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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
間章 残念美人を巡る男たち
32/45

元婚約者の憎悪~ボリス・ズーレク男爵視線

ボンクラ坊ちゃんの回です。あまりに自分勝手すぎて書きながら、このボンクラ坊ちゃんの制裁はどういう形にしようかと考え始めてしまいました。

こんなに人ってバカになれるものでしょうかね?

一部に虐待を示唆する部分があります。苦手な方がいると思いますが、なぜラドミラが破棄を狙ったのかに削れない部分でしたので、ご了承下さい。そのままズバリではないと思いますので、さらりと読み流していただけると幸いです。

少々長いです・・・。

 「なぜだ!どうしてあのラドミラに復讐させてくれないんだ!」


 イグナーツ・ペリーシェクは喚き散らす。


 「あの女は私をいつも馬鹿にした目で見てきた!今度は私があいつを馬鹿にしてやる番だ!」


 イグナーツ・ペリーシェクにはもはや権力も財力も後ろ盾もない。

 プシダル国のペリーシェク公爵家はなくなってしまったからだ。ペリーシェクと名がつく貴族は男爵家と子爵家だけになった。


 子爵家は公爵家の分家だった。数代前にペリーシェク公爵の羽振りが良かった時に気のやさしい当主がでた。その当主が可愛がった弟を当時の国王に恩を売って爵位を与えさせることができ、子爵位を弟に与えることができた。公爵のごり押しと他の貴族たちは眉をしかめた。プシダル国の貴族は男爵位から領地を持つ。その恩恵を得ることができたことで、当時の弟は感謝したことだろう。

 だが、その血筋がそのまま公爵家を敬うとは限らない。事実、弟が当主のうちはまだよかったが、当事者が亡くなり、主が変われば、その家同士の中も変わっていく。恩着せがましくふるまう公爵と恩を恩として認識したくない子爵の仲は年と共に悪くなった。ある事件を端として、仲は修復不可能なまでにこじれ、激怒した当時の子爵家当主が絶縁だと宣言して公爵の庇護下から抜け、領地の呼び名を取ってペリーシェクとは違う名を名乗り始めるまでになった。そのまま領地の呼び名を事ある毎に名乗ってきたため、今では呼び名が本名と世間では認識され始めて、子爵家は喜んでいるそうだ。ただ、領地の呼び名は通称であり、貴族年鑑には子爵家はペリーシェク家として名を連ねたが、世間の認識を考慮した今の年鑑には通称のほうを大きな字で載せている。


 実のところ、ペリーシェク公爵は領土欲まみれの悪名高いクバーセク国の、それも悪徳商人と組んで違法麻薬を、裏で販売しようとして告発されて取りつぶしになったため、イグナーツの力にはもうなれない。ただ、隙あらばと周辺国を狙うクバーセク国は、ベェハル国だけではなくプシダル国でも嫌われている。プシダル国はベェハル国とは安全保障条約を結んでいるが、クバーセク国とは友好条約を結んだだけだ。プシダル国はクバーセクの他国侵略を警戒しているためだ。そんな国の高位貴族の一人がクバーセクと組んで違法麻薬を裏で売ろうとする。未遂だったため、公爵も公爵夫人も嫡男も死刑を免れただけで、流通したら絶対的に家族と使用人すら見せしめに処刑される話だろう。


 ペリーシェク子爵家は、ペリーシェク公爵家の当主の犯罪について一切かかわることすらなかったのだが、やはりというか、捜査の手は子爵家にまで延び、疑われた子爵家の者は相当不快な思いをしたそうだ。当主である子爵はこれを機会として、ペリーシェクという家名を捨てて、領地を家名としたい旨を国王宛てに奏上し、国王の認可を受けるのみとなっているそうだ。


 次男であるイグナーツが貴族籍を抜かれた理由は、元婚約者に対する暴力と虐待、それに住居侵入が問題となったのだった。それらは伯爵令嬢の身分をないがしろにする行為として告発された。そして次男は有罪となり、貴族として不適格という烙印を押されて貴族ではなくなった。実のところ、彼の父や母、そして兄は今でも貴族とされているが、次男は貴族ではない平民だ。

 イグナーツは貴族ではなくなったことを嘆いただろうと世間では言われていたが、実のところ隣の国から来た聴講生に骨抜きにされ、卒業時に捨てられたのが堪え、腑抜けになっていたというのが正解だった。公爵家が違法麻薬で告発される前にイグナーツは有罪となっており、貴族ではなくなって公爵家に住み続けることができずに屋敷から出されたのだった。

