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残念美人である貴族令嬢は婚姻を望んでいます  作者: 花朝 はた
第一章 残念美人の伯爵令嬢は婚約破棄を望んでいます
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残念美人は婚約破棄をしてほしい

王立ハルディナ学院の卒業後のパーティで、家族から残念美人と言われるラドミラは婚約者様に詰問される。だがラドミラの気の弱そうな容姿も何もかもが、ラドミラの演技だった。

短編「残念美人の伯爵令嬢は婚約破棄を望んでいますhttps://ncode.syosetu.com/n0808gh/」を連載にしてお届けします。ラドミラ=リーディエの学院生活と卒業後の領地経営と婚姻までのお話をこれから投稿していきますのでご一読ください。

 煌びやかな照明が会場を照らしています。本来ならばこの照明は、私を華やかに照らすはずでしたが、私はその様な感慨も無くただ険悪な雰囲気にさらされておりました。


 私は生徒主催の卒業式の後のパーティの会場にいます。このパーティは貴族が通う王立ハルディナ学院の生徒たちが企画運営する学院の年行事の一つで、生徒の代表が学院の講堂を貸し切って、夜半まで続けられるパーティなのです。このパーティーの前には学院の過程を終了したと言う学院の卒業式がありました。


 私は目の前に仁王立ちする、私の婚約者様のご尊顔を見ながら立っていました。

 私の婚約者様は、イグナーツ・ペリーシェク、ペリーシェク公爵の次男で、繊細な美しさを持つ美男と言われている方ですが、私はそう思ったことはありません。今その顔が顰められ、額に垂れさがるような金の糸を思わせる前髪をかきあげて、私を睨みつけました。


 「どうなのだ?カシュパーレク伯爵令嬢、ラドミラ!私の婚約者でありながら、他国からの留学生であるリーディエ・シュブルトヴァー男爵令嬢に嫌がらせをしていたと聞いたぞ!事実なんだろうな!」


 私は何も言えず、ただただイグナーツ・ペリーシェク様のお顔を見ながら黙っているしかできませんでした。

 私は心の中では、そんなことをやれるはずがない、物理的に無理だと内心ほくそ笑んでおりましたが、とある事情で言葉にはできません。ただ、とある事情がなくても、私の婚約者様であるイグナーツ・ペリーシェク様は私の言うことなど到底聞き入れないと思います。まったく俺様お坊ちゃまなのです。


 ところで、申し遅れましたが、私はあの婚約者様が言いました通り、今はラドミラ・カシュパーレク、カシュパーレク伯爵の長女でございます。家族は私の父である伯爵とその妻で私の母である伯爵夫人、そして嫡子である長男にあたる弟とそれに次男にあたる下の弟の五人家族です。我が伯爵家は一応特産物のある領地を持っていますが、その特産物は国内での消費が主なものですので、一定の需要しかありません。家訓は無駄遣いはしない!です。


 我が家は案外有名な家なのですが、父の先々代の当主から、それまでの武の家から文の家にと鞍替えを致しまして、それが案外成功したと思います。鞍替えを致しました遠因と言うものがありまして、話せば長くなりますが、どなたか聞きたい方はいますでしょうか?居なさそうですね・・・。でも簡単に言ってしまいましょう。


 そこ、妙な合いの手を入れないでくださいますか。最初から簡単に言えるのなら簡単に言いなさいとか、どうせ長くなっちゃうんだから言わなくていいとか。


 こほん、ではお話致します。あら、どなたかが、つばを飲み込みましたね。あまり期待しないでいただけますでしょうか。

 我が伯爵家は三代前は案外な格式のあった辺境伯爵家でした。辺境伯爵と言うものは我がプシダル国独自の爵位ではありませんが、あまり他国ではない爵位でしょう。我がカシュパーレク家は三代目以前はその辺境伯爵家として、それなりの力を有しておりました。それが戦のおかげでしたので、戦がなくなれば用なしとされてしまうことは自明の理でした。皆様、お考え下さい、辺境伯爵はそこが辺境だから存在する地位です。辺境ではないとなってしまえば、必要になりますか?


