第12話 今度は剣技?
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
この時代に召喚されたユアは、自分よりも後に召喚された召喚者と勝負した。
その召喚者を担当するサポートAIは、今まで四人の召喚者を戦死させていた。
ユアは、今度の召喚者であるマイも、すぐに死ぬんだろうと、たかをくくる。
そんなマイの実力を計るのを口実に、決戦を持ちかける。
そして、ユアは負けてしまったのだ。
ユアのまだ知らなかった戦闘システムによって。
ユアとマイは、決戦後のラウンジにて顔を合わせた。
何気ない会話をかわした直後、ユアはハッとする。
言わなくちゃ。
マイにもお詫びとお礼の言葉を。
でも、なぜだろう。
アイに対しては素直に言えたのに、マイに対しては、なんか言いづらい。
「ま、マイ、あのね。」
ユアはなんとか口を開くが、その後が続かない。
「あ、ありがと、気づかせてくれて…。」
ユアの小声のその言葉が終わる前に、マイは笑顔でユアの肩をパシパシ叩く。
「気にしない、気にしない。同じチームメイトでしょ。」
ああ、これなんだ。
ユアは思った。
こいつ、図に乗るタイプだ。乗せちゃダメだ。
ユアは肩をパシパシ叩くマイの手をはらう。
「戦闘機での勝負では教えてもらったけどね、私にだって教えられる事があるのよ!」
そう言うと左脚の太ももに装着されている、一本のクダを手に取る。
長さ40センチのそのクダは、マイの左脚と右脚の太ももにも装着されている。
「これ、ずっと気になってたんだよね。」
マイも左脚の太ももに装着されたクダを手に取る。
「これはね、こう使うの、よ!」
ブン…
ユアが気合いを込めると、クダから1メートルの光る棒みたいなのが出てきた。
「ソウルブレイド。精神力を形にした剣よ。あなたにも出来るはずよ。」
そう言われても、マイはある疑問で頭がいっぱいになる。
ブーン、ブン、ブン。
ユアはソウルブレイドの剣を振り回して、自分も踊るようなポーズをとる。
「どうしたの、おじけづいたの?今度はこれで勝負よ。」
そう言って剣先をマイに向ける。
しかし、マイはユアの言ってる意味がよくわからない様子。
「えと、僕達って戦争しに来たんだよね?そんなの望んでないけどさ。」
「そうだけど、どしたの?」
ユアは剣先を上に向けて、剣の背面を肩にあてる。
「戦闘機ってのは分かるんだけど、剣っていうのはどうなのかなぁって。」
マイは思ってた疑問を口にする。
「何よ、これだって立派な戦闘よ。」
ユアはそう言うのだが。
「銃でやった方が早いんじゃない?」
マイは、思った事を素直に口にする。
ブン…
するとなんと、マイのクダが光線銃に姿を変えた。
「わ、何これ?」
「へー、やるじゃない。光線銃なんて、私にだって難しいのよ。」
「光線銃…。」
マイはおもむろに、壁に向かって光線銃を構え、そのトリガーを引く。
ブオン!…ズガン!
光線銃から放たれた光線が、壁に命中。すごい煙をあげる。
「おい、部屋の中でぶっ放すもんじゃないぞ。」
銀髪のロングヘアの召喚者が、光線銃の命中した先の煙の中から話しかける。
煙がはれて、よく見ると、彼女の持っているクダから伸びる光の剣が、うちわのような形をしている。
これで光線を受けたのだ。
「壁に穴空いたら、どうするんだ?ここは宇宙空間だぞ。」
「ご、ごめんなさい!」
マイは自分の軽率だった行いに、素直に頭を下げる。
「そりゃ、光線銃での戦闘もあるけどね、やっぱり剣技での戦いは、最高よ。」
ユアはそう言うが、やはりマイには分からない。
銃で撃ち合う方が手っ取り早いのに。
「ショウビジネスとしての戦闘だ。」
ここで銀髪の召喚者が、マイの問いに答える。
ユアとマイとのやり取りの噛み合わなさに、みかねたのだ。
「え?つまり見世物って事?」
「そうそう、古代ローマの時代から、剣闘士の戦いはみんなの憧れなのよ。」
マイがやっと何か分かってくれたようなので、ユアも嬉しくなる。
マイはなんか納得出来ないので、アイに尋ねる。
「これって、やらなくちゃダメ?」
アイは笑顔でうなずく。それを見て、ユアが囃し立てる。
「そういう事だから、とっとと構えて。」
ユアの囃し立てに押される形で、マイもしぶしぶクダを構える。
そして気合いを込めると、一振りの刀が出来上がった。
「随分とキャシャな剣ね。」
ユアは、初めて見る刀の感想を述べる。
「でも、きれいな模様してるね。」
「ほんと、なんか工芸品みたいだね。」
金髪と青髪の召喚者も、それぞれ感想を述べる。
「あれは、日本刀?という事は、彼女は日本人?」
が、銀髪の召喚者は、その刀に驚く。
そんな彼女らをそっちのけて、マイも感想を述べる。
「これだと、鞘が無いのか。」
刀を見たマイの感想は、これだった。
ふと、剣を発するクダはもう一本ある事に気がつく。
「そっか、これを使えば…。」
そのもう一本に気合いを込めると、こちらも刀になってしまった。
「おっと失敗。鞘をイメージしないとダメか。」
マイは、もう一度挑戦する。
今度はしっかり鞘になる。
その鞘に、刀をしまう。
「おお、収納されちまった。」
ユアは目を見開いて驚く。
マイは膝を落として構える。
そこから一気に居合抜き!
抜いた刀を振り回して、パチンと鞘に収める。
「やだ、かっこいい…。」
それがユアと青髪、金髪の召喚者三人の感想だった。
「かっこよさ、それも剣技には重要なのよね。でも、勝てなくっちゃ意味ないよ。」
そう言ってユアは剣を構える。
「さあ、勝負よ、マイ!」