1章 22話 元勇者アリシヤ04
「まずは玲音と手合わせして分かったことを伝えるね。
心と筋力の差が凄すぎることかな? 理想なのか? 我流なのか?
変な太刀筋をしているって表現したらいいのかな?
因みに私以外にお姉ちゃんはいるの?」
当然この意味のお姉ちゃんは師匠ってことだろうな?
「うん。そりゃもうたくさんいるよ。
数え切れないぐらいにヒトの動きを見てきたから」
ゲームを通して女の子の柔軟な剣から男の豪快な剣まで
様々な剣技をモニター越しから永遠と鑑賞して僕のこの手で動かしていたんだ。
女の子のお尻ばっかりを追いかけて見ていないぞ。
どうだ? さすがに驚くよね? アリシヤお姉ちゃん??
「玲音ってシスコンの属性以外にも女好きって属性も持ち合わせていたんだ。
それはちょっとさすがにお姉ちゃんでも引くよ」
「誰も女の子って言っていないよね。
また僕のことをからかって、アリシヤはきっと楽しんでいるだろ?」
「玲音。またお姉ちゃんって大事な言葉を忘れているわよ」
「ああ、ごめん。アリシヤお姉ちゃん」
「分かればそれでよし」
もう一生、アリシヤには頭が上がらなくなってしまった気がする。
アリシヤお姉ちゃんって究極のバケモノを生み出してしまった。
師匠を頼む相手を間違っていたのかな?
「奇妙な変な動きも直さないといけないし、
そもそも腕力も鍛え直さないとダメね。
もしかして玲音の利き腕は右手だったんじゃない?」
「……それは」
あ、頭が割れるように痛い。
記憶の奥に奥に潜れば潜るほど嫌な気持ちになる。
「もう言わなくていいんだよ、玲音。あなたの悲しい瞳で何となく分かるから。
近接戦は後回しにして次は魔法の訓練に入りましょうか?
だいたいでも構わないから玲音のマナ量って分かるかな?」
「そ、それは……」
ロザリア姫たちにマナ0でゴミ扱いされた嫌な記憶しか僕には残されていない。
「またなの? でも今度はさっきよりも平気そうで良かった。
玲音のマナ量を知らないと私もどこまで魔法を教えたらいいかって
基準が分からないからね」
「僕は……僕は……」
「本来なら水晶で調べるんだけど多少曖昧になるけどそこに落ちている小石で
代用できるから安心して少し待っていてね、玲音」
「マナ0で僕はゴミだから……」
また直ぐにバレる嘘を吐いてアリシヤを悲しませる真似はしたくないんだ。
「いったい誰が玲音のことをゴミ扱いしたのよ。
マナ0でも頑張って努力したら魔法が使えるかもしれないのに」
「努力しても血反吐吐いて訓練しても0にいくらかけても0は0だよ。
アリシヤお姉ちゃん。そんな簡単な計算ぐらい無知の僕でも分かるんだ」
接近戦もダメ、魔法もダメ、そしたらまた瀕死の時に発動した力を信じて
頑張らないと……あれ、あれ、もしかして仲間がピンチだと僕はただ指を
咥えて見ていることしか出来ないんじゃないのか?
「なに、突然泣いているのよ玲音。そのためにお姉ちゃんがいるのよ。
私の弟ならめそめそしていないでちゃんと女の子をエスコートしなさい」
「……アリシヤお姉ちゃん」
「もしあなたが戦えないなら強い仲間を味方に頼りなさい。
そしてあなたが薬草などアイテムを使ってみんなを支援に回るの。
何も前線で戦うことだけが勇者の仕事じゃないんだよ、玲音」
「なら、今すぐでもアリシヤお姉ちゃんを仲間にするよ」
「こんな汚れた私では玲音の足を引っ張るだけだよ」
「そんなことないよ、アリシヤお姉ちゃん。
あなたと出会って僕はどれだけ心が救われたことか?」
「そう言って貰えると嬉しいな。
……ごめんね、玲音。そろそろお別れの時間がきたみたい」
アリシヤお姉ちゃんの光る指先がゆっくりと僕に向けられる。
「いったい何をしているの? アリシヤお姉ちゃん。
別れるなんて言わないでくれよ。僕はずっと1人で寂しかったんだ」
「……ありがとう、玲音。楽しかった。
また出会えたらアリシヤお姉ちゃんって呼んでくれと嬉しいな?」
はっきりと今まで見えていたアリシヤの姿が消えていく。
「行っちゃダメだよ。また僕を1人にしないでくれよ。
アリシヤお姉ちゃん、アリシヤお姉ちゃんっ」
木の枝や落ち葉が燃え朽ちていく焚き火の音だけが時を刻んでいるように
聞こえて、そしてぷつりと消えた。
お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。
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この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、
読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?
少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。