 そうです、どこからか答えが聞こえましたが、はい、その通りです。我が国は敵対していた隣国のクバーセク国と友好条約を結び、戦は終わりました。我がカシュパーレク家は辺境伯爵として、辺境地域の軍事裁量権を持っておりましたが、友好条約を結んだ隣国が敵対する恐れがなくなったということで、軍事裁量権を失くし、普通の伯爵家となってしまったのです。とはいえ、爵位の呼び名は変わらず、カシュパーレク伯爵家ですので、地位自体は下がったわけではありません。ありませんが、軍事裁量権がなくなったため、私兵を持つこともなくなり、我がカシュパーレク騎士団は解散致しました。騎士達はカシュパーレク当主の推薦状を持って、プシダル国のあちこちに散っていき、色々な貴族の代理人や私立騎士団の指揮官や守備隊の隊長などの地位を得たとお聞きしています。私としましても、そこのところは非常に気になるところでしたが、全員が身元の堅いお仕事についたとお聞きしておりますので、安心しております。

 あら、御免あそばせ、短く話すと言っておきながら結局長くなってしまいました。改めてお詫びいたします。


 さて、私は今王立ハルディナ学院の卒業を祝うパーティに出席しているのですが、この学院は貴族位を有する子息子女を対象とした学問を修めるため学校です。私はつい先ほどこの学院を卒業致しました。

 この王立ハルディナ学院は貴族のための学校で、平民は入学できません。貴族の子息子女の数は決して多くはなく、クラスも学年に2つ、1クラスの人員は15人とはっきり言って学校としての利益は度外視した教育をしております。と言えばお分かりになると思いますが、学院は貴族が寄付したお金で運営されており、その寄付の対象は貴族の子息子女に教育として還元されるようになっております。ですので、平民からの寄付がないため、平民の子息子女は入れません。何と理不尽なとお怒りになる方も居そうですが、平民の方には平民の方用の学校もありますので、そちらの方で学ばれたほうが良いとされております。貴族には領地があり、領地の運営に対して全責任が貴族に掛かります。それについての教育をするところに平民の方が入って何を学ぶのでしょうか?私も領地に住む平民に学院の教育について話したのですが、それが農作物の収穫に何の関わりがあるのかと言われて、ずいぶん悔しい思いをしたものです。今を見る平民の方々と未来を見ようとする私とは話が合わないのは当たり前というところでしょうか。おや、ずいぶん愚痴を言ってしまいました。ただ理解されないということが辛いと言いたかっただけなのです、申し訳ありません。


 「いい加減に答えろ、ラドミラ!リーディエに嫌がらせをしていたのか!」


 私は相当焦れた様子のイグナーツ・ペリーシェク様に再度怒鳴られて、物思いから引き戻されました。ただ私はその言葉に引っかかります。

 ひそひそとパーティに出ている子息や令嬢がささやき合っています。


 『リーディエって、だれ・・・?』

 『ほら、ラドミラ・カシュパーレク伯爵令嬢とイグナーツ・ペリーシェク様を争っていたという噂のある方よ』

 『待ってよ、リーディエって、あれ、一方的にイグナーツ・ペリーシェク様が言い寄っていたというベェハル国から来た男爵令嬢ですよね?』

 『そう言えば、俺見たことあるぞ、あの可愛い顔した令嬢だよな』

 『そうそう、あの可愛い男爵令嬢だよ、俺タイプなんだよな』

 『俺のタイプはラドミラ様だな』

 『俺がイグナーツ・ペリーシェク様の立場なら、絶対ラドミラ様を選ぶけどなあ』

 『いえ、私はリーディエ様でしてよ』

 『ちょっと待ってくれ、俺、疑問があるんだ、確かに美女系と可愛い系となってるけど、なんかベースが似てる気がするんだ・・・』


 ささやきの中に鋭いものがあります!こ、これは危ない感じがします!


 「わ、わたしは、い、虐めるなどしておりません・・・」

 私は少々弱弱しい口調で答えます。

 「嘘をつけ!私はリーディエから直接お前に虐められたと聞いているぞ!」

 嘘をつけとか言っていますが、直接虐めたところを見たわけでもないくせに、どうして断言できるのでしょう。それにリーディエが私ラドミラが虐めたとこのボンクラ公爵子息に言うはずがないのです。

 それにこのイグナーツ・ペリーシェク様には、リーディエと私が二人だけになって居るところを見せたことはありません。まあ、イグナーツ・ペリーシェク様と一緒の時に遭遇したかのようにしたことはありますが、その時は何もありませんでした。というより、何もしませんでしたし、会話もしませんでした。全くできるはずはないのです。

ラドミラ=リーディエのお話を考えるのが面白くなって、色々考えていましたら、学院生活と領地経営のお話を連載にして読んでいただきたくなりました。予想外にラドミラ=リーディエの残念美人振りが可愛くて、感想にもありました恋バナも希望されているならと書きたくなり、いっそ最初からと、新たに書き起こしています。これからの数話は学院のラドミラが婚約者様に嫌われるために苦労するお話を投稿する予定です。ラドミラ=リーディエの残念美人の様を、お楽しみください。

この連載版を最初にお読みになって、まだ短編を読まれていない方の中でどういう話かを知りたいと思われた方がいましたら、「残念美人の伯爵令嬢は婚約破棄を望んでいますhttps://ncode.syosetu.com/n0808gh/」をご一読ください。よろしくお願いします。

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