2章 25話 大都市マガディへ 02
「元勇者で英雄って?
おめぇの姉ちゃんってあの仲間殺しのアリシヤだっただべぇか?」
「仲間殺しのアリシヤ?」
「まぁ、弟さんのしのぞめさんに関係ない話だべぇな。
でもマガディには血の繋がりだけで悪意を示すバカも大勢いるから
大っぴらに姉のことは言わない方が身のためだべぇよ」
「もっと詳しく聞かせくれませんか? ブライセンさん。
僕にはお姉ちゃんのことを詳しく知る権利があると思うんです」
「うんだ? ワシも又聞きで詳しくは分からんが同じパーティだった
ケルントの王子を殺したのがそのアリシヤって女だべぇ」
嘘だろ? あんな面倒見がいいアリシヤが仲間を殺すなんて……。
「どうせ魔王を倒した名誉を独り占めしたかった
欲の塊の腹黒い女だったんだべぇな」
「それ以上ア……」
「胸が小さいのも心の器が狭い証拠だべぇってか? ウシシ」
「これ以上アリシヤのことを悪く言うのはやめてっ」
僕自信が何言われようが構わない。でもアリシヤの悪口だけは許せない。
ゲームの疑似恋愛とはまた違う感情の高鳴り。
僕はアリシヤのことを恋愛対象として好きだったんだろうか?
「うんだ? ワシは真実を語っているだ……ひぃぃその目は何だべぇぇ?」
「その目って?」
きっとブライセンさんを睨んでしまったたんだろうな。
だって今すぐでもブライセンさんを殺したいって思っているから当然か?
「このワシもケルントの王子ように用が済んだら殺すべぇか?」
こんな筋肉もりもりのブライセンさんに暴れ牛でもなられた日には
僕の人生何かあっという間に終わるんだろうな?
でも負けるって頭で理解しててもブライセンさんだけは殺さないといけない。
何処を狙って殺す? 先ずは鍛えにくい首でも試して見るか?
「姉が腹黒なら弟もやっぱり悪魔の血を引いていただったべぇぇーーー。
ウシーーー命だけはお助け下さいだべえぇぇ」
ブライセンさんは荷台を放り出してその場から2本足になって逃げていく。
結果、1円も払わずにお金と荷台を手に入れてしまったわけだが、
「ふーーー命拾いした。これもアリシヤお姉ちゃんのおかげなのか?」
アリシヤのせいで戦いが始まり、
アリシヤのおかげで戦いが終わる。まさに負の連鎖。
「さて、この置き去りにされた荷台どうしようか?」
商人にこの荷台を売ればそこそこのお金が入るかも知れない。
だけど、荷台まで盗んだら本当に僕も悪人の仲間入りになるよな。
ひとまずは何も考えずにマガディの門番のヒトにでも預けようかな?
このまま放置して荷台が盗まれても困るし。うん、そうしよう。
僕はブライセンさんへの恩も忘れずに頭を下げてから行動に移す。
「おいっちに、おいっちに。
はぁ、はぁ。しかしこの荷台やけに重たいな?」
この重さで僕を乗せて軽々とあんなあぜ道ばかりの森を抜けて来たんだろう?
ライセンさんには感謝してもしきれないや。
「うんしょ、うんしょっと……」
そろそろ関所だ。気合いを入れて進まないと身元がバレてしまう。
「おい、待てお前。通行許可書を出すんだ?」
門の前で槍を向けてくる鎧を着た中年の男。
ラッキー、このマガディって国にはヒトも住んでいるんだ?
「ブライセンさんとはぐれてしまって今手持ちに通行許可書がないんです」
「なら通すわけにはいかない」
「では通行許可書の変わりとしてこの荷台を預かって頂けませんか?
この荷台がなければ入国しても物資が運べないから利益が
生み出せませんよね?」
「うーん、しかしだな?」
「後で来るブライセンさんの通行許可書で確認するんですから
早いか遅いかの違いで微々たるもんじゃないですか?
ブライセンさんの命令で僕は直ちに安いポーションを
買い集めない怒られるんです」
「仕方ない。今回だけだぞ」
「ありがとうございます」
鎧を着た中年の男に一礼して僕は重かった足かせの荷台とも別れ、
マガディに入国する。まさに渾身の演技の出来だった。
もしかしたら将来役者を目指す道もあったんじゃ?
うんうん、人前に立つそんな僕の柄でもないしやっぱ遠慮しとこうかな?
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