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先生の秘密と不思議な砂時計  作者: 佐藤先生
8/14

7 変化




「先生おはようございます」


と一川が朝のホームルームの後に教卓まで来て言った。


昨日は浮気調査で一川の砂時計を探す時間がほとんどなかった。


「おはよう」と僕も返した。


「昨日は大事な調査なのに、ついていってしまってすいませんでした」


「いやいいんだよ。吉野が無理矢理連れてきたところもあるし」


「先生。今日は砂時計の調査はしますか」


「するつもりだよ。今日は協力者のところへ行こうと思ってる」


「協力者ですか。どんな方なんでしょう」


「鼻が効く、優秀な協力者だよ」


「鼻が効くって犬ですか」


「犬じゃないよ」


前よりも一川の笑顔を見れる回数が増えてきたような気がする。ニコッと笑うと可愛らしい。


「今日、私も調査について行ってもよろしいですか」


「一川も来るのか」


「行きたいです。先生にだけ探させるわけにもいきませんから」


「よし、わかった。学校終わったら教室で待ってて。一緒に協力者のところに行こう」


一川はコクンと頷き、席へ戻った。




 2時間目に僕のクラスの数学があった。


1ヶ月くらい経つとどの生徒が数学が得意なのかわかってくる。


一川はとても得意な方だった。


数学だけでなく他の教科の先生からも、一川は勉強ができるという話を何度も聞いた。


そういうところもユウカに似ていた。


 ユウカに将来何の仕事に就きたいか聞いたことがあった。


彼女は、学校の先生になりたいと言っていた。小学校か中学校の。


なぜか聞くと、寂しい思いをしている子に少しでも寄り添って、支えになりたいと言っていた。


高校生になると人は身体も性格も決まってくる。


だから、遅い。


小学生や中学生の間に救ってあげないと手遅れになってしまうと。


それを聞いた僕は、もうユウカを救うことができないと言われているように感じた。


しかし、僕は高校生でも大人でも変わることはできると思った。


ただ小学生や中学生と比べると変わるスピードが遅なるというだけだ。


ゆっくりでも変われるなら僕は諦めたくなかった。


ユウカのことも諦めなかったし、一川のことも諦めるつもりはない。


一川は必ず救う。




 授業が終わり、教室を出ると廊下で棟方校長に声をかけられた。


「工藤くん。担任頑張ってるみたいだね」


「はい。校長。楽しくやらせていただいています」


「よろしい。悩みを抱えている生徒はいなそうかい」


相変わらず校長は笑顔だ。


「高校生ですので、悩みを抱えている生徒は沢山います。相談してくれる子もいれば、抱え込んでしまっている時もあると思います」


「そうだな。しかし、私は君の体が心配だよ。学校では生徒、帰ったら町の人たちのために探偵活動だろ。何かあったら私のことも頼ってくれていいからね」


「ありがとうございます」


「教員の相談を聞くのが校長の役割でもあるからな」


僕は「はい」と言って職員室に戻った。


校長は教員時代、とても良い先生だったに違いないと思った。





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