 屋敷を出されたイグナーツは王都にある公爵の小さな持ち家で生活を始めたらしい。公爵がまた貴族として復帰させると、イグナーツにそう言い、当初は公爵家の使用人が世話をしていたとのことだ。


 ただし、公爵家の中で最悪を想定していたものがいた。それが、イグナーツの兄であるコンラートだった。イグナーツが貴族籍から抜かれたときに、兄がこっそりと仕立ての良い衣装をトランクケースに詰め、三つも持たせてくれた。三つのトランクケースの中には、それぞれ兄が用意してくれた貨幣と宝石が隠されていた。

 兄はイグナーツが貴族でなくなったことで、一人で何でもできるようになってくれればと期待をしたのだが、イグナーツは古典的な貴族思考の男だった。そのため、公爵家がとりつぶしになった時には深刻にならなかった。もちろん公爵家がなくなり、使用人も使用人ではなくなり、解雇されてしまう。イグナーツの世話をしていた使用人は事件時に、公爵家に呼び戻されていなくなり、イグナーツは一人になった。そして事件後、公爵家の財産は国が没収した。イグナーツの暮らしていた公爵家の小さな持ち家は、公爵家の者の恩情でイグナーツの物とされていたので、没収されなかった。


 今のイグナーツはその貨幣と宝石で生活をしていた。仕事をしないイグナーツは、つましく暮らせば数年持つはずの宝石を与えられていたにもかかわらず、最初から公爵家で暮らしていた時のように金を使っていたので、すぐに困窮をした。仕事を見つけるのにかかる時間を考えて、使用を制限すればおそらく生活に困ることはなかっただろう。だが、イグナーツは元の婚約者ラドミラが言ったように、ボンクラなので、金は時間がたてば何をせずとも増えると信じてやまなかった。仕事もせず、ぶらぶら遊んでいたイグナーツは、結局もらった金目のものはすべて売ってしまい、さらには兄がくれた仕立ての良い衣装も売らなければならなくなってしまった。だが、元公爵の次男だったボンクラは懲りることもなく、すぐに衣装を売って得た金も使ってしまい食べ物を買う金もなくなってしまった。


 金をなくし、満たされない腹を抱えて暮らすことで、公爵家次男だったイグナーツの考えをようやく変え、何とかして金を捻出しなければと考えるようになった。だが、金がない時点でもう手遅れだろう。前は身綺麗にしていたが、今はどんどん薄汚れていく。ただ平民なら一攫千金を狙って賭け事にのめり込む者が居たのだが、イグナーツはそういうことをしなかったのが良かった。いや、むしろ賭け事自体の存在を知らなかったので、一攫千金を狙わなかったのだ。何が幸いするのかわからない。イグナーツの場合は世間知らず過ぎて身を守ったと言えるだろう。


 そんなイグナーツを前から観察していたと思われる、イグナーツの家を訪ねてくる者が居た。

 その男は一緒に来ればラドミラ・カシュパーレク元伯爵令嬢に恨みを晴らせると言った。あの女は今裕福な男爵家に取り入り、跡取り娘を軟禁して男爵家を欲しいままにしている。あの女を成敗すれば跡取りに感謝されるとささやく。『跡取りはお前も知っている男爵令嬢だ』と言われて、イグナーツはリーディエを思い出す。『聴講生を終えるころ、ラドミラとの仲を取り持つ留学生に騙され、リーディエは成績優秀なラドミラに経営を任せようと家に迎えてしまった。ラドミラはそのまま男爵令嬢を監禁し、自分がリーディエ・シュブルトヴァー男爵の代理だとして既成事実を作っている。我々はそんなリーディエ様を助けようと、隣のボリス・ズーレク男爵に働きかけている。手伝ってくれれば、決して悪いようにはしない』


 衣装も住むところも食べるものも用意すると、そう言われたイグナーツはその話に乗ることにした。元の婚約者ラドミラには恨みしかなかったからだ。復讐をし、あのリーディエを救うと息まき、イグナーツは喜び勇んで、小さな家を処分し、その金を掴むと、これだけはと残しておいた、兄から渡された一番仕立ての良い服を鞄に詰め、旅支度をした。そしてその男とおちあい、男が用意した荷馬車の荷台に潜んだ。

