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1章 15話 妖精の国イルバーナからの逃亡02

「セアダスさん達には悪いけどその作ってくれた料理は食べられないや」


「きゃあーーーーーははは、またやっちゃった」


その笑い声は……


「もしかしてスフレじゃないか?」


「うん? 勇者様??」


別通路にて道いっぱいにお鍋の中身をこぼしていたスフレ。

今の僕にはスフレの勇者様って言葉がどんな言葉よりもきつくて……。

見るなよ? こんな惨めな僕を見つめないでくれ……スフレ。


「今日の晩ご飯のハチミツ入り肉団子はわたしが作ったの?

 これはもう食べなくなったけど新しい肉団子は

 是非、お腹一杯に食べてね。勇者様」


「……ごめんね、僕は肉団子が大嫌いなんだ」


スフレには僕のことを嫌いになって貰わないと別れが辛くなる。

どうせ、偽勇者だと分かればきっとアイツらのようにスフレも

手の平をひっくり返すんだ。絶対に決まっている。

だから早く悪人になって縁を絶ちきらないと

またあの頃のように心が壊れてしまう。


「えぇーーーーなんで、頑張ってコネコネしたのに。

 他の料理はまだ何も教えて貰っていないから、

 どうしよう? どうしよう? 勇者様?」


「そう僕に聞かれてもなあ……」


あんなに元気だったスフレが暗い顔してハチミツ入り肉団子を

ひたすらにかき集めている。このまま黙って立ち去ればいいのか? 違う。

じゃあ、肉団子を拾うのを手伝えばいいのか? それも違う。

僕は勇者じゃなく偽勇者だったら答えはとうの昔に

決まっていたんじゃないか。


「ちょうどお腹が減っていたんだ」


転がっていた複数のハチミツ入り肉団子を鷲づかみして、

口の中に一気に喉に流し込む。


「美味しいじゃないか? スフレ。僕にもその秘伝のレシピ教えてくれよな」


異世界からきた僕は偽勇者なんだ。

だから勇者の威厳も守るべきプライドも存在しない。

どんなに汚れていてもどんなに形が崩れていても

僕のために作ってくれた手料理はどんな有名なシェフが作った高級料理よりも

美味しいと決まっている。


「それはですね勇者様、オークさんのお肉を潰して……って

 あはは、勇者様のお口にいっぱいはちみつ付けてまるでクマさんみたい」


ようやくまたスフレが笑ってくれた。

でもクラスのヤツらよりも温かい気持ちになるのは何故だろう?


「うまい、うまいよ、スフレ」


「ばっちいのです。汚いのです。だからもうやめてくれる? 勇者様。

 落ちた料理をばかり食べていたら絶対にお腹痛くなるよ」


お腹が痛くなるなら、なればいい。腹痛は時間が経てば自然と直る。

怪我をすればかさぶた張って自然と直る。

だけどもうこの愛情が詰まった料理は2度と食べられないんだ。


「それに勇者様に拾い食いさせたってバレたら、

 またわたしセアダスに大目玉を食らちゃうかもしれないよね?」


「肉団子から飛び出る肉汁とハチミツのハーモニーは

 ホントうまいな、スフレ」


「……うん、わたし頑張るから、今度はちゃんと頑張って

 真剣に料理を運ぶから。新しいハチミツ入り肉団子をもう一度作り直して

 必ず勇者様の口届けるから。勇者様がお腹一杯だって言っても

 無理矢理口を開けて押し込むから」


「ああ、分かったよ。楽しみにしているね、スフレ。

 早く厨房に戻らないと今度こそセアダスさんに怒られるかもしれないよ」


「そ、そうだった。ありがとう、勇者様。

 夜のパーティーを楽しみに待っていてね」


「うん、その意気だ。頑張れスフレ」


「スフレ、全力で頑張っちゃうからっ。

 勇者様、腰抜かしても知らないからね!」


約束を果たせなくてごめん。弱い僕で本当にごめんよスフレ。

偽勇者は早くこの妖精国イルバーナから去らないといけない宿命を

背負ってヘドロのようにこびり付いて生きているんだ。

お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。

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作者の書くモチベーションにも繋がってきます。

この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、

読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?

少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。

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