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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
第三章 残念美人は幸せな婚姻をする
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残念美人はお披露目に合わせて準備をする

根回し回終了です。

ミニな感じですが、中央集権を樹立させようとしています。

騎士は自分の従卒の面倒を見なければならないのです。文字通り衣食住。

リーディエはそれを傍から見ていて困窮する騎士を見ていられなくなり、ついでに自分の意のままになる軍を手に入れようと金策などして色々画策して、ようやく即応軍を手に入れました。

ようやく元婚約者と求婚者を踏み潰すべく、リーディエが動きます。

 皆さま、ごきげんよう。

 私はリーディエ・シュブルトヴァー伯爵です。

 お義兄様が家族とともに出奔して味方になってくれて嬉しくてたまらない私です。

 でも、お隣の国に命を狙われたりしないでしょうか、それが心配です。


 私はラドヴァン・ベチュヴァーシュ様との連名の夜会を行う旨の招待状を周辺に送り、着々と婚約の事実を広めます。夜会の会場はここ、領都カイェターンのアルノシュト城の大広間です。


 実のところ、アルノシュト城には周辺の貴族領地の中では一二を争う大広間があるのです。その昔クバーセクとの戦争賠償の会談を行うために、シュブルト男爵当主でしたアルノシュトが作らせた物です。

 豪華とは言い難いのですが、少なくとも他国の代表と、そしてベェハル国の代表を迎い入れることができる武家の城の大広間程度の装飾はされています。これなら私の生まれ育ったカシュパーレク伯爵家の大広間の方が数倍装飾に関しては優っているでしょう。


 ただ昔はカシュパーレク家は辺境伯爵という身分でしたし、プシダル国の辺境軍司令官でしたからそれなりの格式がなければなりませんでした。それに比べるとシュブルト家は男爵位でしかなく、隣国と会談できるような大広間があること自体稀なのです。当時のこの地方のシュブルト家の権勢はさぞかし強かったのだろうと思われます。


 「・・・確かに今までの男爵家にはあるまじき広さの大広間ですね。

 ・・・アルノシュト城も戦時の城塞と平時の居館との役割を持っているし・・・。さすが戦のシュブルト家。一筋縄では行きません」


最近とみに私の傍に立ちたがるラドヴァン様が考えながら呟いています。


 「シュブルト家がすごいわけではありません。シュブルト家を巻き込んできたクバーセクがしつこいので、対決していたら勝つことができて、そのまま話し合うことになって広間を作っただけですよ」


 私はあくまで他国の侵攻に対応していた結果であることを強調しておきます。そうですね、当時のシュブルト家の当主でしたアルノシュト様がこの城を建てたときの世相など知る由もありませんが、それから私が当主となるまでにもクバーセク国は相も変わらずシュブルト領に侵攻を続けていました。


 ここからは推論ですが、ベェハル国は国としてまとまる前は、小領主が乱立しており、集合離散が繰り返され、大国にいつ狙われても仕方ない状況でした。

 一方のクバーセク国はプシダル国に西側から狙われていると感じていたのではないかと思います。そのため、少なくとも今のシュブルト領を取って多方面からプシダル国に圧力をかけようと考えたのかもしれません。

 結局のところシュブルト領が頑健で容易に屈しない人々で構成されていたため、望みは果たされずプライドを傷つけられたと感じたクバーセク側が何度も侵攻し、その度に負けて、最後の方は意地を見せていただけだったのかもしれません。それだからと言ってシュブルト側からでは、いい迷惑なだけですけれども。


 因みにプシダル国は、ベェハル国とクバーセク国を併せて初めて上回ることができる国で、この地方の大国です。そしてプシダル国はこの地方の意志を体現する国で、少なくとも現国王の代に侵略はしないと明言しています。その大国の意向を無視できるほど、クバーセク国は大きくありません。

 クバーセク国はプシダル国に対抗しようと、まとまりがないころのベェハル国の征服を目指していましたが、思いのほか抵抗が強いために挫折し、今度は視点を変えてクバーセク国の南方にある諸国連合を合併させようとして策を弄しておりますが、それが南方諸国連合がプシダル国に庇護を求めて交流を活発化させている原因となっております。


