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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
第二章 残念美人の女男爵は婚姻を望んでいます
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残念美人は婚約者を決める~後編

残念美人の婚約者決まりました。

一話が長くなり、前後編に分けた後編部分です。

 皆様、ごきげんよう。

 私はリーディエ・シュブルトヴァー男爵です。


 いつの間にか、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様の手を握っていたはずの私の手は、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様の手に包み込まれています。あれ?最初私が握ってたよね?

 「・・・シュブルト男爵、私からお伝えしたいことがあります。聞いてください」

 「はい、わかりました」

 私が了承すると、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様がにこりと微笑まれました。

 「私は男爵、あなたが気になっているのです」

 は?ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様が私を気にしている?ですが、それでは私を含め困ってしまいますね。


 「・・・ああ、そうです。私はあなたを好ましく思っています。最初はプシダル国の王立ハルディナ学院に留学した経験のある友人にあなたの事を聞いていたのです。その友人はあなたは美しいとも可愛い人だとも言っていました。さらには外見ではなく、中身で印象に残る人だとも言っていたのですよ。その友人からあなたがシュブルト男爵家の当主になると聞き、頭脳はなかなかのものだと考えていたので、同じ貴族の当主として付き合えるならと思ったのです」

 握られていた手を離され、私は手をそっと引っ込めます。その間もラドヴァン・ベチュヴァーシュ様の言葉は続いていました。

 「ですが、初めて男爵が陛下に面会された年の冬前に私はちょうど王城に用があり、王城に上がったときがありました。先代のシュブルト男爵と一緒に陛下に目通りされているあなたを王城で拝見して、本当に衝撃を受けたのです。あの時あなたはほとんど化粧もされずに登城なされていた。私はその留学をした友人の好みを知っていたので、王城であなたを拝見するまでは、あなたの容姿は私の好みに合わないと思っていました。だが、王城で見たあなたは本当に可愛くて美しく、私はあなたに一目で心を奪われた」


 「・・・」

 あ、この人ラドミラ好きの国王とは違い、リーディエ好きの人だ。あの王城に大伯父様と一緒に行った時に見たと言ってるけど、あの時、この人いたっけかな?見た覚えはないのですけど。まあ、この人、あの時に私を見かけて気に入ったってことですねえ。今の流れだと求婚するつもりでしょうね。ただ問題があるでしょうね。それは公爵家の嫡男だということでしょうか。

 「男爵は私の理想そのままな方です。民を一番と考えるその考え方、領地における特産品の開発、そしてその容姿。私としては男爵を誰にも渡したくなかった。だからシュブルト男爵の相手になろうとしているストルナド侯爵のレオポルトや、ズーレク男爵に汚点がないかと一冬かけて探して回りました。シュブルト男爵が騙されないようにと」


 「・・・それで夜会の時に、私に近づいてあの二人の事を話したということでしたか」

 「そういうことになります。あの時は男爵の目が曇っていたらと思い、焦ってしまいました。だが、元々あの二人の事は何も考えていないと今聞いて安心したと言うか」

 安心したと言う表情で私を見ているラドヴァン・ベチュヴァーシュ様です。で・す・がっ!何度も繰り返していますから、もう聞きたくないと言うかもしれませんが、言わなくてはなりません!

 「・・・一つ、言っておきます、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様。私は今のままではあなたと婚姻するつもりはありませんよ」

 私はラドヴァン・ベチュヴァーシュ様にくぎを刺します。

 「なぜ?」

 表情が固まっています。


 「お分かりになっていますか?前提がありますでしょう?あなたは公爵嫡男。いずれ公爵家の当主になる方です。対して私は男爵家の当主、それも私があなたに嫁げば、下手をすると男爵家がなくなるかもしれもないのです。それともなんですか?あなたは公爵家の当主になるのを辞めて、私のシュブルト家に婿に来れますか?」

 「・・・」

 私の言葉に、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様は何も口にすることはできず、黙ってしまいます。ちょっとだけ厳しい物言いになってしまいましたが、私はもっと厳しいことを言わなければなりません。

 「・・・申し上げたくはありませんが、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様にはヴィクトル様と言う弟様がいらっしゃることは存じております。その弟様に公爵家を継がせるということもできないわけではないと考えるのでしょうが、その弟様は病弱で公爵家の当主は勤まらないと言われているのではありませんか?それなら、私と一緒になるために公爵家を潰しますか?そのようなことは無理と言うものではありませんか?」

 私の言葉に、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様は喉に物が詰まったように口を噤んでしまいました。

 「・・・その通りですね・・・」


 少し放心してしまったラドヴァン・ベチュヴァーシュ様を見て、私は肩をすくめます。

 「・・・お分かりになったのならもうお引き取り下さい。もともと私とあなたは一緒にはなれない間柄だったのです」

 「そ、そんなことはないと思う・・・」

 私はため息をつきました。

 私はダナに目くばせして、お代わりを淹れてもらいました。ダナは私とラドヴァン・ベチュヴァーシュ様の分を入れ替えてくれます。


 私が持ち上げたカップを揺らしながらお茶を飲み始めると、ラドヴァン・ベチュヴァーシュ様は私に視線を合わせました。

 「まあ、このお茶を飲んでお気持ちを楽にしてください。私に好意を抱いてくれたことは有難いですし、何より隣の男爵の領地にイグナーツ・ペリーシェク様がいるとおしえていただきました。私はそう言うあなたが嫌いではありませんし、入り婿を取らなければならないと言う私の事情がなければ、婚約を申し込まれた相手としては最高の相手だと思います」

