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第一章 少年期編  第三話 「ソノモノノゲンゴ」

今回は短めに、ある一日、ある昼下がりの出来事のみの投稿です。

この世界では、もちろん各部族ごとで言語が違うみたいですね。

それについて、ルドルフがルフィーノに教えてもらう、ただのワンシーンです。


 ボルドーへ引っ越してきて、五か月が経った。僕ことルドルフは、九歳になった。

 フォンセ一家の日常は、順調そのものである。

 

 母ナリオは貿易の仕事で、ここ一週間ほどは帰ってきていないが、父ディエゴは毎日家にいる。

 ルミナスに言葉を教え、家事をし、買い物に行き、忙しくしている。

 

 ルミナスはお喋りになってきたものの、未だによく泣くし、良く寝る。

 最近はママがいないからか、お兄ちゃん子になってきている。お父さんには中々甘えたりしないのが、可哀想を通り過ぎて不思議にも思えてくる。

 

 引っ越し当初は、差別などがあるんじゃないか。などの不安も多かった。

 ここエーテルメニア王国は、人族の国で、魔族の国が戦争を企んでいる。なんて噂も未だにあるみたいだが……当面は、平和である。


 

 さて、僕ことルドルフは天才である。

 自分で天才、なんて言うと、他の人からあまりいい目で見られない。ということは、両親から教えてもらった。

 

 ただ、ここ数か月ほど街の図書館に毎日行っているが、僕の理解速度は平均より遥かに上だ。ということに確信を持ち始めた。

 歴史、数学、言語、どれを読んでいても、一発で覚えてしまう。

 覚えて、それを過去に学んだことと照らし合わせたり、応用したりして、理解する。

 普通、僕ぐらいの年齢だと、そういう事はできないそうだ。

 しかし僕はそれらを苦なく当たり前にできた。


 

 ただ、もちろん分からないこともまだまだ多い。

 

 その最たるものとして、言語だ。


 元々、九つの部族と呼ばれる者達は、皆言語が種族ごとに異なる。


 ここエーテルメニア王国は、水の部族と土の部族が作り上げた国だ。


 水の部族とは、元々漁を大々的に行い、食卓には必ず魚が並ぶ食生活を送ってきた部族だ。

 肌は浅黒く、筋肉質で、目と髪は青く、背の高い人が多い民族である。

 この大陸の最も南の海岸線を住処とするところからその歴史は始まり、外交的な性格の者が多かったのも影響して、次々と貿易や他部族との交流を深めた。

 今や大陸一の国土と、貿易力を持っているとされる。


 それに加え、土の部族だ。

 土の部族は、鉱石類の発掘や、土木建設、道具の発明など、器用さと力が優れた部族だと言われている。比較的小柄な者が多く、茶髪で、水の部族よりも屈強な種族だ。

 その性格も、これまた水の部族に負けず劣らず外交的な者が多いが、その反面、頑固なのも特徴的だ。職人系の仕事をしているのが目立つのも特徴か。


 その二つの部族が混じりあって出来たのが、ここエーテルメニア王国、というわけだが。

 建国の際、お互いに言語が通じなかったこともあり、新しい言語を作り出して普及させたらしい。

 

 それが【エーテルメニア語】。

 水の部族の言葉と、土の部族の言い方や文法などが混ざり合った言語。


 未だに地方だと、水の部族の言葉しか使えない。とか、地の部族の言葉しか—————なんて村も幾つかあるみたいだが、ここボルドーでは、ほぼ全ての人が、この【エーテルメニア語】を扱う。


 ただ、早まらないでほしい。

 なんと僕は、この一見難しそうである【エーテルメニア語】を、もう日常生活に支障がない程度に覚えている。

 それどころか、ついでに水の部族の言葉と、地の部族の言葉、合わせて三つの言語を習得したのだ。この五か月という短い期間で、だ。

 お父さんはまだ、元居たカステル共和国の発音が残っている為、ひどい訛りでたどたどしく喋っているが、僕はもうペラペラだ。

 若干九歳にして、これである。

 自分のことで自慢気になるのも、無理はないのではないか。

 

 …………と、思っていたのだが。


 思わぬ刺客が現れた。

 僕の短い人生において、初めてとなる壁。

 

 それは——————————


「だーかーらー、カステルの言い回しを、もっと原始的に捉えろ!」


 それは、ここボルドーでの初めての友達、ルフィーノである。

 彼は僕と同じカステル共和国出身でありながら、エーテルメニア語も話せるし、何より凄いのは、純粋な魔族語を喋れるのだ。


「原始的って、そんなん昔を知らないんだから、分かりっこないよ……」

「そんなん俺だって知らねえ! ただ、水の言葉とかも昔っぽい言い方してんだろ! あんまり文法もカステル語と変わらねえんだから、ノリでわかんだろ!」


 彼は今、一冊の古い本を広げている。

 今日、ルフィーノは休日らしい。

 わざわざ、僕に魔族語を教える為に本を持って、家まで来てくれたのだ。

 ありがたい。

 ありがたい話ではあるんだが……ルフィーノが教えてくれる魔族語は、絶望的に難し過ぎる。

 最近色んな言語をいっぺんに覚えたせいか、色んな単語とか文法がごっちゃになる……。

 ルフィーノの教え方が上手なのが、唯一の救いだ。


「いーか? ボウズ。この(魔族)って単語は、そのまま言うと、《エリ・パリ》ってなるが、この《エリ・パリ》ってのは《エリ》が欠片。《パリ》が魔法って意味なんだ」

「うん」

「カステル語だと《マケリュアルゥ》で(魔族)の一単語になっているな?」

「そうだね」

「これは諸説あるが、カステル共和国になる前、まだ王権政だった頃の話だが……当時の王様が、この《エリ・パリ》って言い方を嫌ったらしい。そんで、森の部族の《マケリエール》からなぞって、この言葉を新しく作ったって言われている」

「マケリエール?」

「森の部族の言葉で、勇敢な者。って意味らしい。俺も、森の部族の言葉までは、知らんがね」


 こんなふうに、雑学を交えながら教えてくれるから、集中力が切れない。

 ルフィーノと普通にお喋りしているみたいで、難しいけど、本当に楽しい。

 

 それに、ルフィーノはすごい。


 お父さんでも、ママでも、図書館の本でも知らない事をいっぱい知っている。

 尊敬って言葉の意味は知っていたけれど、感情で知るのは、初めてだ。


 魔族の言葉だって、今はもう古い言語になっちゃって、共通語で使われているのは小国のヴィルボア帝国ぐらいなのに。


「よし。ここからはひたすら単語を何回も書いて、手で覚えろ。発音が分からなかったときだけ、俺に声かけろ。わかったか?」

「うん。わかった」


 文法のおさらいを学んだら、次は単語の勉強。

 魔族語は古い言葉だからか、他の言語と違って応用のきかない、難しい書き方で、発音も独特だ。

 

(こりゃ時間かかるな……)


 うん。とりあえずやるしかない。

 僕は頭が良い。天才だ。できるはずなのだ……。



 結局、ルドルフが魔族語を習得したのは、そこからさらに半年してからのことであった。

 

そういえば、この小説を書くにあたって、200話までの世界軸とプロットを作りましたが。

いざ実際に文章として作ってみると意外と難しい物ですな。

もっとすらすらと書けると思ってたのに……

なにはともあれ、次の話からは少しずつ物語が動きます。こうご期待。

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