 まず東に向かい、クバーセク国に密入国をする。そのあとクバーセク国を北上して、隣のベェハル国に密入国をした。


 密入国をした当初は、ベェハル国の王都であるブラホスラフに潜んだ。

 プシダル国から連れ出した男と共に王城の近くに連日潜む。シュブルト男爵のタウンハウスのそばだ。

 ある日、動きがあった。ラドミラがタウンハウスから出てきて、王城の馬車に乗り込んだのだ。煌びやかな衣装に身を包んだ元婚約者の今の生活をうらやむとともに、猛烈に自分の今の境遇に対して怒りを覚える。あの女はこれから王城の夜会に出るのだろう。だが、あの地位はリーディエの物だ。あのままにしておいていいはずはない。怒りに目がくらみそうになりながら、物陰に潜んだままでいた。

 馬車が走ってきて、タウンハウスのエントランスに横付けする。少々見難いが、確かにラドミラがげんなりした表情で降りてきたことを確認すると、傍らの男にせかされ、その場を離れ、そのまま用意された荷馬車の荷台に隠れて王都から出て西に向かった。イグナーツは、今のラドミラの容姿を確認し、婚約者だった頃と変わらない様子に妙に安心してしまい、そしてそんな自分になぜか苛立ちながら馬車に揺られていた。


 イグナーツを手引きした者はクバーセクの者なのだろう。クバーセクはシュブルト領を何とかして手に入れようと今でも思っているらしい。イグナーツをボリス・ズーレク男爵領に入れ、男爵がイグナーツを伴い婚約者としてリーディエ・シュブルトヴァーに会い、その時に自分が骨抜きにされたリーディエを助けるため、ラドミラとなったシュブルト男爵をイグナーツが襲う。そしてその殺害をシュブルト領を狙うボリス・ズーレク男爵が起こしたことと宣伝すれば、ボリス・ズーレク男爵は排除されるだろう。その時に軍を動かし、シュブルト領とボリス・ズーレク男爵領を侵略する。そういう筋書きらしいが、イグナーツにはそんなことはわからない。


 クバーセクの者はボリス・ズーレク男爵にも会っているらしく、ボリス・ズーレク男爵も計画の一部は知っていると思われていた。

 もちろん男爵はリーディエ・シュブルトヴァーとの婚約を手土産に、病気がちな本家の伯爵位を狙っており、さらに言えば、婚姻していれば、リーディエ・シュブルトヴァーが害されれたあと、広大で富を生み出すシュブルト領を領することもこともできるのではないだろうか、と考えないでもなかった。その考えのためにボリス・ズーレク男爵はイグナーツに会いはするが、彼を連れてリーディエに会うことはなかった。


 イグナーツはボリス・ズーレク男爵領に入った後、領都に近い人知れず朽ち果てようとしている廃村に身を潜めた。一度どこかに出かけたいつもそばにいた男が戻ると、そのまま男爵の屋敷の離れに連れていかれ、迎え入れられることになった。計画に必要だと言われていたために、ボリス・ズーレク男爵は仕方なしに、イグナーツを逗留させたが、イグナーツの尊大な態度は変わらない。計画に必要だと言われたために迎え入れたが、勝手な意見ばかりを言う妄想癖のある頭の悪い元貴族の理解力もない男に、ボリス・ズーレク男爵もさすがに腹が立ち、どうやって排除しようかと考えるようになっていった。


 「男爵は運がいい。私は公爵家の者だからな。私が口をきけば、王侯の覚えも目出度くなる。思う存分役に立ってくれ。そうすれば、この国の王に口利きをしよう。私が口利きをして、働きが認められて王に召し出されれば、男爵ごときではない、最低でも伯爵になれるだろう」


 ある時、イグナーツは満面の笑みで、ボリス・ズーレクに近づいて、声をかけた。プシダル国の当時の事情を知るボリスは、苦笑いで答える。


 「・・・そうか、本当に口を利ければありがたいことだな」


 「何を言うんだ?私の口はまだしっかりと動くから、男爵が手伝ってくれたことを伝えるぞ。恩には恩で報いねばな」


 「・・・」


 こいつ、本当に貴族だったのか?嫌味の意味も分からないとは。ボリスは呆れて言葉をなくした。


 だが、イグナーツは気分をさらに良くしたようで、さらに言い募った。


 「いい気分だ。男爵がお膳立てをしてくれて、私がラドミラに復讐できれば、褒賞も思いのままにできるだろう。そう進言しよう」


 「・・・しかし、なぜそんなにリー、いやラドミラが憎いんだ?」


 ボリスが水を向けると、イグナーツは顔を顰めた。いかにも思い出したくもないという風情だ。


 「教えてほしいのか?男爵も理不尽さに怒りに震えるはずだ・・・」


 「・・・教えてくれ。私もラドミラという女のやったことに興味がわいてきた」


 イグナーツが話し始めると、ボリスは呆れて口がふさがらなくなった。


 私は公爵家の次男に生まれた。私は生まれた時から優秀で、完璧な容姿をしていたので、ラドミラはそんな美しい私に恋情を覚え、私を夫として迎えたいと願ったのだ・・・。


 そんなわけのわからない話から憎しみを語り始めたイグナーツは、最初はよく回る口だとだけ呆れていたボリス・ズーレク男爵の表情が抜け落ち、無表情になっていくのにも気が付かず、ただただラドミラ・カシュパーレク伯爵令嬢はどれほどの悪女なのかを根拠なく語っていく。


