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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
第三章 残念美人は幸せな婚姻をする
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残念美人は領地でお披露目前の雑事をこなす

リーディエはついにシュブルト領の改革に着手しましたが、それはまた別の話となります。お話として書くとは限りませんが。なんせこのお話は恋愛ジャンルですので・・・。

味方をもう一人増やしまして、これで先代を暗殺したものと対決をする予定です。

完結まであと少しです。

 皆さま、ごきげんよう。

 私はリーディエ・シュブルトヴァー伯爵です。

 何度名乗ってもしっくりと来ない爵位です。なぜでしょうか・・・。


 私は今、隣のボリス・ズーレク男爵領との境に来ています。実はここは我がシュブルト領の利益を生み出すだろうと思われる特産品にしたいと思っているものを探してもらっています。

 私はそれが見つかったと伝言を受け、やってきたところです。私の護衛三人と執事見習いのイルジー、そして専属次女のダナが、目を丸くして足元を見ています。


 私は膝を曲げ、片方の膝を地面について地面から露出した黒い塊を手に取りました。


 「・・・これが・・・?」


 「はい、御屋形様。これが石炭です。泥炭に比べますと、燃える力が数倍にも上がります」


 私の傍らで、ダニエル・ベズディーチェクが答えます。彼も私と同じように片膝をつき、私の持つ塊とほぼ同等な石炭を持っています。


 「・・・これを使えば、鉄鉱石を高純度で取り出すことができるようになると・・・?」


 「研究ではそう言われておりますね。検証は必要でしょうが、おおよそは言われている通り、高純度で取り出すことができるはずです。ただ、この鉱脈の埋蔵量は不明ですので、鉱脈が尽きる前に次の鉱脈を探し始めなければならないと思います」


 「・・・尽きる・・・。ここの石炭が尽きるのはいつ?明日?来年?10年後?それとも100年後?」


 私が手の中の塊を見ながら呟くように質問をしました。


 「・・・申し訳ないのですが、御屋形様、わかりません。明日尽きることはあり得ませんが、ただこの私が保証するとしたら数年というところでしょうか。掘れているうちに次を探しておいて、鉱脈を途絶えさせないようにしようと思います」


 「・・・人の身ではわからないということですか・・・」


 ダニエルの答えに私が手の中の塊を取り落とします。しかしがっかりしたわけではありません。この場所の石炭が尽きれば、次の鉱床を探せばよいことです。私は、石炭の鉱床が尽きないうちにダニエルには次の鉱床を探してもらいましょう。


 私は早速ダニエルに鉱床を掘り出す人夫を手配するように命じて、その場を離れます。ダニエルは自分の使用人たちとともに私の命令をはたす為に慌てたようなせっかちさで早足で離れ、私達はやきもきしながら私が戻るのを待っていたラドヴァン様の元に戻りました。


 「・・・ご気分が相当悪いようですね、ラドヴァン様」


 私がラドヴァン様の表情を見ながらそう口を開けば、ラドヴァン様が無理やりのさわやかな笑顔で私を見返します。


 「・・・私をここで一人で待たせて、さぞかし良い会合ができたのだろうね?」


 その言葉に私は肩をすくめます。石炭についてはシュブルト領の今後を左右する大事な、そして知られてはならない事柄の一つです。いくら婚約したと言って、ほいほいと漏らしてよいものではありません。

 私は努めて冷たく聞こえるような言い方をしてから、ラドヴァン様をじっと見つめます。


 「・・・勘違いされていませんか?」


 私の言葉にラドヴァン様は眉を寄せました。


 「勘違い?」


 「はい。私はここにシュブルト家の大事のために来たのです。今後のシュブルト家の戦略があるのです。易々と他家の方に見せられるものではありません」


 眉を寄せたまま、私の言葉を聞いていたラドヴァン様がさらに眉を寄せて口を開きます。


 「あなたと私は婚約をしたのだが。それでも私は部外者だと?」


 「・・・ええ、その通りです」


 一瞬情に負けそうになります。

 私は違うと言いかけましたが、思い直しました。このラドヴァン様はシュブルト家に入ると決まったわけではありません。そしてどちらかと言うと、今だラドヴァン様はベチュヴァーシュ公爵家の方、公爵家の嫡子です。シュブルト家の方ではありません。一応、わがシュブルト家に入り婿になるとのたまわっておりましたが、まず無理なのではないかと思います。

 なぜかと言うと、婚約の協議で出向いたときに、ちらとラドヴァン様の弟のヴィクトル様に公爵家でご挨拶をしましたが、それは病床ででした。ラドヴァン様がシュブルト家に来るのであれば、ヴィクトル様が公爵家の当主となるはずですが、あのお方自身、自分では公爵家の当主をすることはできないと息も絶え絶えで申されておられました。


 私はこんなこともあろうかと、ヴィクトル様にお会いする前から考えていた、通い妻でよいのではないかと思い、それを再度ラドヴァン様に申し伝えます。

 つまり冬で、雪に閉ざされる間だけ王都で暮らし、春夏秋はシュブルト領で領地経営をする。冬の間に両家の跡取りを産むのが良いのではないでしょうか。因みに最初の子は男女関係なくシュブルト家の跡取り、次の子はベチュヴァーシュ公爵家の跡取り、三番目の子はシュブルト家の二番目の継承者、跡取りが成長すれば分家に。四番目の子ができれば公爵家の二番目の継承者、跡取りが無事成長出来たら公爵家か、シュブルト家の分家にするのが良いと思うのですが、どうでしょう?


