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先生の秘密と不思議な砂時計  作者: 佐藤先生
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8 小さなネコ






「それで協力者って誰なんですか」


協力者のもとに行っている途中で一川が聞いてきた。


田舎地区にある学校から、高山地区にいる協力者の所に行く道は、田んぼや畑ばかりで、のどかだった。


田舎の匂いは嫌いではない。


「協力者は小さなネコだよ」


「ネコですか。それなのに鼻が効くと」


「そう。鼻が効くし、賢いネコなんだ」


「町の言い伝えにある不思議なネコみたいですね」


「そうだね。この町は少し変わってるから」


「そのネコはどこにいるんですか」


一川は不思議なネコに興味があるようだった。


ネコの話を初めてから彼女の目が違っていた。


「ネコは高山地区の温泉宿で飼われているんだ。いつも調査に協力してもらうために、その温泉宿に行って、借りてきてる」


「早くネコに会いたいです」


「もうすぐ会えるさ」


温泉宿が見えてきた。


高山地区に入ってすぐに温泉街がある。


温泉街の真ん中に流れている川からは湯気も立ち上がっている。


古い造りの宿がいくつか立ち並んでいる。


その1番奥の方に大きくそびえ立っているのが、ネコのいる温泉宿だ。


"和泉屋"という温泉宿。


この辺1番の老舗で、町の外からもお客が多く来ている。


一川もこの温泉街の雰囲気が好きなようだった。


和泉屋に入ると、女将が出迎えてくれた。


「あらあら、大ちゃんちょうどよかった」


品の良い、大人の女性だ。


年齢はおそらく40代くらいなのだろうが、若々しく美しかった。


よくここの女将は僕に依頼をしてきていた。


依頼のほとんどがネコが帰って来ないから探して欲しいということだった。


「どうしました?」


「またネコがどこか行っちゃったのよ」


「本当にすぐどこか行くネコですね」


「賢くて鼻が効くはずなのに、方向音痴なのよ。困ったネコよ」


「じゃあ今から探してきますよ」


「忙しいのにありがとうね。大ちゃんの用はなんだったの?」


「ネコに用があったんです。だから探さなきゃいけないことには変わりありません」


「大ちゃんありがとう。お茶でも飲んでから行くかい」


僕は少し考えて答えた。


「いえ、早くネコを見つけたいので先に探してきますよ」


「そうなのね。そういえば、さっきから後ろにいる子は、生徒さんかしら?」


女将さんは後ろにいる一川のことを聞いた。


「はい。今この子の担任をしているんです。この子の探し物をネコの鼻で探そうかなと思っていたんです」


「あら、初めて大ちゃんの生徒さんを見たわ。本当に大ちゃんも先生なんだね。名前は

何ていうの?」


女将さんはニコニコしながら、一川に聞いた。優しい笑顔だった。


「一川里菜です。先生の生徒です」


初めて会う人だと緊張しやすい一川だったが、しっかりと答えられていた。


「一川さん。大ちゃんは、ちゃんと先生やってるかしら」


少し間があった。


上を見て何と答えるか考えているようだった。


「はい。とても良い先生です。生徒のことをちゃんと考えてくれています」


一川がそう思ってくれていると知り、嬉しい気持ちになった。


まさかそんなこと思っているとは思わなかった。


「うふふ。やっぱり大ちゃんは良い先生よね。この辺でも大ちゃんはとても人気なのよ」


「そうなんですか。探偵なんですよね」


「そうね。でも探偵なんてかっこいい言葉でいってるけど、やってくれていることは本当に何でも屋みたいなことよ。それを嫌な顔せずしてくれるの。本当に良い先生よ」


実際に褒められると照れてしまう。


「女将さん。そんなに褒めなくて良いですよ。そんな僕は大したことないですから。ただ困っている人を助けているだけです」


女将さんと一川は目を合わせて、笑っていた。



 そして、僕と一川はネコ探しに和泉屋を後にした。




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