 まあ、シュブルト伯爵領の当主である私も、クバーセク国の陰湿さを気持ち悪く思っておりますので、友好条約を結んでも警戒を怠ることはしないのですけれども。


 あ、そう言えば、領内の巡視の件で、騎士団の団長と協議しなければなりませんでした。この時期にこんなことを思い出すとは、何という因果でしょうか。


 「・・・そうですね・・・」


 ふふっ、いいことを思いつきました。

 いぶかし気にラドヴァン様がさぞ良い笑顔であろうと思われる私を見ています。


 「・・・どうかしたのです?」


 「お義兄様の活躍の場です」


 「・・・お義兄様・・・?」


 私はラドヴァン様の言葉にこたえることはせず、傍らのロマンにお義兄様を読んできてくれるように申し伝えます。


 「お義兄様、いえ、コンラート様をお呼びして」


 「・・・かしこまりました」


 お義兄様は今だこのアルノシュト城に居候の身です。静かにロマンが当主の執務室を出ていくと、私の専属侍女のダナが、お茶を淹れ替えてくれます。

 執事見習いのイルジーが私の斜め後ろに立ち、手元の紙に何やらびっしりと書き込んでいます。先日書き込んでいることについて尋ねましたが、執事の心得を、実地で気が付いたことを書き込み、後から見直しているとのことでした。

 ラドヴァン様は事情を知っているのでもう問題はないのですが、知らない方々がいるときは控えるようにとだけ私が伝えますと、イルジーはロマンに習ったであろう優雅に見える動きで一礼して感謝をしていました。

 勉強熱心です。イルジーがもっと成長すれば、ロマンを取り立てることができそうです。私のこれからに貢献してほしいため、イルジーには執事として更なる高みに上っていただきましょう。


 ダナの淹れてくれたお茶をゆっくりと飲んでいると、速足の足音が執務室のドア前まで来て止まります。ノックの音がし、ロマンが外から声を掛けてきました。


 「御屋形様、コンラート・ペリーシェク様をお連れしました」


 「入室を許可します」


 「・・・失礼します」


 ドアを開けたロマンが脇に動いた後、お義兄様が姿を見せて一礼し、部屋の中に入ってきます。


 「お呼びでしょうか」


 私はゆっくりと立ち上がり、イルジーがお義兄様用の椅子を用意するまで待ち、座れるようになると、私はいつもしていた通りに、お義兄様に一礼します。


 「・・・お義兄様、お呼び致しました」


 顔を上げると私はそう口を開きます。そのまま、身振りでお義兄様に座るように促し、先に私が座ります。


 「お座りになって、私の話しを聞いてください」


 私の言葉にお義兄様は笑顔のまま、お座りになります。


 「・・・願い事でしょうかね?」


 お義兄様の言葉が聞こえました。私はふふっと笑い、口を開きます。


 「・・・はい、お義兄様に領都カイェターンの総督をしてもらえないかと思いまして」


 「・・・」


 「おいやですか?」


 「・・・いやではないですが、唐突ですね」


 私が言葉を促すと、ようやく答えていただきました。


 「お義兄様なら、私が居なくてもこの領都をさらに盛り立てて行けそうです」


 「・・・買い被りでは?自分の家さえ守れなかった男ですよ。そんな男に勤まるかどうか」


 「勤まりますよ。私が策を弄して婚約を破棄しようとしたときにも、婚約破棄にも異を唱えませんでした。機を見る、これができる人はなかなかいませんから、しかるべき地位についていただければ領地を盛り立てていただけるはずと思っていました」