 そうラドヴァン様に伝えますと、ラドヴァン様は少しだけ遠くを見た後、力のない声で言われます。


 『・・・通い妻とは、あなたはそれでよいのですか?』


 『・・・私は一番がシュブルト領の民です。私の苦労など二の次でしょう?』


 私がそう話すと、ラドヴァン様はふっと笑みを漏らします。


 『・・・私はあなたが自分を第一に考えてもらった方が安心できるのですが。

 しかし、冬だけ王都で暮らすというのはなかなか良いかもしれない。夜会に舞踏会などを開いて、貴族に娯楽に興じてもらうのも気晴らしになるかもしれないですね。なんせベェハル国の冬は長いから』


 私はそのように話し合った内容を思い出しながら、ないがしろにされたと考えておられるのか、むすっとした婚約者様のお顔を見ながら、そのままラドヴァン様の前を通り過ぎ、そのまま自分の馬に跨ります。私が馬にまたがると、今日の執事を勤めるイルジーが控えめにラドヴァン様に馬車に乗るように促します。

 ラドヴァン様は慌てて、自分の乗ってきた馬車に乗り込みました。


 「伯爵様ともあろうものが馬車に乗らないなんて、考えられませんね」


 置いてけぼりにした腹いせでしょうか。馬車の中で、イルジーを相手にちょっと嫌味を言っているようです。


 「わがシュブルト家は、武家ですから、馬車に乗ることはあまりないのですよ。ベチュヴァーシュ様もシュブルトの入り婿になられるおつもりなら、これからは馬に乗るのが必然になるはずです」


 イルジーが中で、ラドヴァン様に語っています。


 「・・・そうか」


 むっとした口調でラドヴァン様が答えています。笑いをこらえて、私は短く皆に告げます。


 「出発!」


 今日は領都カイェターンには戻れません。近くの村に宿をとりました。


 イルジーが堂々とラドヴァン様に話している姿に、ロマンの苦労と、イルジーの成長を感じます。ロマンはなかなか目端の利く後継者を育てていると思います。

 因みにその執事のロマンはアルノシュト城で、大事なお客様を迎えてくれているはずです。執事代理のチェスラフは、その大事なお客様を護衛しながら戻ってきたところでしょう。ですから、今日の執事はイルジーなのです。ですが、イルジーも随分執事としての役目を担うことができるようになりました。


 大事なお客様がアルノシュト城にいることに思いをはせて、私は知らず知らず笑顔を作っていました。私の幼い時からの大事な思い出の人です。私のために知恵を出して動いてくれたらと、そう思うと顔が自然と綻びます。






 「お義兄様・・・」


 私がお義兄様に駆け寄ると、お義兄様が片手を胸に当て騎士式の礼をされました。


 その頭を下げたままの様子には、家族と使用人を救うために国を出奔し図らずも逃亡者となった諦めが滲み出てはいましたが、他の様子もあり、それは国を逃れて安堵している感じを見て取ることができます。


 礼儀を尽くされるお義兄様ですから、プシダル国の国王もお義兄様の命を取るにしても時間をおいたのだろうと思います。そこには少なくとも評判の良さから処刑することができず、処遇を考えさせられた挙句、狭い土地に押し込めれば境遇を嘆いて後先考えずに出奔してくれると考えたのだと思われます。そしてそこには追手を出して、その追っ手に捕まれば、それを理由に処刑できたらとの思惑も潜んでいたと思われます。ただ、お義兄様は人格者であり、殺すには忍びないとの誰かの思惑もあったのではないかと思っています。ですからチェスラフの逃亡は成功したのだろうと思います。

 まあ、わが父のカシュパーレク伯爵領までたどり着ければ、お義兄様とその家族、そして使用人たちの命は保証されていたのですけれども。


 「シュブルト伯爵殿、おめおめと生き恥をさらすことになりましたが、私は妻のヨゼフィーナと私についてくれた使用人たちを死なせたくありませんでした。

 私達をお助けくださいましたこと、感謝申し上げます」

 

 涙が溢れそうになっていた私でしたが、笑顔でそれに返礼できていたでしょうか。


 「・・・歓迎いたします。コンラート・ペリーシェク男爵、そしてヨゼフィーナ男爵夫人。私の幼少のみぎり、私を慈しみ、導いてくださいましたお義兄様。今ようやくあなたに恩を返すことができます」


 私が騎士の礼を返すと、お義兄様はようやく顔を綻ばせます。


 「・・・では、私はこれからラドミラの指揮下に入ればよいのですね?あなたを支える柱の一つになる覚悟はしてきましたよ」


 「お義兄様、私はもうラドミラではないのです。今の私はリーディエですから」




今後、婚約のお披露目をして、その時に先代の死に関係するものが断罪されて・・・。

さらに元の婚約者の登場もあります。その元婚約者がリーディエをどう考えるのか、心情に皆さんは理解できますでしょうか。

今後は先代に関係した者の断罪と元婚約者の断罪(?)、そしてシュブルト領の今後を終章として投稿予定です。

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