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かつて世界最強と謳われた俺ですが、今では楽をして生きていきたい

 世界最強の剣士であり魔法使い、ギルア=リック。魔王を倒し、世界を救った英雄。


 なんて言われたのは昔の話。


「はーぁ、誰か人来ねーかな~」


 今、俺は不動産屋を営んでいた。


「話し相手が欲しい……。けど仕事はしたくない……。なんというジレンマ……!」


 一人で葛藤していると、チリンチリン、とドアのベルを鳴らして少女が入ってきた。


「あーいらっしゃ……ってなんだ、アンナか。良いところに来た」


 彼女の名前はアンナ。うちでバイトをやっていて、たまに仕事を見付けてきたりする。


「こらっ、またそーやってグダグダしてるの?たまには真面目に働きなさい」

「えー、やだ。だって働きたくないもん」

「じゃあなんで不動産屋なんてやってるのよ」

「んー、楽だから?」

「一生そこでグダグダしてれば?」


 呆れた目で見られていた。心外だ。


「なんでもいいけど話し相手になってくれ」

「え、話し相手?別にいいけど……何を話すの?」

「明日の天気のことかな」

「びっくりするくらいどーでもいいわねそれ」

「えー、いいじゃん明日の天気。大事だよ?明日の天気で俺のお腹の調子が変わる可能性がある」

「とれだけデリケートな体なのよ……」


 因みに雨の日は腹を壊しやすい。これ豆知識。


「もー、かつての英雄様がこれじゃあ示しつかないわよ?」

「いいんだよ、その英雄様は今は行方不明ってことになってるんだから。あ、ハエだ(パンッ)」

「もー、ハエなんてどうでもいいでしょ?それより景気はどう?」

「あー、いつもどうりだよ」


 ハエを潰した手を拭きながら言う。

 因みにいつもうちの店には人がいない。ずっと俺がぼーっとしているだけだった。


「ならいつも道りじゃなくしてあげるわ」

「げ。まさか」

「そのまさか。仕事よ」

「マジかよ……で、内容は?」

「メロウ地方の丘の教会ね。かなり土地も広いし内装も綺麗ね。あと崖に建ってるからかなり見張らしもいいみたい」


 なるほどなるほど。今回はそこにいい物件を見付けてきたようだ。


「ふむふむ。それで、魔物の種類は?」

「んー、見たところ数は不明だけど、ゴースト系統が多そうね。協会だからかしら?」

「まあそうなのかもな。じゃあちょっくら行ってくるわ」

「え?手ぶらで大丈夫なの?」

「あー、だいじょぶだいじょぶ。んじゃ行ってきまーす」


 ★


「さて、ここか」


 教会についた。この教会では以前から幽霊騒ぎが相次ぎ、誰も使わなくなったそうだ。


「お邪魔しまーすっと」


 何故かドアが開かなかったので蹴り破る。中は薄暗く、何かおどろおどろしい雰囲気に見舞われていた。


「うむ。いかにもって感じだな」


 カタカタカタ……


「ん?」


 見ると、祭壇に置いてあった聖書やキャンドル等が一人でに浮かび上がった。


「あー、普通のゴーストかな。ほいっと」


 ぶんっ


 ただ、手を振る。まるで蚊が鬱陶しいから振り払った、そんな感じの動き。


 だが、たったそれだけで浮いていた物はゴトゴト、と地面に落ちた。


「んー。雑魚じゃ面白くないな。おい、出てこいよそこのやつ」

『我の結界を破り、更には我の存在に気付くとは……キサマ……何者だ……』


 すると、十字架の裏から何かが出てきた。それは真っ黒で、まるで影からそのまま実態になったような、口では形容しがたい『何か』だった。


「おいおい、人に物を聞くにはまず自分からだろう?」

『……気に食わん人間だ。まあいいだろう、我の名は深淵のより出でし者、ジューダス。かつて魔王様の右腕として人間を殺戮し尽くした者なり!!』

「へぇー」


 あいつ右腕とかいたんだな。知らなかったわ。


「俺の名前はリック。不動産を営んでいる。よろしくな」

『リックだと……?まさか、キサマ……、魔王様を殺したあの人間の英雄、リックか!!そんなやつがこんな辺境に、何をしに来た!!』

「何って……物件ゲット?」

『物件ゲット……だと……?そんなことのために我の根城に立ち入ったこと、後悔させてくれるわ!!』

「そっか。邪魔してすまなかったな」


 一応謝っておく。わざとじゃないにしろ、知らない人が家に上がり込んだら嫌だからな。かくいう俺もそういうデリカシーのないやつは嫌いだ。


『〇▼-+$''&@゛・。…………』

「まあここはお前の家じゃないけどな」


 何やら呪文を唱えているようだったが、構わず腕を一振りする。


 それだけでジューダスとやらは消え去っていた。


「よし、物件ゲット!あとは壊したドアを修理したら完璧だな!」


 誰も住めなくなった物件を探す。原因を排除する。貰う。

 こうやって俺の店は経営しているのだった。

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