 あのラドミラよりも私のほうが優秀だった。王立ハルディナ学院でも本来なら私のほうの成績が上になるはずだったのだが、ラドミラは教員を買収していたのだろう、いつも一位だったが、そのようなことをしない私の成績は順位で言えば学年の真ん中だった。

 あの学院は依怙贔屓が蔓延してまともな成績は取れなかった。私は不正をするラドミラを婚約者として諫めようと思って、あれこれ意見をしたが、なしのつぶてで聞き入れることはなかった。ある時学院がどれだけ不正をしているか確認をしようとして、教員から出された課題を時間がないと言い募ってラドミラにやらせてみた。口答えをあまりしない女だった。その点は褒めてやってもいいかと思っているのだが、一度だけため息をついたラドミラは、次の日には課題を持って現れた。もちろん私の考えを文章にしたほうが出来が良いはずだが、今回は目論見があった。

 実は私の書いたものは教員に理解されなくていつもよくない評価をつけられるので、これを提出して悪い評価を受けたなら、書いたのはラドミラだと公表して、教員による依怙贔屓がある証拠とできるだろうと、私はその目論見のまま提出した。

 だがなぜか目論見の通りにはならなかった。私が書いていない今回は高く評価されてしまった。私の企みは事前に見破られた。さらには突然内容について教員から質問を受けてしまった。教員は探るような表情で、自分で書いた物なら答えられるだろうと私を見た。残念ながら答えることができず、教員は私の書いたものではないと見破り、課題提出に不正をした咎で、私の評価は下げられてしまった。口惜しいが、教員は案外物をよく見ていたらしい。

 ただ、私は講義の理解度を、出される課題に対しての提出で測るやり方に抗議の意味を込め、さらには面倒な課題をこなすことに意義を感じることができず、卒業までの課題は全部ラドミラにやらせることにした。だが、いつもラドミラとはわからないようにしろと伝えて書かせていたのだが、教員はいつもわかっていたらしい。人を見る目も持たないくせに、私が出す課題はいつも最低評価だった。どうやら私や本人にもわからない独特な言い回しや本人では知りえない癖があり、どうしてもラドミラが書いていたとわかってしまうらしい。ただ、そうやって成績優秀の私の成績は課題を自分でやらなかったことよりいつも実力より低かった。


 ボリスは呆れて頭を振っていたが、思わずポツリと感想を漏らした。


 「・・・不正をしておいてよくもまあ、自分をこんなに美化できるものだ・・・」


 話は続いている。


 しかし、私の行ってきた抗議が学院に受け入れられなかったことが誠に残念でならなかった。あの学院は私のような理想を持つものを悪いほうに矯正しようとしており、それは・・・。


 ボリスが、気を取り直してまだまだ続きそうな話を、強引に逸らす。

 「・・・学院に居た時のことではなく、もっと昔のことで印象に残っていることはないのかな?」


 「あまりにもラドミラのやり方がひどくて吐き気でもしたのか?そうだろうな、温厚な貴族教育を受けた者ならそうなるのもわかるぞ」


 違うわ!ボリスはそう思ったが、とにかく頷いて見せた。わかったというイグナーツは少しだけ遠い目をして口を開いた。


 幼い時に初めてラドミラに会った時のことだ。

 最初は確かに美しい女だと思った。ものすごい美人だった、いや、美人だったが、その容貌は好みじゃなかったはずだった。ただ美しいとだけ思った。興味は湧かなかったはずだ。父や母に挨拶をするときの笑顔がキラキラ輝いて、それに同席した兄上に飛び切りの笑顔で挨拶をするのを見て、私は胸の中に何か嫌なものを感じたぐらいだった。その次は私に向き直って、礼をしたときは天にも昇る気がした。だが、その笑顔は兄に向けたものとは違い、飛び切りの笑顔じゃなかった。ぎこちないものだったんだ。