 「・・・」

 「・・・ああ、そうでした。ブーゲンビリアの花をありがとうございました。ちょっと部屋がバラに埋もれてしまっていて、辟易しているところでしたので、新鮮な感じで嬉しく思いました」

 「・・・バラに埋もれている・・・?どう言うことでしょうか?」

 「実のところ、今、私はベェハル王から求婚されていまして、国王からバラの花が毎日届くのです」


 「・・・」

 私の言葉にラドヴァン・ベチュヴァーシュ様の顔が更に曇ります。私が国王から求婚されていることが珍しいと思っているのでしょうか。

 「先の夜会で、私は国王に求婚されました。その場で断ったのですが、あちらが全然諦めてくれないのです。私はシュブルト家の当主と言っているのに、それを無視して王妃として迎えようと言ってくるのですよ。私はシュブルト男爵家を救うために、男爵位を継いだと言うのに」

 「・・・」

 「それに、あの国王は私の好みなどわかろうともしないでバラを送ってくるのだろうと思いますが、私はそれほどバラが好きではないのです。ですからラドヴァン・ベチュヴァーシュ様のブーゲンビリアはすごく嬉しかった。たとえ花言葉が『あなたしか見えない』であろうとも」

 私はそう言いながらちらりと視線を上げます。そうするとラドヴァン・ベチュヴァーシュ様が顔を赤くして固まっていました。私はクスリと笑って澄まし顔でカップを取り上げました。


 私がお茶をゆっくり飲んでいる間何もできずにいたラドヴァン・ベチュヴァーシュ様がようやく硬直から解けて何か決意を漲らせて口を開きます。

 「花の意味を分かっていただけていたのなら、話は早いでしょう。私はリーディエ・シュブルトヴァー男爵に求婚したいと思っています」

 その言葉に私は、溜息をつきます。仕方なしに私は、ちょっと前から考えていたことを目の前の方はできないだろうなと思いながら話しました。多分一番思い切っていただければ、出来る事なんですけどね。でも公爵家の嫡男さまでは無理でしょうねえ。

 「・・・お気持ちは有難いですが、国王のこともありますし、公爵家嫡男のラドヴァン・ベチュヴァーシュ様では求婚していただいても受けられません、よほど思い切っていただかなくては、です」


 「もし私が公爵家の継承権を放棄したら?それなら・・・」

 「それは家中で許されるのですか?」

 私の一言にラドヴァン・ベチュヴァーシュ様が一瞬だけ詰まります。

 「・・・許されないと思う・・・」

 口ごもりながらラドヴァン・ベチュヴァーシュ様が答えます。

 「でしょう?」

 「・・・」

 肩を落とすラドヴァン・ベチュヴァーシュ様です。

 私はこの方が少々哀れになってきました。この方、確か私の二つ上の21でしたわね。そんなにベェハル国ではモテないのかしら?

 「・・・そんなに私と一緒になりたいのですか?大して知り合ってから時間も、会った回数すら数えるほどだと言うのに?」

 真面目な調子で聞くと、項垂れていた顔を音がするぐらい勢いよく振り上げて、私を見ます。


 「リ−ディエ・シュブルトヴァー男爵は私の理想だと思っています。先ほども言いましたが、領地の経営も民を大切にする姿も、これから家督を継ぐ私の手本になると思います。そして、その容姿。私は正直なところ、夜会のような華々しい容貌のあなたより、今ここでのあなたの容姿の方が、堪らなく良い」

 私はもう一度溜息をつきます。何度も決意を折ろうとしたけど、折れない方ですね。私と一緒になると苦労すると思いますけど・・・。でも公爵家の内情にも興味がありますね・・・。引っ掻き回すのも面白そうです・・・。あ、私、いやな女だ・・・、残念美人だ。

 「・・・わかりました。それでは私から提案があります」

 「て、提案ですか?」

 あら、食い気味ですね。体が前のめりです。

 「はい、提案です」

 にこりと微笑めば、更に体を前に出してきます。そんなに私に恋い焦がれるみたいな演出などしなくてよいのに。

 「普段は自分の領地に居て、冬の間だけ一緒に暮らしませんか?」

 「は、はい?」

 あっけにとられたラドヴァン・ベチュヴァーシュ様は、呆けた様に私を見ています。私はそのお顔にもう一度微笑みかけました。


 こうして私は、公爵家の跡取りと婚約し、うるさい国王からの求婚も蹴ることができたのです。


いかがでしょうか。本当は王妃にして、年中領地に居て、国王が通い婚で、残念美人の領地に通ってくると言う話を書いていたのですが、さすがに国王にそんなことはさせられないし、国王との年齢差がこの時代の親子並みに離れていたので、途中で方向転換して、二つ年上のお兄さんを相手にしました。

実のところこの話はさらにもっと長くなる予定でしたが、この後の話は違う題にして、このあと投稿して行きます。

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