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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
第二章 残念美人の女男爵は婚姻を望んでいます
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残念美人は家族に会う

前回投稿しましたその5が長く、切れ目もうまく分けられなかったため、話を分けて流れを直してその6として投稿し直します。新しい投稿で読まれている方、誠に申し訳ありませんが、その5をお読みになってから、その6をお読みください。また、前回に投稿しましたその5だけ読まれている方は、再度その5とその6をお読み下さい。混乱をさせてしまいまして誠に申し訳ありませんでした。

 皆様、ごきげんよう。

 私、リーディエ・シュブルトヴァー男爵です。

 私の婿候補であるお隣の領地のヴァスィル・ストルナド侯爵の次男のレオポルト様は、夕食を共にしようと私から申したのですが、雪が降る前に王都に行き所用を済ませておきたいのでとお断りをされ、暗くなりかけなのにもかかわらず、馬車を急がせてお隣の領地へと帰って行かれました。


 私が外して椅子の背に掛けた剣をじっと見ていたのは、剣については相当修業したからとのことでした。私の持つ贈り物の剣が相当いいものだと思ったらしく、剣に興味があると言います。許すと、鞘から引きぬいて、『ちょっと持ち方を変えないと私ではこの剣は使い辛いかも』と言いながら重さやバランスを測り、刀身に見入ったりしていました。そりゃそうでしょうね、これは私だけが使える物で、贈り物としてもらった後、わざわざ名工のところに出向いて、私の手に合う様に調整をしてもらったものですから。

 名工は私が訪れたときにこの剣を私が使うものだとは思わなかったらしく、最初は邪険な対応でしたが、何度も頼むうち、根負けして調整をしてくれたのです。私が剣を抜いて構えたときに、名工は目を見張って驚き、やがて苦笑いをして『それでは確かに使い辛いだろう。直すからしばらく預からせてもらえないか』と言って来たので、数日預けました。その日は私が出かけないとならない日だったので、執事のフィリプが受け取りに行ってくれましたが、フィリプは剣と共に後日気に入らなければ再度調節すると伝言を持ち帰ってきました。私が持ったところ、私の手にぴたりと馴染み、私はフィリプに名工への心づけを送るように依頼をしました。


 さて、大伯父様が私の婿取りについて急いた理由はと言うと、ベェハル国国王に夜会について打診を受けた直ぐ後で、実家の父とヴィーテクが慌ててやってきたときまでさかのぼります。あの時は私が、化粧をして出席するのは問題を引き起こす可能性が高いだろう、ただもう仕方がないことだから、王家の意図が分かった時点で対処しようということになったのですが、実は大伯父様の認識に原因があったのです。ですが、父と弟も大伯父様と意見を共にしていたことから、そういう考えをベェハル国王は、心の奥底に隠していたのではないかと考えていたのだろうと言われれば、私は納得できたわけではありませんがそうなのかもしれませんね。


 私はあの日、執事のロマンに言われて自室の繋がっている執務室から父と弟を玄関まで出たのです・・・。


 父と弟は、馬をとばしてきたのでしょう。騎乗服の誇りを叩いて落としながら、男爵家の玄関から中に入ってきました。迎えに行ったベドジフ・バーチャも心なしかよろよろしています。男爵家の騎士は機動性を重視して騎乗を習慣づけていますが、戦場に到着後に疲れて動けなくなるわけにいかないという観点から、自分も馬も疲れるまでは騎乗しないはずです。どれほど急いでいたとしても戦場に向かう時は休憩は取るでしょう。それがどうやら今回は無茶をして休憩なしに飛ばしたようです。馬がつぶれてしまわなければよいのですが・・・。つぶれたら優秀な馬が一頭無くなってしまいます。


 「ベドジフ・バーチャ卿、あなたはもう休みなさい。疲れが取れるまで勤務に就くことは禁止します」

 私の言葉にバーチャは不満げな表情をしましたが、執事のロマンが私の隣で頷いたので、何も言わずに私に一礼して下がっていきました。

 「ロマン、バーチャ卿が無茶をするかもしれませんから、丸一日休暇を与えてあげて」

 私が傍らのロマンにそう伝えると、ロマンが一礼してバーチャの後を追って行きました。

 「大伯父様、私が二人を応接室に案内します」

 「わかった」


 疲れた表情のヴィーテクが応接室の椅子に腰かけて自分の掌を見ています。父はと言えば、なぜか私を黙ったまま見つめて椅子に座っていました。侍女が手早くお茶を二人の前に出すと、二人が私に視線を投げかけました。喉が渇いているのでしょうね、ここまで休みもせずとばしてきたようです。

