第四十話 すれ違う想い (5) ~夕貴~
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と、いうことで、本日二話更新します♪
すっかり夜が明けて街が少しずつ動き出す頃、神山さんの好意に甘えて、私は休憩室で仮眠を取ることにした。三階のドアが並んだ一角に案内されて中に入ると、机と大きなソファーが置いてある。
「誰も使っていないから、好きなだけ休むと良いわ」
「ありがとうございます」
欠伸をしながらタオルケットを渡してくれた神山さんにお礼を言ってドアの前で別れる。どうやら彼女も仮眠を取るらしく、自宅があるという四階に向かって歩き出していった。防音壁なのか物音一つしない静かな部屋のソファーに座ると、タオルケットを隣に置く。非日常の出来事を目の当たりにしたせいか、疲れているはずなのに神経が高ぶっている気がして、眠れそうになく、ただひたすら先生と神山さんから聞いた話を思い返した。
セイは本当に母を好きだったんだろう。今なら彼女の気持ちがよく分かる。好きな人を失いたくなくてきっと必死だったに違いない。
だって、私が、今、同じ立場にいるのだから──
「!!」
そこまで考えて、ようやく自分の気持ちを自覚する。
「私、セイが、好きだ」
口にすると曖昧な『好き』ではなく、明確な感情をはっきりと認識する。だから、一緒にいたかった。だから、死んでほしくないのだ。
今更、という神山さんの言葉が重くのしかかる。確かに時間は僅かしかなくて、契約までの日にちを確認すると一週間もなかった。
だけど、諦めたくない、失いたくない──
たった一人で、誰にも言わずに消えようとするセイに、私はずっと支えられていた。知らなかったでは済まされないほどの彼女の想いにまだ感謝一つ伝えられていない。母の事も、私への援助も、マグカップのお礼も………だから、あの人を助けたい!
考えろ、考えろ──!
机に置いてあったペンとメモ帳を借りると、セイを助ける方法を思い付くままとにかく書きなぐった。何枚も何枚も書き出しては破っていく。メモ帳が無くなると、裏面を使ってひたすら書いていく。ヒントになりそうな物を見つけるためスマホの中を探す。
「………………」
目を閉じてソファーに寝転ぶと、どっと疲れが押し寄せてきた。結局、未だいくら考えても良い方法が見つからないのだ。いつもの癖でタオルケットを抱きしめて目を閉じると、顔を埋める。ほんのり香る優しい香りが、セイの香りに似ているような気がして、ますます離れがたくなる。
「セイ…………」
眠るつもりはなかったのに、いつの間にか深く深く意識は沈んでいった。
しばし、お待ち下さい。




