第57話 伝承された剣技
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
行方不明になったケイを探しに惑星ドルフレアの地に降り立ったマイとユアとメドーラの三人。
三人はこの星で出会ったローラスとともに、千年前にローラスの先祖と行動を共にしたかげろうおケイの剣を納めたほこらへ向かう。
そして判明する。
このかげろうおケイこそが、行方不明のケイだった。
ユアの残したメッセージにより、マイ達の今後の行動は決まる。
そしてこのメッセージの執筆中、作者の全俺が涙したのは、内緒だぞ。
ケイからのメッセージを内蔵した宝珠は、崩れさる。
マイは、宝珠を持っていた右手を見つめたままだ。
ユアは、膝からくずれ涙をこらえている。
ローラスは、かげろうおケイの剣、つまりケイのソウルブレイドのクダを見つめている。
「一旦、話しをまとめましょう。」
メドーラはパンパンと手をたたき、みんなに声をかける。
放心状態だった他の三人は我にかえり、メドーラに視線を向ける。
「かげろうおケイが、ケイお姉さまだと分かりましたわ。」
メドーラは自分のソウルブレイドのクダを取り出すと、ローラスの持つかげろうおケイの剣に、コツンと重ねる。
ふたつは同じソウルブレイドだった。
メドーラがマイとユアに視線を向けると、ふたりはうなずく。
「私達の任務は、行方不明になったケイお姉さまを探す事。でしたわよね。」
「お、おまえ、まさか。」
メドーラの言葉に、ユアは何かを感じとる。
「はい。私達の任務は、終了した事になりますわ。」
メドーラはユアに対して、真剣な表情で応える。
「おまえなあ!」
ユアはメドーラに詰め寄るが、マイに制せられる。
「ケイをこのまま見捨てるのかよ、これで任務は終わり?ふざけるな!」
ユアはマイに制せられながらも、メドーラにどなりつける。
「ええ。何度でも言いましょうか?任務は終わりですわ。
千年前のケイお姉さまを連れ戻す事が、不可能だって事くらい、ユアお姉さまもお分かりですよね。」
メドーラは真剣な表情のまま、ユアの目を見て話す。
「ぐっ。」
ユアは何も言い返せない。
メドーラから視線をそらすように、うつむくだけだった。
「終わりじゃない。」
ここでマイが、ボソりとつぶやく。
ユアは顔をあげ、マイに視線を向ける。
メドーラはニヤリと表情をかえ、うなずく。
「僕達は、ケイに頼まれたじゃない。封印を解いてほしいって。」
マイの言葉に、ユアの表情も明るくなる。
だが、ここでメドーラはあえて水をさす。
「ですがマイお姉さま。それは私達の任務外ですわ。」
マイは、メドーラはそう言っても、それがメドーラの真意ではない事に、気づいていた。
「アイ、お願い。任務の続行をジョーにかけあって。」
マイは額のチップを通じて、パートナーのサポートAIのアイに、話しかける。
ジョーは、メカニックマンの肩書きだが、実質マイ達の司令官だった。
「その申請なら、すでに通ってます。」
それが、アイからの回答だった。
「メドーラがアイツウを通して、すでに申請しています。」
マイとユアは、思わずメドーラに視線を向ける。
「だって、お姉さまがたが放心状態でしたから、私がやっておきましたわ。」
ここではじめて、メドーラは笑みをみせた。
「そうとなったら、急ぎましょう。
ローラス、ケイの言ってた八極陣、会得してるよね?」
マイはローラスに声をかけてみるが、ローラスははっきりしない表情だ。
「ええ、多分、ヤサメの事を言ってると思うのですが、欠けてる型なんて、思いあたりません。」
ローラスはうつむいたままだ。
ケイのメッセージを聞いてからずっと、頭の中でヤサメの八つの技を繰り返し再現していた。
でも、分からないのだ。
「実際、やってみようか。」
思い悩むローラスに、ユアは声かける。
「私も、ケイの言ってる八極陣は分からないけれど、なんとなく分かる気がするわ。」
ユアは、剣技に優れた召喚者だ。
ケイの八極陣も、見れば分かるかもしれない。
ローラスはうなずくと、ヤサメを披露してみせる。
ローラスは右手で剣を抜くと、左手の手のひらの上に、刀身をそえる。
そして呼吸を整える。
そこから独自の呼吸法により、大気中のイデを取り込み、自らの体内のマナと錬成させる。
ローラスが気合いを込めると、刀身は水のマナをまとう。
「すごーい、こんな事出来るんだ。」
マイは感動する。
「これが、ヤサメの基礎です。ここから繰り出す八つの技がヤサメ、おケイの言う八極陣だと思います。」
ローラスはマイに説明する。
「では、見せてくれるかな、八つの技を。」
ユアの言葉に、ローラスはうなずく。
「はい。まずは、壱の技。」
ローラスは剣を振りかぶると、まっすぐ振り下ろす。
「弍の技。」
「ちょっと待って。」
技のモーションに入ったローラスを、ユアは止めた。
「それ、ケイのソウルブレイドで、おケイの剣でやってみて。」
「で、ですが。」
ローラスは難色を示す。
「おケイの剣は四年に一度の祭事の時にしか、使ってはいけないしきたりでして。」
「なんで剣が甦ったと思ってんのよ。」
ユアは古ぼけた剣が、真新しい剣に変わった事を言うのだが、ローラスには理解出来なかった。
ユアは自分のソウルブレイドを取り出す。
「千年前の姿を取り戻したのよ。ちょっと派手に使っても、壊れない!」
ユアはソウルブレイドの剣を展開する。
それはユアの身の丈ほどの大剣で、刀身を炎のマナが包む。
だが、炎のマナは一瞬で消えた。
「はあ、はあ、呼吸を練る必要があるのね、これ。」
「すごーい、剣が燃えてたよ。すごいよ、ユア。」
ユアの炎の剣を見て、マイは大はしゃぎ。
「これ、マイにも出来るよ。」
「ほんと?」
マイも自分のソウルブレイドを取り出し、展開させる。
でも、普通の剣だった。マナはまとっていない。
「コツがいるのよ。でも今は、」
ユアはローラスに向き直る。
「さあ、ソウルブレイドでやってみて。」
ローラスはうなずく。
そして思った。
冗談じゃない。
剣に水のマナをまとわせるのに、三年かかった。
それなのに、おケイを探しに来たユアは、すぐにやってのけた。
あと数回のチャレンジで、完璧に会得してしまうだろう。
水のマナをまとわせて、ヤサメの八つの技を習得するのに、さらに四年かかった。
下手したらユアは、見ただけで、理解してしまうかもしれない。
それはそれで、妬ましくもある。
だが、八つの技に欠けてる箇所を補う、九つ目の技。
それを知るためには、ユアの存在は、ありがたい。
ローラスは意を決してソウルブレイドのクダを手にする。
呼吸を整え、体内のマナを錬成させる。
そして錬成したマナを解き放った時、ソウルブレイドは水の剣として、顕現した。