 私が頷くと、二人は同時にお茶に手を伸ばし、ほぼ一気と言っても良いほどの速さで飲み干しました。

 「まだ飲みますか?」

 「・・・欲しい」

 ヴィーテクが答えます。

 今度は侍女がこの場で淹れて出します。2杯目ですので、落ち着くための一杯でしょうか。熱いそれを一口口に含んで嚥下しました。

 「お二人とも恐れ入ります。お呼立てして申し訳ありません」

 私が口を開くと、父と弟は視線を私に向けました。

 「少々困ったことになりまして・・・」

 「・・・困ったこと・・・か」

 父がため息とともにお茶をもう一口口に含みました。

 「リ、リーディエ、」

 大伯父様がつっかえながら口を開きます。私の名ってそんなに言いにくいかなあ・・・。

 「はい・・・」

 「わしが説明してよいか?」

 なぜか大伯父様が切実な表情で父と弟を見ていました。

 「・・・わかりました。お願いします」

 私が頷くと、大伯父様が姿勢を正しました。つられて、父と弟が姿勢を正しています。

 「リ、リーディエが国王に見初められた」

 「・・・は?」

 「・・・な?」

 「・・・」

 最初のは?はわたしです。次のな?はヴィーテク。そして最後が父です。

 いえ、違う、律儀に解説してる暇なかった・・・。大伯父様の一言に私は思考が停止しました・・・。


 ヴィーテクが項垂れて椅子に座っています。なんだか、あの格好は見覚えがあります。そう言えば、確か私が男爵家の当主になったときに、一人二役をするきっかけになったアイディアを出した時に、こんな格好をしていたと思います。

 父が放心したまま、宙を見ています。

 「つまり・・・姉さんが王妃になるということですか?大伯父様」

 いち早く回復したヴィーテクがうつ向いたままだった頭を上げて尋ねました。

 「あ?」

 いえ、あ?じゃなくて・・・。

 「い、いや、お、王妃にはならんと思う・・・」

 「・・・」

 「・・・」

 「・・・どゆこと・・・?」

 律儀に解説しますね。最初の沈黙がヴィーテク。次が父です。そして最後が私です。どゆこと?


 「・・・すみません、伯父上、私にわかるように説明をしていただけませんか?ラドミラはシュテファン王に見初められたのですよね?」

 父が姿勢を正して、改まった口調で尋ねます。

 私は大伯父様が言ったことが全然理解できなくて、父の言葉の訂正を忘れてしまいました。常に冷静にと、いつも自分に言い聞かせてきたのに!

 「ああ、そうだ」

 「シュテファン王はラドミラを娶りたいと言われたということで間違いありませんか?」

 父が大伯父様にした質問に、私は衝撃で口を開くことができずに、再度の間違いの訂正ができませんでした。なんてこと!情けない!

 「いや、そうではない!あのガキがラドミラを娶ることはないと思う」

 よ、よし!私、衝撃から立ち直ったぞ。間違いを正さなければ!

 「大伯父様、リーディエです!リーディエ!父様も私はもうラドミラじゃないの!私はリーディエ!わかった?ちゃんと呼ばないともう返事しませんから!」

 ようやく口を挟めた。なんで、この二人は私をリーディエと呼べないのかしら!

 「あ、ああ、わかった・・・、お前はリ、リーディエだった、すまない」

 「・・・年を取ると、頭が固くなってくるんだよ、姉さん・・・、と言うか、問題にするとこ、そこ・・・?」

 ヴィーテクが私を憐れむような顔で見ていました。


 「・・・つまり、シュテファン王はラ、じゃなくてリーディエを夜会に招待したと。その時にお義母さんの容姿で出て欲しいと、言われたということですか・・・」

 父がそう確認すると、大伯父様が頷きます。

 「そうだ」

 「・・・でも姉さんを気に入ったらしいのでしょう?違いますか?」

 「・・・気に入ったのだろうな。なんせ、エヴェリーナの直系の女の子はラド、じゃなくてリーディエしか居ないからな。他に女の子がいれば別だが」

 大伯父様の言葉に、父とヴィーテクが頭を抱えます。

 「・・・そう言われれば、おばあ様の血を受け継いだ女の子は姉さんだけなんだ・・・」

 「これは、有り得るぞ、有り得る・・・。これは・・・」

 二人の様子に、私は少々腹を立てます。

 「ちょっと、どうしてそんなに深刻なの?まさか、私を王妃にするなんて多分ないから。私は残念美人だから、国王だってそんなことを考えたりしてないって!私はおばあ様に及ばない残念美人なのよ!」

