第二十一話 孤独な心 (14)
本日二話更新しています。
第二十話からお読み下さい。
静かな夜に包まれて夜道を歩く。ホームセンターの仕事を終えてから麗と会ってきたので随分と帰りが遅くなってしまった。アパート近くまで来ると深夜を過ぎたのに部屋にはまだ明かりがついている。
「ただいま」
「おかえり」
そっとドアを開けた先で迎え入れる声が聞こえて、部屋に入ると顔を上げた夕貴と視線があった。
「夕貴、こんな時間まで勉強してたの?」
「うん、テストも近いし、いつもこのくらいまで起きてるから」
「体調は大丈夫だった?」
「もう大丈夫」
「そっか、それなら良かった」
夕貴が無理をしていない事を安心すると、台所に置かれた食事に気がつく。
「あれ、ご飯食べてないの?」
「食べた。それは、セイの分」
「私?」
ラップをした器の中にご飯と野菜炒めが盛り付けられているのを見て思わず夕貴に訊ねる。
「もしかして、夕貴の手作り?」
「うん」
どこか視線を泳がせながら返事をする夕貴は、それでもちらちらと私の反応を伺っている。早く食べて欲しそうな彼女に微笑んで器を持つと、夕貴の邪魔にならないようにテーブルの隅に座った。
「ありがとう、夕貴。
折角だから頂くね」
色とりどりの野菜が綺麗に盛られた器から一口運ぶと、醤油ベースのシンプルな味付けが素直に美味しかった。
「美味しい」
「……」
何も言わない夕貴だったけど、俯いたままの頬は少し赤くなっている。全て平らげると、隣で小さくほっとしたのが分かった。
「ごちそうさまでした。
夕貴、料理上手だね」
「一応ずっとしてたから。
セイは全然しないんでしょう」
「まあね」
「キッチン道具が片手鍋だけの台所なんて初めて見たよ」
「ふふふ」
穏やかな雰囲気が心地よくて、この場から離れがたくなる。夕貴も同じように思っているのか、ペンを持つ手を休めて私を見ていた。
「セイの好きな料理は何?」
「ないかな」
「ないの?」
驚いたように繰り返す夕貴に言葉を付け加えた。
「私、ずっと調査員をしていてね、普通じゃない生活を送っていたから、食事はただの栄養を取る行為でしかなかったの。だから、好きな料理はなかった」
「………」
「誰かが自分の為に作ってくれた料理なんて、夕貴が初めてね」
「!?
そ、そうなんだ」
「ご飯ありがとう。お風呂に入ってくるから」
慌てて俯く夕貴に微笑むと、返事を待つことなく食器を持って立ち上がった。
「参ったな」
お湯を身体に浴びながら目を閉じると、思わず心の声が漏れた。夕貴の言葉一つ、仕草の一つが自分の心を簡単に揺さぶってくる。随分心を開いてくれたのは嬉しいが、このままずっと一緒にいて良いのだろうか。
終わりを決めた人生の終盤になってから立て続けにおきる予想外の出来事に戸惑いつつも、この状況を楽しんでいる自分がいることも確かだった。
続きは明日21時の予定でーす♪




