第9話 戦闘開始
西暦9980年のはるか未来。
この時代に召喚されたマイは、初めての実戦にのぞむ。
相手のユウの機体と、マイ自身の機体は別の物である事を知ったマイ。
それが結果にどう影響するのかは、マイには分からない。
でも、アイをバカにしたユア相手に、負ける気はなかった。
決戦用の演習場の、規定の位置につく。
マイの機体の右斜め後ろと左斜め後ろに、伴機の機体が一機づつ控えている。
三身一体のトライフォースの陣形だ。
この演習場は小惑星帯に位置している。
小惑星帯に阻まられて目視出来ないが、十万宇宙マイリの向こうに、今回の勝負の相手、ユアの機体がある。
それは、時空間レーダーにはっきりととらえられている。
同時に、小惑星帯の小惑星ひとつひとつについても、時空間レーダーははっきりととらえていた。
マイは、その小惑星ひとつひとつの位置を把握する。
空間をイメージする事は、トライフォースの陣形を保つのに必要となる。
小惑星の位置も把握しておかないと、トライフォースの三角形の布陣は成り立たない。
「あー、あー、そろそろ時間だ。」
通信を通じて、メカニックマンのジョーの声がする。
今回の勝負の審判というか、見届け人というか、そんな立ち位置だ。
「準備はいいかな?ふたりとも。」
「いつでもオッケー!」
「早く、始めましょう…」
マイはハイテンションで答えたが、ユアは絞り出すような声で答えた。
何か、仕掛けてくる。
マイはそう感じた。
「開始5秒前!4!3!」
ジョーはカウントダウンを開始する。
そして、
「始め!」
ジョーの合図とともに、マイは機体を加速させる。
と同時に、ユアの機体から主砲攻撃!
開始前から主砲エネルギーを溜めていたのだ!
光の束がマイの機体を襲う。
マイは三機の機体を散開させ、主砲攻撃をかわす。
「逃がさないわよ。」
マイの機体の目前に、ユアの機体三機がワープアウト!
ユアは三機で機銃掃射!
マイはなんとかかわしながら、伴機二機を呼び戻す。
伴機からはレーザービームで牽制する。
マイの三機は交差し、そのまま通り過ぎる。一定の距離で、三角形の陣形を整える。
ユアはマイの機体と交差した後、機体を180度旋回させ、再び突っ込む!
「いくぞ、サークルエックス!」
ユアはそう叫ぶと、伴機の二機がユアの機体を斜めに周回し始める。
正面から見たら、伴機の軌道がアルファベットのエックスに見える。
三機は塊となってマイの機体に一斉射撃しながら突っ込んでくる。
「な、なんの意味があるんだよ!」
マイはそう叫びながらかわす。
こちらから射撃の応戦しても、伴機に阻まれ、ユアの機体に届きそうもなかった。
ユアはマイの機体をかすめると、軌道を少し変えて、後方のマイの伴機の一機に突っ込む。
「一機づつ落としてやるわ!」
狙われた伴機も、ユアを引きつけてからかわす。
同時に、マイのもう一機の伴機をレーザービームを撃ちながら突っ込ませる。
「かわした?なんで、かわせるの?」
ユアは、マイの虚を突いたつもりだった。
マイの機体と一直線上に並んだマイの伴機。
マイがかわせば、伴機は落とせる。そんな距離とタイミングだった。
将棋で言う、王手飛車取り。
なのに、なぜ飛車を取れない!?
マイは、かわした伴機と突っ込ませた伴機とで、ユアの機体をとりかこむ。
そして三方から一斉射撃!
ユアはサークルエックスの陣形から、伴機レーザーの乱れ打ちで応戦。自機は手近なマイの伴機へとレーザーを撃ちながら突っ込む。
マイは攻撃の手をゆるめる。
「なあ、アイ。あれはなんなんだ?」
マイはアイに問う。
「あれはサークルエックス。トライフォースの陣形のひとつです。」
「あれがトライフォースなのか?」
マイはその解答に驚く。
「あれ、意味あるのか?一機でも出来る事じゃん。」
「窮地を脱するための一点突破。そのための陣形です。」
「はははは…」
アイの説明に、マイはかわいた笑い声が出る。
「ひょっとして、ユアって実際に敵と戦った事って無いのか?」
「はい。ユアは実戦訓練の得点は優秀なのですが、実戦の経験はありません。理由は、あなたの感じたとおりです。」
なるほど、そう言う事か。
マイはユアの突撃をたくみにかわしながら、三機での包囲を維持する。
三機を派手に無駄に動かしながら。
マイは勝敗をつけるよりも、ユアに気づいてほしかった。
本当は一緒に戦う仲間なのだから。
「流石は、アルファーワンに選ばれたパイロット、って事かな、マイ。」
マイがユアを翻弄し始めてるのを見て、ジョーがつぶやく。
同じ部屋には、他の召喚者、つまりマイのチームメイトも見ている。
まだマイは、認められたわけでもないが。
「あいつ、召喚されて間もないんだろ?なかなかやるじゃん。」
と青髪のショートカットの召喚者が言う。
「て言うか、ユアがだらしないのよ。エックス攻撃なんかでゴリ押しって、トライフォースをなめてるわ。」
金髪のツインテールの召喚者が続ける。
「だから実戦には連れて行けないのだが、どうやらこの試合で何かをつかんでくれそうだな。」
銀髪のロングヘアーの召喚者は、そう予言する。