 「・・・ご命令とあらば、嫌も応もなしにお受け致します。それが家族を受け入れてくれた方への礼ですから」


 「まあ、そんなことで礼などをしてもらわなくても良いのですけど」


 「・・・ですが、今回は思い通りにされない方が良いと思います」


 「・・・思い通りにしない方が良いと。今、私は間違ったことをしていると言われるのですか?」


 私がじっとお義兄様を見ると、お義兄様はにこりと笑います。


 「・・・このままでは間違います。私を買い被り過ぎている」


 暫く私はお義兄様を見つめて顎に手を当てて考えます。

 咳払いがします。ラドヴァン様が私の注意を引こうとしているようです。視線を向けると、視線を合わせてきました。


 「・・・なにか?」


 仕方なしに声をかけると、ラドヴァン様が明らかにほっとした表情になります。


 「私に一つ助言をさせていただいてもよいですか?」


 「・・・どうぞ」


 「コンラート様がお断りになる理由がわかるような気がします」


 「・・・」


 「このシュブルト領の領都の総督を、プシダル国から出奔してきた家を守れなかった者が受けるなど伯爵の名折れになるだろうと言っているのだろうと思います。譜代の家臣が居るのにと考えておられるのだと思います」


 「・・・」


 「ですので、私が伯爵の立場なら、領都ではない地区の総督になっていただくのが良いと思います。案外重要度が高いところがあると思いますので、そちらの総督などどうでしょう?南の国境の地域とかはどうでしょうか?」


 「・・・南ですか。実はもう別の方にやってもらうつもりです」


 「・・・そうですか、それは素早い。では東側は?」


 「・・・そちらも腹積もりしている方が居ます」


 「・・・」


 決まづい沈黙が訪れます。その中で私はふと思いつきました。ああ、そう言えば、動きが分からないために決めていなかった重要地区が一つありました。そうです、そういえば騎士団の本拠地であるスコカンの町の総監がいなかったではないですか。そこにお義兄様を当てれば・・・。


 「・・・一番面倒なところが残っていました。そこをお任せしましょう」


 「・・・一番面倒なところですか・・・。嫌と言ったら・・・」


 本当はあまり目立ちたくないお義兄様が苦笑いをしています。私はそのお義兄様に黒い笑顔で答えます。


 「嫌と言えると思っておられます?お義兄様」


 「・・・いや、無理だろう」


 そう呟くお義兄様。そう、そうの通りですよ。スコカンの町は、シュブルト領の軍事基地です。騎士団の司令という重要な施設があって、その施設の管理者が騎士団団長です。そして町の管理者も騎士団団長となっていますので軍事方面に頭が行ってしまい、町が発展しません。私は町一つ一つに産業を起こして財政面を拡充させたいので、スコカンの町に住む住民にも領地の産業を担ってほしいのです。


 「・・・それでは、お義兄様、明日私と一緒にスコカンへ行っていただきます。お義兄様をスコカンに常駐している騎士団団長と騎士団の面々に面会させます。そのまま、お義兄様はスコカンで町の監督と騎士団の総監をお願いします」


 「・・・」


 「・・・」


 私以外の方々は顔を見合わせていますが、そんなに難しいことを言っているでしょうか?


 「・・・騎士団の総監ってなに?」


 恐る恐るといった風情でラドヴァン様が口を開いて尋ねてきます。







 「騎士団を分散して領内に配置したいのでその割り振りと、騎馬に乗れる騎士と従卒を切り分けを行います。従卒は歩兵とします。シュブルト家での仕官を希望する者はシュブルト家で召し抱えます。

 つまり今までは騎士団の騎士たちは騎士爵という身分につき、仕えてくれている従卒の面倒を見なければなりませんでした。従卒は騎士の身の回りの世話をしていますが、騎士が戦いの場に出るときは徒歩で戦う場合は歩兵として戦場に出ます。騎馬を持つものは従騎士として戦います。

 騎馬を持つものはのちに騎士爵を与えるつもりですが、当初は歩兵として遇します。

 もちろんのことですが、仕える騎士の傍を離れたがらないものもいるでしょうから、そういう者は従卒として騎士に雇われてください。ただ、これからは従卒が戦いに参加しても恩賞はすべて主人になる騎士がもらいますので、よく考えて自分の意志を決めてください」