 ばっと、大伯父様、父、弟が一斉に私を振り返ってみます。

 「・・・」

 「・・・」

 「・・・はあああああ」

 何よ、ヴィーテク、その長い長いため息は。

 「姉さんは残念美人の意味を取り違えていると思うんだけど」

 「・・・何よ、見た目がおばあ様に及ばないと言う意味でしょ?」

 「・・・違うよ。姉さんは考え方が残念なんだよ・・・」

 「私の考え方が残念っていうこと?姉に向かって何を言うの!これでも王立ハルディナ学院では三年間の総合一位だったのよ!考え方が残念なら一位なんて取れないでしょ!」

 「・・・もういいよ。どうせ言っても分からないよ。思い込みって盲目なんだよ」

 ヴィーテクの言葉に私は不本意ながらも黙るしかありません。弟は私にはいつもよくわからない理屈を言って、私が説明が理解できなくてさらに粘ると、上手い説明ができないと言って、結局説明もしてくれないのです。あれで、王立ハルディナ学院で、私の下の学年の総合一位なんてよくとれたものだと思います。わかるように説明できなければ、総合一位なんて無理なはずなのに!ああ、腹が立つったら!


 「ま、まあ、そんな姉さんを見初めたわけじゃなさそうだし、シュテファン王はおばあ様と似た顔が見たいと所望されたわけですよね。仕方ないところもあるのじゃないですか・・・。

 ただ、シュテファン王はどこでおばあ様を見かけたのでしょうか。おばあ様がパーティに出ていた時期とシュテファン王がパーティに出るようになった時期は全くズレてしまっていて、かぶりませんよね?」

 私の視線に気づいたのか、ヴィーテクはとりなすようにしながら大伯父様に質問をしている。

 「お前の言う通り、かぶっていなかったはずだったんだ。ただな、わしも気が付かなかったが、エヴェリーナがマトウシュ殿に会いたくて、頻繁に出ていたパーティに、ガキの癖に身分を隠して出たことがあったらしく、エヴェリーナを見かけて夢中になったらしい。色づきやがって、こざかしいガキだ」


 結局、化粧をして出席するのは問題を引き起こす可能性が高いだろう、ただもう仕方がないことだから、王家の意図が分かった時点で対処しようということになったのです。大伯父様と父と弟は見初められたわけではないと言っていましたが、何を言い出されるかわからないので、大伯父様以外にも父か弟が付いて出席する方法を考える事になりました。また夜会に出席するために化粧ができる者をカシュパーレク家の侍女の中から選んで送るからと、その日のうちに帰って行きました。ただ、もう一つ、申し合わせたわけではないのですが、大伯父様と父とで、もう早くに婿取りをして、国王に手を出させないようにすればいいのじゃないかと真面目な表情で話しているのを、私は聞いています。その時、大伯父様がキランッと目を光らせていたのも、私は見ています。

 つまり、このお隣の領地の次男坊が来たのは、大伯父様が私を王家に取られまいと婿取りを本格化させた賜物ということなのでしょう。私が王家に取られれば、大伯父様はまた新しくシュブルト男爵家を継げる方を探さなければなりません。その前に私が婿を取れば男爵家はこのまま存続するでしょう。

 でも夜会までに婿を決めるなんて無理なのではないでしょうか・・・。


前回投稿しましたその5が長く、切れ目もうまく分けられなかったため、話を分けて流れを直してその6として投稿し直します。新しい投稿で読まれている方、誠に申し訳ありませんが、その5をお読みになってから、その6をお読みください。また、斬回に投稿しましたその5だけ読まれている方は、再度その5とその6をお読み下さい。混乱をさせてしまいまして誠に申し訳ありませんでした。


実のところ、設定ではベェハル国の国王は独身で、年齢は34~5歳のつもりです。幼いときにこっそりとパーティに出て、エヴェリーナの美しさに虜になった拗らせくんです。旦那様のマトウシュ・カシュパーレクを脳内で暗殺しようと思ったこともある(できませんけどね)王子だったのですが、リーディエに出会い、夜会でダンスを踊ってみたいと粘着です。暴走しなければよいのですが・・・。

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