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Sharp  作者: 殺人パンダ
3/4

3話〜異常への扉〜



「開けるぞ」


「勝手にどうぞ」


 強固で巨大な扉を前にしてもカンナは特に緊張した様子も無く、悪態をつく。それに引き換えバルデスはさっきまでの落ち着いた雰囲気が薄れ、どこか緊張している。

「1つ言い忘れていた」


「何か?」


「扉の向こうは君の想像してるのとは遥かに違うので、その…あれだ……あまりビックリしないで欲しい」


 特に何も想像していないのだが。


「構わない。開けるならさっさと開けてくれ」


「分かった」


 バルデスは唾を呑むと一気にドアを開く。

 目の前に広がった光景にカンナは息を呑む。


「…………」


「カンナ…そのだな、支部長は好きなんだ」


「にゃ〜」


「―――猫が」


 トラ猫が一匹カンナの足にすり寄る。

 部屋を見渡す限り、猫、猫、猫、猫。まさに猫屋敷ならぬ、猫部屋だった。

 猫さえ居なければ、至って普通の部屋なのだが、床に転がっているボールやら何やらのせいで全て台無しである。


「あらバルデス大佐。お帰りなさい」


 屈んで猫じゃらしを降っている茶色の長い髪の女が微笑みながら言う。


「只今帰還いたしました……ってまた増えてませんか?」


 バルデスは軽く敬礼すると目の前の惨状に呆れたぎみに言う。


「また拾っちゃった。テへ」


「テへって……少しは歳を……」


「あなたがカンナ・イスズ君ね」


 バルデスの言葉を無視して女はカンナに視線を移す。

 カンナは無言のまま女を見る。すると女は立ち上がって体をコチラに向ける。


「魔術協会東中央支部、支部長をしているレイナ・ステージアです。よろしくね」


 コイツがここの親玉……。


 蔓延の笑みで言うレイナにカンナは鋭い視線を向ける。


「なぁアンタ」


「何ですか?」


「笑うんならもっと上手く笑うんだな」


「あら、私の笑顔って不細工ですか? レイナなショック!」


「瞳が笑ってねぇんだよ」


 カンナの一言で一気に空気が張り詰める。隣に居るバルデスからも緊張の色が伺える。


「オレをわざわざこんな所に呼んで何考えてやがる」


「大佐から聞いてませんか?」


 相変わらず薄っぺらい笑みを浮かべながらレイナが言う。


「今回の事件。確かに犯人は異常なうえに特異だ。だが、あの資料を見る限りどう考えてもオレは必要無い。天下の魔術協会の、それも中央支部ときたら戦力は充分の筈だ」

 レイナはそれを聞くと威厳ある机に向かう。椅子を引いて座ると机に腕を置く。


「今回の事件。始まったのは五年程前。

 最初は1人。首に蚊に刺されたような後を2つ持つ貧血の患者がこの近くの街で出た。一年後は2人、二年後は3人と徐々に不信な貧血の患者は増えていったわ」


 カンナは質問に答えて貰っていない事を不満に思いつつ話を聞く。


「患者には共通してさっき言った首の傷があったわ。そして去年の暮れ、遂に死者が出た。死因は出血によるショック死。でも現場からは血液は1ミリも発見されなかった。なのに死体からは体の半分異常の血液が無くなっていた。鑑識が傷口を調べた結果、微弱な魔力が検出されたわ」


「まさか……『異常へのヴァンパイア・ロード』……」


 カンナが呟くとレイナは小さく頷く。


 魔武器、ヴァンパイア・ロード。

 何十年も前に魔術協会に所属するとある武器職人が考案した武器で、体に核を埋め込む事により使用者の身体能力、魔力の絶対値の強化に加えてさらに犬歯が強化されて吸血が可能になるという物だ。

 しかし、この武器には大きな欠陥があった。使用者が血を欲するあまり凶暴化するのである。

 当初の目的では強力かつ、従順な軍隊を作るために制作されたコレは上記の問題と人が人の血を食らうという余りに非人道的な事により制作は中止、破棄された。


「全部破棄した筈だろ」


「表向きはね。実際はいくつか裏ルートで流れたみたい」


「それがバレたら協会にとってかなりマズい。それでオレにソイツを捕まえろと?」


「コチラも努力したけど既に小隊が三個、ターゲットに潰されているわ」


「ふざけんなっ!!」


 カンナの怒声が響く。


「人質とられて連れて来られてみりゃ、協会の不祥事の尻拭い? なめんのも大概にしとけよ」


 右腕を銀が覆う。


「今すぐテメェ殺して、この支部潰してもいいんだぞ」


 カンナが踏み出すとバルデスが立ちふさがる。


「まてカンナ! 話を最後まで聞け!」


「話なら全部聞いた! テメェも何処かねぇと八つ裂きにすんぞ!」


「ユウナ・イグナイト」


「!!」


 カンナの体が硬直する。


「聞き覚えあるでしょ?」


「何でその名を知っている……」


「教えてあげましょうか」


 レイナが微笑みながら言う。

また機会があったらお会いしましょう

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