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2章 29話 おんぼろ宿屋

「ここはどこですか?」


歪んだベッドの上からオロオロした声が聞こえてくる。


「起きたのか? カティア」


うーーん、床が固すぎて腰が痛い。

だから安い宿屋って……ああ高級ホテルでも床に寝たら腰が

痛くなるのは同じか? それにしても眩しいな。まだ僕は眠たいんだ。


「何でわたしの名前を知っているんですか?」


口元を手で押さえて大きなあくびが出るのを我慢しながら、


「そりゃあカティアと拳を交わした僕も神様の端くれだからね。痛てて。

 実は僕には命じた者を洗脳して操る能力があったんだ」


そんな魔法みたいな力があれば楽にこの異世界を無双出来たんだけど。


「それでちょちょいのちょいって感じで君の名前を聞き出し、

 この宿屋まで誘導したんだ。だから安心してくれる?

 決してカティアの体にはいっさい触れていないから」


この歳頃の女の子は凄くデリケートな問題だからな。

カティアの胸の膨らみを背中に感じながらおんぶして運びましたって

正直に答えたらきっと死ぬまでセクハラ男呼ばわりされて、

今後とも色々と面倒なことになりそうだし。まずまずの模範解答である。


「このスケベっ、変態!!」


枕や布団、置き時計といった有りと有らゆる宿屋に

備え付けられている備品がカティアの手によって放物線を描いて飛んでくる。


「もう危ないな。床に傷が付いたらどうするんだよ。

 置き時計だってもし壊れたら僕たちが弁償しないといけなくなるだろって」


「もーう、男のくせに物ばっかり心配して。

 どうせ私のこと何か食事で簡単に釣れる軽い女とか思っていたんでしょ」


「痛てて、何でそうなるんだよ?

 僕はカティアのことを1番に思ってだな……」


ああ、そうか? 洗脳って危ない設定が不味かったのか?

そりゃあそうだよな。見知らぬ男が女の子を操ったら

普通はまずいかがわしいことをしたかって真っ先に疑うのも当然だよな?

そもそも僕は睡眠不足で頭が直ぐに回るはずがなかったんだ。

もし事情も知らずにカティアが目覚めたら絶対に怖がって

暴れるっ思っていたから自分自身の安全のためにも寝ずに頑張って

起きていたのに。


「確かにカティアを背負った時は思ったよりもずっと軽く感じたよ。

 でも育ち盛りの女の子何だからもっと食べた方が魅力的になると思う」


そうは言ってもさすがに昨日まとめ食いは軽く引いたけどさ。


「……あなたのこと信じていたのに。

 もうわたしってお嫁さんに行けない傷物の体になってしまったのね」


「傷物になったのは僕の方だよ。毛布を掛けようとしても蹴飛ばされるし、

 まずはその暴れる寝相を直さないと仮に結婚しても

 彼氏に逃げられてしまうよ」


「じゃあ、まだほっぺにチュしていない?」


「いや僕はカティアを担いで寝かせて溝内に蹴りを入れられて

 少し気を失って冷たい床に震えていただけだから出来るわけないよね?」


「……それじゃあまだわたしのお腹に赤ちゃんはいないんだ」


コウノトリが子供を運んでくるって教えってことですか?

キスが挨拶変わりの国だったら女の子はみんな妊娠しているよねって

ツッコミを入れても異国の文化の違いできっとカティアには

理解されないんだろうな。


「我が名はレオンハルトが命令する」


「きゃあ、やめてよ~」


蹴られて倒れている最中に閃いた偽名レオンハルト。

文字通り玲音を横文字にしてプラスした安直な名前だが

結構気に入っている。


「とっととカティアはお湯を浴びてこい。

 宿屋のチェックアウトの時間まで残り僅かなんだ」


転がる置き時計は9時30分を指していた。

10時までにはこの宿屋を出ないと手数料が加算されてしまう。


「……えっ?」


「そんなヒトを操る能力がこの僕にあるならギルドに仕事なんか

 探しに来ないで、王族を洗脳して優雅に楽しく暮らしているって」


「もう、それを早く言いなさいよ~。

 ごほぉん、それでレオンハルト様、浴室ってどこにありますか?」


「また僕をからかおうと敬語を使ったりして、

 確か扉を出て突き当たりの奥にあったはずだよ。

 とにかく減らず口を叩かないで、さっさとぼさぼさの髪を洗ってこい」


「ありがとうレオンハルト」


カティアがバタバタと浴室に向かう。

結局僕が自作したヒトを操る能力は通じたみたい。


「……どうしよう? 思いっきり床に傷が付いているんだが」


案の定置き時計を持ち上げると床に生々しい凹みの傷が出てきて……。


「仕方ない、ここはカティアに命令しないで1人で謝りに行くか?」


ストレートに実家のことを問いただしてもカティアとの仲が気まずくなっても

困るだけだし、もし話の途中でカティアに逃げられても困るのは僕だ。

ロージーさんの依頼は僕だけの隠しミッションとして内密にしておこう。

お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。

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作者の書くモチベーションにも繋がってきます。

この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、

読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?

少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。

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