2章 26話 大都市マガディ
ブライセンさんに聞かされた前情報よりも想像以上に
マガディは大きい町だった。マガディの町は大きく2つに別れている。
貿易が盛んな商業区そして異文化の者達が入り混じって住む居住区。
そろそろお昼ご飯の時間だろうか?
港から住宅地に繋がる路上からモクモクと路上屋台の肉や魚の香ばしい煙が
漂ってくる。活気ある賑わいで、酔いしそうなぐらいの種族が乱雑している。
「焼き魚1匹で銅貨2枚か?」
金貨、銀貨の相場が分からない以上は下手にお金を使えないし。
ブライセンさんから頂いた銀貨6枚と銅貨18枚でどう切り盛りするかが
今後の課題だ。
「しかしお腹空いたな? このお金が自由に使えれば……」
餞別って感じでアリシヤから貰った大量の金貨。
使った分だけ後で足して突き返してもアリシヤには絶対に
バレないと思うけど。
「いや、やっぱりダメだ」
こんなところで信念を曲げてしまったら、アリシヤに会わせる顔がない。
優先順位を整理すると先ずはアイシアを探すこと。
そして可能ならおまけで新たなる魔王を倒すこと。
天秤に掛けて比べるまでもない。
「お魚を買いたいので、ちょっとそこを退いて下さる?」
「ご、ごめんなさい」
「おい、ちんたら立っているじゃねいぞ、坊主」
「すみません」
凄まじい数を見てしまったからだろうか?
どうもマガディの町に来てから急に疎外感を覚えてしまう。
見慣れない環境そして外見の違い。
言葉は通じているのでまだ正気でいられる気がする。
とにかく今は分かり合える仲間が欲しい。
色々目標があっても1人では不安で心細い。
シリーズを重ねたもふ球クエストも一緒に旅する仲間を
探して冒険していたんだ。
しかしそもそも友達が1人もいなかった僕に仲間は出来るんだろうか?
「あーあ、性格のねじ曲がった悪徳令嬢でも構わないから
仲間に加わってくれたら金銭面も全て解決するのにな?」
異世界でも日本でも結局はお金があれば大抵のことは
解決出来るから世知辛いよね?
「おーー、あのクロスした剣マークってゲームで見たことがあるぞ」
剣マークの看板の入り口付近には剣、槍、斧と
バリエーション豊かな武器が並んでいた。
隣の看板にも鎧マークとRPGでおなじみの景色がまさに
現実と融合している喜び。
きっとこの感動で涙腺が揺さぶられて僕は涙するんだと思った。
でもそれは束の間の幸せだったみたいで、
「……やっぱりここは日本ではないんだよな?」
って改めて実感してしまう。
最初は異世界をゲーム感覚で楽しんでいた気持ちもあった。
挫折と失敗の繰り返しの僕の人生を誰もが知らない世界で自由に
羽ばたけると思ったからだ。
でも裏を返せば誰にも頼ることが出来ない悲しい孤独な異世界生活であり、
例えば海外に留学してても日本に家族がいる。血の繋がった妹がいる。
でも今は突然の大地震で僕だけが生き残ったような過酷な現状。
その寂しさをきっとアリシヤが紛らわしてくれていたんだと思う。
だからあんなにブライセンさんを憎んで……。
「早く、一緒に冒険する仲間に探そう」
僕の心がまた壊れる前に。
こんなメソメソしていたらきっと仲間になってくれるヤツも
呆れて逃げてしまう。
私はあなたの寂しさを紛らわせる道具じゃないって感じでね。
「あった、あった。確かこのマークのはずだ」
どんよりした気持ちを押さえて、僕は酒樽マークが目印のお店に入る。
ゲームでは酒場に冒険者ギルドも兼ねていることが多い。
それに冒険者ギルドがなくても酒場で情報を集めるのが
ゲームのお約束で鉄板だ。まだ昼間だからなのか?
テーブルを囲んで飲んだくれているおっさん達の姿はなかった。
その変わりに青いロープを着た女の子がちょこんと片隅に座っている。
そしてカウンターに立っているお姉さんにウエイトレスのお姉さん。
だがそっちのけで掲示板に貼っている依頼書に視線を向けるのが
燃えるハンター魂のプレイヤーだ。
「このゴーレムを倒せば金貨8枚も貰えるのか?
お、こっちのドラゴンは金貨20枚だと?」
文字が読めないがイラストと数字のニアンスで何となく狩猟アクションで
培った知識で理解してしまう。我ながら末恐ろしい洗脳されたゲーム脳。
「凄いのね、あなた。こんな高額クエストばかり見て」
興味津々でウエイトレスのお姉さんが近づいてくる。
「このドラゴンのクエストを受けるのにハンターランクとか
必要なんですか?」
大概のハンターゲームではストーリー進行の兼ね合いもあり効率が
良い上級クエストは初心者では受けられない仕様が多い。
「他のギルドではどうか知らないけど内ではそんな制限はないわよ。
ただし死んでも自己責任でお願いするから注意してね」
あはは、やっぱりここは高望みせずに命大事で
安全なお使いクエストでも地道に探そうな?
「それじゃあ、このインゴッドドラゴンの討伐をいいわね。
少し手続きに時間が掛かるからテーブルで座って待っていてね」
ちょっと気が利きすぎだよお姉さん。やばい、やばいって。
ゲームで最弱設定のスライムやゴブリンにも勝てなかったんだ。
多少アイシアに鍛えられてもこの僕が最強種族とされるドラゴンに
勝てるわけないって。
「待って、お姉さん。実は一緒に冒険する仲間を探しに来たんだ」
「ソロでのインゴッドドラゴンの討伐はさすがに無理だよね。
でもこのレベルになると誰も募集に引っかからないんじゃないかな?
受付に頼んで心当たりを聞いてみるから仲間の職業とか希望はある?」
「資産家で出来れば優しい女の子と一緒にパーティを組みたいのですか?」
口からダダ漏れした僕の本音。
「お金持ちのお嬢様ならギルドに仕事など探しに来ませんよね?」
「……なら妥協して気さくな感じの富豪の男でも」
「そんないい男いたら私が口説いてお付き合いしていますっ」
「で、ですよね?」
やっぱり金持ちの勧誘は無謀で高望み過ぎでした。
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