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前編。現代人の『状態異常』は十分恩恵です。

 短期連載、はじめました。

 今度は完結させます。

 よろしくお願いいたします。

●現代人の『状態異常』は異世界では十分恩恵です

 よくあることだが、召喚される人間には特殊な能力が付与される事態が多い。

 今回の召喚される人々も同様の能力を持つが、正確には「押し付けられている」という表現の方が正しい。

 その能力の名は「共有化」。

 召喚される人々の『ある状態』が、対象にも共有されるという能力に当たる。

 一見するとそれほど強くない能力のように見えるが、異世界側は画期的な使い方を編み出していた。

 たとえばモンスターの大群を前にした時『共有化』を発動させたとする。

 発動した途端、迫りくるモンスターたちのほぼ全てが一斉に転倒した。

「グギ!?」

「グギャァァァッ!?」

 人間の言語になおすと、『痛でででで!』になるだろうか。

 モンスターたちを襲う痛みは――筋肉痛。

 関節の痛み。

 そしてぎっくり腰。


 足はもちろん、背中や胸、腕にはげしい痛みを襲う。とくに膝がひどい。

 肉のないモンスター、アンデッドやゴーレムなどは、あるはずのないぜい肉が付与され、増えた自重に膝が耐えきれずにへし折れ、無様にも地面に転がり起き上がれなくなっている。

 これが『共有化』の恐ろしい能力の1つだ。

 想像してみてほしい。

 運動なんかほぼ行わない人間が、こっちの世界に来て強制的に運動させられたら、何が起きるかを。

 さらに言えば、モンスターたちの腹が異常に膨らみ、身動きがとれていない。

 共有化されるのは――メタボリックなボディ。

 肩こり。五十肩。腰痛。老眼などなど。

 その体重を支えるには不可能なほど、モンスターたちの膝は弱くなり、筋肉も細くなっている。

 五十肩のせいで腕は上がらず、老眼を付与されたモンスターは、攻撃の命中率が下がって傭兵たちも攻撃を躱しやすくなる。

 そんな弱体化したモンスターたちを、現地の傭兵たちは嬉々として狩っていく。

「なんか敵の攻撃が一斉に外れだしたぞ」

「なんでも異世界で流行っている病気のひとつで『ロウガン』と言うらしい。『すまほ』というのを見続けているとそうなるという話だが、よくわからん」

「あー、あそこで動けない奴、腰をやられたか。あれキツイよな」

 およそ戦いには向かない体になることを強制されたモンスターたちは肩をやられ、腰をやられて地面に這い蹲るしかなく、傭兵たちに難なく屠られていく。

「すげえ、こんなに脂肪が厚いぞ」

「これだけ重量がかかれば、モンスターたちもそりゃ動けねえよなあ」

「これが人間なら不摂生もいいところだぜ」

 戦士たちは倒したモンスターたちを解体する際、口々にそう言う。


 その称賛(?)のことごとくが能力を共有化された人々に突き刺さっていることに、傭兵たちは気付いていない。

(話題になっている人物たちは、戦場の片隅でプルプル震えています)


 この共有化だが、有効なのは戦いばかりではない。

 ある役人が試したところ、農作物や食用の肉にも効果を発揮することがわかり、さっそく『共有化』が広く行われるようになる。

 農作物は共有化によって肥え太り、重くなる。

 食用にされる畜産物も脂肪が付き、ほどよい霜降り肉となって供給される(ただし老眼、ぎっくり腰、五十肩つき)。


 太りすぎ。

 栄養過多。

 運動不足。

 モンスターにとっては立派な状態異常であるが、農作物や家畜にとっては、豊穣を約束する能力でもある。

 ただこの能力にはやはり欠点もある。

 共有化されるのは、能力者の不摂生だけではない。

 逆に異世界側にいる、痩せ細った栄養不足の人々の状態異常も含まれる。

 こちらの状態異常は『痩せすぎ、栄養不足、運動過剰』というところだ。

 その両方が共有化された結果、地球側である肥満体系の人の体に蓄積されたエネルギーは栄養不足の人々にもたらされ、骨と皮ばかりだった人々がふくらみを取り戻すころには、地球世界より召喚された人達は痩せていた。

 これでは農作物や畜産動物、モンスター達を太らせることは出来ない。

 ということで痩せた人達に用はなく、さっさと元の世界にお帰り願う。

 そして次の不摂生な地球世界の人々を召喚するのだ。



 次は現代の人々が持つ『属性』のお話です。


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