2章 24話 大都市マガディへ 01
「……馬、馬が盗まれているますっ! ブライセンさん」
ブライセンさんの巨体で隠れていたようで後ろには
これまた大きな荷台があった。
しかしどこにも肝心のけん引の馬が見当たらない。
「うんだ、ワシが馬ごときにこの負けるわけねぇべぇよ」
ブライセンさんは凄く鼻息を立てて前方に倒れ、
4つ足歩行モードのただの牛となった。
「……す、すごい」
まるで高性能牛型ロボットが変形みたい。
これもまた一般常識が通じない異世界の醍醐味かもしれない。
「嬉しいことを言ってくれるべぇ? それよりも早く荷台に乗るべぇ?
まだワシはマガディとイルバーナの往復の仕事が残っているべぇよ」
「す、すみません」
イルバーナの複雑な自然に立ち向かって、ブライセンさんは荷台に
引いて走っている。
そのゴトゴトと揺れる荷台に荷物として僕が座っているわけで。
因みに荷台にはお金が掛かったが魔除けの聖水加工が施されているらしい。
「ワシにしっかりと掴まっておくだべよ、
落としても気付かん場合もあるべから」
「分かりました。ありがとうございます」
男に抱きつく趣味は持ち合わせてはいないけど振り落とされて
痛い思いをするのだけは勘弁である。
それにしても凄いなブライセンさんの腰回りの筋肉。
ゴツゴツしてしかも太くて固いときた。
スフレもこんな感じで僕のことを感じながら一生懸命運んでくれたのかな?
少しは家の中でゲームばかりしないで、
筋トレを始めていれば運命が書き換わったんじゃないのか?
でも今は心が同じヒトでも容姿はまるで別人だから。
転移前の努力も無駄な行為になるかもしれないって思うとちょっと複雑な気分。
「あんなところに立て札がありますよ」
ようやく入り組んだ森を抜けると僕たちは次ぐに川岸に続いている
舗装された道に向かう。
どうやらマガディは貿易で大都市まで発展した国らしい。
色々な種族が住み、朝だけ歩いていれば比較的に治安も良好みたい。
「うんだ、右に進めばノバラ。左に進めばラナリア。
そしてこのまま真っ直ぐ海沿いに進めばマガディがあるべぇよ」
「マガディ以外のも国があるんですね」
「他の2つはマガディと比べたら鼻くそみたいに小さい町だべぇ」
「……そうなんですね」
鼻くそみたいとはまた凄い表現だよな?
そしてしばらく進むと石かレンガが厳密には知らないけど
とにかくバカでかい外壁が見えてきた。
「あれが大都市マガディだべぇ」
「ところでイルバーナの用事って何だったんですか?」
「うんだ? ワシは商人でイルバーナでポーションの売っているんだべぇよ。
何でも魔王軍に奪われた大地を奪い返すために
国が備蓄しているとか噂だべぇ」
道理で勇者様(僕)を召喚しようとロザリナ姫たちは必死に
頑張っていたわけか?
「しのぞめさん、ありがとうだべぇ」
急に道端の草原に立ち止まるブライセンさん。
「……どうしたの? ブライセンさん。急にまたあらたまって」
「あの結界は凄く助かるべぇ。
これで荷物の積み卸しも安全に楽になるべぇよ。
実はそのお礼も込めてしのぞめさんを運んでいるべぇ。
これはワシからの本気の気持ちだべぇ」
強引にブライセンはコインが入った皮の袋を僕の手の平に乗せてくる。
「ありがとうございます。でもお礼なら僕のお姉ちゃんに言って下さい。
アリシヤお姉ちゃんは元勇者でこの世界を救った英雄なんですから」
これも全てアリシヤお姉ちゃんが繋いでくれた優しさなんだ。
優しさの循環。なんていい言葉なんだろう。
相手を思ってやったことが巡り巡ってまた自分に戻ってくる優しさ。
善のことをしても当の然のごとく扱われて小さく集約されていく。
でも悪のことをすればあっという間に特定され拡散される。
こんな理不尽なネット社会に生まれた育ったからこそ僕は優しさ(愛)を
干しているかもしれない。
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