 辺りはしわぶきすらせず、ただただ押し黙っているだけとなっています。


 「騎士の方には今のままの給金を支払います。歩兵となるものは、働きに応じて昇級します。それにつれ、給金も上がります。

 装備についてですが、歩兵は集団で戦うことになりますので、武器と防具を支給します。

 さらには歩兵の中から選抜して弓兵を作ります。この弓兵ですが、今までは戦闘開始時に矢で開始を示すなどしていますが、私の考えでは弓兵は相手の騎馬の突進を弱めるために使います」


 騎士団に所属するものは、北のコチーの町に駐在している一隊以外は、今日は全員このスコカンの郊外にある騎士団駐屯地にいるはずです。ちらりと傍らに控える騎士団の団長及び師団長達を見やると、団長以外が複雑な表情で控えています。

 シュブルト領の騎士団の師団長は全部で五人です。師団長の内の一人は団長と兼任です。師団長は従卒を相当数抱えていますが、それとなしに聞くと従卒の衣食住の面倒を見なければならず、騎士爵の給金だけではお足が出てしまうらしいです。従卒にお金を使わなくてもよくなる一方、今までの一家の主的な立ち位置がなくなってしまうのが残念というところでしょうか。


 師団長と私を挟んで反対側にいるお義兄様に視線を移します。


 「この地区を管轄する総監となるコンラート・ペリーシェク男爵です」


 いつもは柔和な笑顔を見せているお義兄様が、ひきつった笑みを浮かべています。とはいってもひきつっているとわかるのは私ぐらいですが。お義兄様とは長い付き合いですからわかるのです。よく元婚約者が今は無き公爵家に訪れた私に暴言を吐くたびに、お義兄様は何度も笑顔を見せながら場をとりなしていました。その時の笑顔と今の笑顔が同じです。


 「・・・この騎士団駐屯地及びスコカンの町を中心とするこの南西地区を管轄する総監として、私が男爵を先日任命しました。これからはこの男爵が中心となってこの地区を管轄します。

 良いですか。これは私が決定した事項です。これに異を唱える者は徹底して排除します。私が今欲しているのは、このシュブルト領の当主である私の行うことに異を唱えない軍です。

 今、このシュブルト領を囲む西以外の領地とクバーセク国の動きがきな臭くなっています。他国に踊らされて内戦の道になるかもしれません。ですがどんな敵が攻めてきても、慌てて醜態をさらすことは許しませんよ。あなた方はベェハル国最高の力を持つ一団なのですから」


 騎士団所属の騎士と従卒たちがお互いを探るような複雑な表情で黙り込んだまま、私の話は終わりました。差しあたって師団長達には全員了承を取り付けてあります。師団ごとに役割を決め、準備ができ次第、騎士団には動いてもらいます。


 今も納得はできないという表情をしていますが、騎士団が相当嫌がると思い、色々用意していました。ですが拒否する師団長は居らず、拍子抜けしてしまいました。


 「・・・御屋形様は、我ら騎士団を見くびっておられます」


 騎士団団長であるマレク・フヴァーラが私を見て口を開きました。


 「我ら騎士団はシュブルト領の領民のために行動します。そして何よりもまず、シュブルト家の当主に忠誠を誓っております。当初であるリーディエ・シュブルトヴァー様が決められたことです。従うのは当然でしょう。たとえ、これからのことがどうなるか、不安に感じていたとしても」


 そうでしたか。


 まあ、良いでしょう。新生シュブルト騎士団の働きは案外すぐありそうです。私の婚約の夜会で、ですが。


もっと長めの内政話を考えていたのですが、恋愛ジャンルではないとばっさり切り捨てました。ただ、騎士団と歩兵、弓兵ができたわけを入れたくなり、恋愛から脱線しましたが入れさせていただきました。

次回では求婚者たちの思惑と元婚約者のお馬鹿さんが相変わらずの危機感なしで登場予定です。生きていられるでしょうか。

スローな投稿で申し訳ありません。ばっさりカットしたつけで、自転車操業になってしまったのですが、何とか文にして書き上げますので、今しばらくお待ちください。

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