 ボリスは苦笑せざるを得なかった。


 「・・・それ、ラドミラ嬢は緊張して笑顔がぎこちなくなったんだろうよ。そんなこともわからないのか。・・・これが馬鹿だと言われる所以か」


 だが、怒りの表情でいるイグナーツにはボリスの呟きは届かない。


 私は馬鹿にされた気がしたよ。だから私はお座なりな笑顔に終始することにした。

 次に会う時以降は、私に近寄ってきていたあいつだったが、私が義務感からあいつと会っていたことに気が付いたのか、そのうちに生意気にも私にあまり近寄ることも無くなった。あの美しさだから、そばに居ればそれなりに周りに優越感に浸ることができたのに、あいつは私のそばに長い間居たことはない。お茶会にも一人で出たり、勝手に休んだりする。不仲だと噂が立つと、私は怒りのあまり拳を振り回すこともあった。何とか言うことを聞かせようとしたのだ。脅せば言うことを聞くと思ったが、ますます一人で過ごす羽目に陥るだけだった。


 あいつのことがさらに嫌になった事件があった。あれは私と兄上が一緒に居た時に、あいつがやってきたときのことだ。私は、あいつが、私と兄上を区別するような視線に腹が立った。だが、兄上がそばにいたせいで、私はラドミラを非難することができず、逃げ出さざるを得なかった。だが、兄上は残ってあいつの相手をしたらしい。その後兄上があいつに何かされたのではないかと心配になり、様子を見に行った。兄上はけがもなく、大丈夫なようだったが、兄上らしくないことを私を見て言い出した。兄上は真顔で、ラドミラのことを褒め、そしてあいつから逃げた私を叱ってきた。私はそんな兄を情けなく思った。兄上はその時まで私の誇りでもあったのだが、その時からラドミラに堕落させられた情けない人間になってしまい、私は兄上から距離を取るようになったのだ。あの優しかった兄上のことをあきらめなければならなくなった私の無念がわかるか?


 「・・・勝手に悪者にしたんだ、わかるわけないだろう・・・」


 容姿については案外見た目はいいと思っている。ただ、婚約者としては、私の言うことには従順に従って私を立ててはいたと思うが、物言いがきつく、私の感情を逆なでするような無表情で私を見ていて、怒鳴っても怯えもせず、淡々と事実を述べるだけだった。私はあの感情のこもらない目が嫌いだった。


 だが、信頼されていたのか、よく学院の者には色々と相談されていた。休憩時間にはいつも人が周りにいた。もちろん私のほうにより人が来たがったが、私は人と群れるのが好きではないせいか、人がそばにいるのを得意がるラドミラと違って、いつも人がそばにいなかった。それにラドミラという出来の悪い婚約者が居たことは事実だから、遠慮もされていたのだろうと思う。まあ、最終学年時には聴講生としてベェハル国からリーディエがやってきていたので、その案内やエスコートをしてリーディエを守ろうとしていた私には、友は意図的にそばにはいなかったはずだ。


 そうだな、リーディエはけなげでかわいかったから、リーディエのそばにいつも居るようにしたら、ラドミラに睨まれて、虐められていたようだ。

 よく私がかばうと、しばらくはラドミラは手を出さなくなるのだが、リーディエの態度が気に食わないのか、そのうちにまた虐めるようになるらしい。聴講生として最後のほうになると、ほぼ守るために私はそばに張り付くのが常だった。

 だが、そんなリーディエに取り入って、ラドミラが男爵領を乗っ取るなど、言語道断、絶対にこの手で制裁を加えてやらなければ!


 「・・・リーディエがラドミラだとまだ気づいていないとか。まさか、そんなバカとは・・・」


 ボリスはもう目の前の男が得体のしれないモノのように思えて仕方なかった。必要以上に係らないほうが良いと離れに行くこともなくしたのだった。


いかがでしたでしょうか。まさか坊ちゃんがいまだ夢見てるとは思いませんでした。彼はこの後、捨て駒にされるのでしょう。

前半部分はなぜボンクラ坊ちゃんがお隣の男爵領にいるのかの経緯を説明するために挿入したのですが、これのため長くなってしまいました。本来はもっと短かったのです。ボリス・ズーレク男爵のツッコミがさらにひどく入る感じでした。

でもボリス君も随分ツッコミが入るような甘い目論見です。リーディエにツッコミ入れられたら、もう頭抱えちゃうのではないでしょうか・・・。


最近読んだなろうの小説に書いてあったのですが、何か下の星についてのお願いをしないと、この人は評価いらないと思われるらしいのですね。もし気に入ったのなら、下の星で評価を入れていただけるとありがたいです・・・。でも評価ってそういうふうにお願いするものなんですね、知りませんでした。

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