にはこう書かれていた。
アイシアさんがくれた金貨はたぶん偽物じゃない気がする。
学校の教科書で見た古い王族の金貨にそっくりだったんだもん。
アイシアさんはレオンハルトとのことを決して騙してはいなかったんだよ。
アイシアさんもナンバー32と同じように青い空を見上げている1人。
だからまたレオンハルトが生きていればいつか巡り会えると思うよ。
先ずは一緒に酷い目に遭っているかもしれないスフレちゃんを解放して
必ず救い出してあげようね。天才美少女僧侶カティアより。
これは……余りにも酷すぎる内容で。
カティアは僕とけんかするって分かっていて
あんな風に立ち回ってくれていたんだ。
そして誰よりも僕のことを信じて理解してくれている。
僕が強情なひねれれ野郎な性格も全て承知した上で挑発していたんだ。
「私の思った通りでやっぱりあなたって
カティアちゃんに信頼されているじゃない」
「そ、そうですね。では改めて行ってきます」
「今度はカティアちゃんを泣かすんじゃないわよ」
「はい」
僕も直ぐに旅立とう、スフレを探しに。
そしてまた今度は笑顔でカティアに出会うんだ。
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