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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

中央線沿いの団地

作者: 水瓶と龍

じゃあ、私の地元であった話を聞いてください。ちょっとグロ系も被るんでNGな方はスルーでお願いします。


私の地元は中央線のとある駅にある。


昔から中央線の線路では人身事故が多く、踏切が“開かず”状態になってしまうのはしょっちゅうあった。私が通っていた時間帯だけでも年に数回、数十回位はそんな”開かず“状態になってしまっていた。


そんな中でも特に事故が多い、と言う踏切の側に大きな団地があった。一部では「呪われた踏切」なんて呼ばれる事も多々あり、当時は心霊スポットとしても名が知られてしまっていた。

そこは高層階の団地が数棟並んで建っていて、その踏切の魔力とでも言うか、その、高層階から飛び降り自殺してしまう人も少なからずいたし、団地内での自殺や、エレベーターで起こる怪異などの噂には事欠かない様な、そんな団地だった。


私が中学生から高校生の間では、その団地の中の一階にあるコミュニティプラザの様な所でたむろする事が多かった。図書館とか憩いの場、的な所があるような場所。


特に何するでもなく、数人で集まってははしゃいで遊んだりしていて、とにかくそこに行けば誰かしら友達がいるって言う感じの所があった。ただギャーギャー言ってれば楽しい年代だったし、そこに行けば男女の出会いもあったりして、仲間とよくそこに行ってたんだ。


それで、いつもの様に団地のコミュニティプラザ前で、先輩後輩関わらず7〜8人位で喋ってたんだよ。冬の夕方過ぎでだいぶ暗くなり始めたかな〜って時間に、いつも通りな感じでやいやいやってたわけですよ。


そうしたら、私たちが居るすぐ横の方で凄い爆発音みたいなのが聞こえて来て、皆んなで「え!?」みたいな感じでびっくりしてそっちを見たわけさ。


初めはそれが何か全然わかんなくって、ちょっと暗くなってたから、何か塊が有るのが解って、誰か大きな荷物でも落としたのかな、って感じで皆んなで見に行ったらさ、先に見に行ってた子が急に錯乱したみたいに「きゃー」って叫んで腰抜かしてその塊から逃げようとしてるの。直ぐにただ事じゃないなって思って、その子の介抱は1人の子に任せて残りの人で恐る恐るその塊に近づいて見てみたのさ。

もう、見なきゃ良かったって何度思ったか。

黒く見えてたのは血で、私は人の形をした腕を見てこの正体がわかったんだけど、まぁ、その団地から飛び降りたであろう、人だったものだったのよ。

それを皆んなが順番に確認して恐怖が一斉に広がるまでは直ぐだったな。

私は頭パニック状態で狼狽える事しか出来なかったんだけど、先輩の1人が後輩にすぐ119番通報する様に指示出してたり、また興味本位でもっと観察しようとする人がいたり、皆んなきゃーきゃー言っててパニック状態だったんだ。

それで、観察してた1人が

「あれ、これってA子じゃない?」

って言うの。

私は「何で今A子が出てくるんだよ」ってパニック要素が一つ追加されててさ。

それでそう言ったそいつが、「ほら、腕見てみろよ」って言ったから恐る恐る皆んな見てみたら、確かにいつもA子がしていたシルバーの細いブレスレットしてあるの。A子はいつもそれを4〜5本同じ腕に付けてじゃらじゃらさせてたから、皆んなもそれ見て、はぁ!?って感じで、もう思春期の脳味噌では理解できない事だらけになっちゃって、いつも頼り甲斐のあったヤンキーな先輩は逃げちゃうし、何時もは無口な後輩が通りの車を道路に飛び出して止めて助けを求めてたり、そのA子にしがみついて泣いてる同級生がいたり、とにかくパニック。気がついたら救急車がいて、私達は警察署へ行って事情を聞かれたり。とにかく頭の処理能力を超えた出来事が瞬時に起こってしまって、なんだか現実感無くてその日はそれぞれ帰宅したんだけど、次の日学校に行ったら朝に緊急の全校集会があって、校長が重苦しい様子でA子が亡くなってしまった事が告げられたのね。それで私たちは友達を急に亡くしちゃった悲しみが溢れて来て、とにかく一日中泣いてた。カウンセラーみたいな人が来て話を聞いてもらったり、A子の葬儀に出席したりで、こんな悲しい事は無い、って位悲しかった。


それで、何とかそのショックを受け止められるかどうかって時に、A子が亡くなった月命日になったのね。

その日は学校休みだったから、昼間に皆んなで集まって花を置いたり、当時A子が好きだった歌手のCDを置いたりして、皆んなで手を合わせてA子の冥福を祈ったのね。


それで、近くにある同級生の家にそのまま皆んなで行ってさ、何となく皆んな1人にはなれなかったからね、それで思い出話しでもしてA子を弔ってやろうよ、って感じになって、まだA子がいた時みたいに皆んなで喋ってたんだ。

それで、その子の家にあった、当時流行ってよく撮っていた「チェキ」ってプロマイド写真が出てきて、まだそんな昔でも無いのになんか皆んなで懐かしんで、これはいつ撮った、とか、これはお祭りの時だ、とか話していたの。

そしてね、1人がめくった写真を何となく皆んなで見たのよ。本当に皆んな同時に注目してさ。

で、それは、何時ものたまり場、つまりA子が落ちて来ちゃった辺りで撮ったもので、7人くらいが真ん中にぎゅうぎゅうに集まって撮った写真だったのよ。

それで、私たちはそれを見て時が止まったみたいに固まったのさ。

真ん中に先輩がいて周りに皆んながいて、先輩の隣にA子も居る写真だったんだけど、全員がA子の隣にいる先輩を無表情で見つめてるの。目を大きく見開いて。A子も。

私もその写真に写ってたんだけど、私も先輩の方を凝視してて、そんな風に撮った記憶ないし、皆んな固まってたから皆んなも同じ事を思ってたんだと思う。


しばらくそうしてたらさ、同級生が写真を裏返しにしてポツポツ話し始めたのね。


A子が先輩と皆んなに内緒で付き合ってた事。先輩の浮気に悩んでいた事、生理が来なくてもしかしたら子供が出来ちゃってるかも知れないって事を。


確かにその先輩は、ヤンキー風でモテてたし、女の目から見てもモテるわけだなーって思うくらい整った顔立ちしてるのね。


それで、その先輩、始めに飛び降りたA子を確認したら走って逃げ出してたんだよね。この集まりにも来てなかったし、学校でもあんまり見かけないようになってたから、A子の自殺の原因は先輩だったんだなって思うんだ。多分皆んなも思ってただろうし、それでA子はまだ許して無くてこんな写真を残しちゃったのかなって。


それから、先輩は学校でもたまり場でも見かけなくなったよ。

ずっと部屋に閉じこもるようになっちゃったんだって。

何かに怯えるように。






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