国内ヤクザ紛争、始まり
キャラクター紹介
鷹志 巻き込まれる形で殺し屋となった高校生、あまりの絶望に一時期心を失う。
TAKASHI 今世紀最強と呼ばれる殺し屋、ベトナムでの経験と軍叩き上げのスキルでスコアを稼ぐ。
綾乃 國虎邸で奴隷のような扱いを受けていた、TAKASHIによる國虎暗殺で自由を手に入れた。
ライジェフ 元ソ連軍のマフィア幹部、軍権を剥奪された過去を持つが赤軍の志を忘れたことはない。
ソブロフ ソ連軍時代からライジェフのそばに付き添い作戦の補助などを行う。
謎の女子高生 レストランのトイレで意識を失っていた、名前から生まれまで全てが謎。
鷹志がレイアと死闘を繰り広げた翌日、鷹志は傷の手当てをしてもらっていた。
傷は相当深く鷹志の身体は包帯でぐるぐる巻きになりミイラのようになっていた。
綾乃「どうして逃げなかったの…よ!」
パチン!!
鷹志の背中を綾乃が叩くといつも以上に綺麗な音が響いた。
鷹志「いでぇぇぇぇ!!何すんだよ、仮にも怪我にんだぞ俺。」
綾乃「鷹志はもう頭に永遠に治らない傷を負ったのかもね。」
鷹志「え、冗談だよな?」
綾乃「さあね。」
2人が皮肉合戦をしているとついていたテレビから緊急速報が流れてきた。
ニュースキャスター『緊急速報です、先程入った情報です。指定暴力団東尋会の事務所と思われる施設が連続して何者かに襲撃を受けた模様です。襲撃されたのは以下の地域の事務所です。』
テレビ画面には大きく襲撃された場所の住所が記されていた。
鷹志「始めたか…」
ニュースキャスター『現在表示されてる地区の方々は外出を抑え身の安全の確保を最優先としてください。』
ライジェフが話そうとしていたこと、それはライジェフたちグロズニィが日本に派遣されて来た理由だった。
東尋会はグロズニィと敵対するほどの大組織でライジェフたちはそれを壊滅させるために派遣されて来たのだ。
敵対していた理由は麻薬などの密輸地域が被さったこと、武器の密輸がうまく回らないこと、金塊の密輸など様々だ。
しかし先に手を打ったのはグロズニィでさらには初手で東尋会を壊滅寸前にまで追いやったわけだ。
鷹志「こうなったらできることはないな、飯食いに行こうよ。」
綾乃「家から出ないでって言ってたでしょ!!」
鷹志「だぁいじょうぶだって、この辺に東尋会の事務所や下請の興行は無いんだ。」
綾乃「うぅ〜、分かったわよ、行きましょ。」
鷹志「そう来なくちゃ。」
鷹志たちはそう言うと喜ぶように財布を握りしめて家を出て行った。
ライジェフ「ボス、敵対勢力の施設を爆破しました。」
とあるホテルのスウィートルームでライジェフは電話の受話器を握っていた。
???「どの辺りまで爆破したんだ。」
受話器の向こうからは低い声が聞こえてくる。
ライジェフ「俗に言う風俗から金融事務所、銀座の裏カジノまで破壊したと部下からは報告が入っております。」
???「マィオール(少佐)上出来ではないか。で?敵の残党は?」
ライジェフ「現在、総力をもってして掃討中です。」
???「よろしい、東尋会会長の首を忘れずにな。」
ライジェフ「ヤー」
ガチャンと言う音と共にライジェフは受話器を置いた。
ため息をついたあとライジェフはソファに座り込んだ。
ソブロフ「少佐、少しお疲れでは?」
部屋のドアの前に立っていたソブロフがライジェフにそっと近づく。
ライジェフ「疲れといっても前線で戦う彼らよりは疲れちゃいない。ここで休めば本作戦の司令官としての名が廃る。」
ソブロフ「流石です、そこまでのカリスマ性がありながら軍権を剥奪されたことが惜しまれます。」
ライジェフ「私はこの隊を任せられたから当然のことをしているまでだ。」
2人の間にはこれまでのおちゃらけた雰囲気はなかった。
ギスギスもしたいないが柔らかくもない、それはもう上官と部下の関係のそれだった。
ライジェフ「ボスは皆殺しを所望だ、どう思う?」
ソブロフ「軍人としてはやむを得ませんな、上官のご命令は絶対です、しかし抵抗しない人を殺すのはいつまでたっても慣れませんな。」
ライジェフ「それでいい、無抵抗の人間を殺すことになれれば我々の『より人間らしく』はなし得ないからな。」
ソブロフ「酷ですな。」
ライジェフ「ああ、しかしその酷をさせるのが司令官でそれをするのが前線の兵士たちだ。軍権を剥奪される前までは作戦のミスは兵士の落ち度だったが、今では作戦を立案した司令官の落ち度になる。これはこれで正しいのかもな。」
ソブロフ「…沖縄専属隊より入電があります。『残党が逃れた施設を発見、突入の要を求む』以上です。」
ライジェフ「ふぅ、ライジェフから沖縄専属隊へ打電、『即刻残党を掃討されたし』以上だ。」
ソブロフ「ヤー!!」
某ファミレス店〜
鷹志たちは昨日のレストランとは違う別のレストランに来ていた。
もちろん安全である。
鷹志「俺はチーズハンバーグで。」
綾乃「私は…ミニオムライスで。」
2人は悠長に注文していた。
鷹志「ミニってなんだよ。」
綾乃「女の子は普通は小食なのよ!」
いつものように喧嘩する2人だったがやがて鷹志の腹はいきなり下り気味になってきた。
鷹志「ちょっ、トイレ行ってくる。」
綾乃「ご飯頼んでるのになんでトイレ行くのよ!!」
鷹志「お前の晩飯が当たったんだよ。」
綾乃「こらー!!」
鷹志は面白半分にトイレに駆け込んだ。
トイレの前の席には1人分ほどの料理が置かれていたが人はいなかった。
しかし鷹志はそんなことを気にとめることはなかった。
ファミレスのトイレは男女共通で学校のトイレのように個室に分かれている。
ずいぶん古いように見えるが案外中は綺麗だった。
鷹志は早く用だけ済ませて戻ろうとしていたが手を洗っているときに気がついた。
そのトイレの中は異臭に包まれていた。
排泄物とは違い生臭い。
その臭いに他人は気がついていないのか何事もないかのように用をすませていく。
鷹志「まさかこの臭い!」
鷹志は1つだけ閉まりっぱなしだった個室のドアを蹴破った。
傷口が広がり、足の傷から出血する。
鷹志「!?」
個室の中には学生服を着た鷹志と同じくらいの歳の女性が座り込んでいた。
意識は無いようでぐったりしている。
脹脛まで上げた靴下には赤い液体のようなものが付着しているようだった。
鷹志が女性の上着を脱がせると下に着ているシャツには赤い液体が大量についていた。
鷹志にしかわからなかった臭い、それはこの赤い液体だった。
生臭い香りの正体は『血』だった。
それも大量の血だ。
鷹志は急いで店員に知らせた。
すぐに救急車が来て応急処置が施された。
その時の状況を聞くために警官が鷹志に話しかけるが鷹志の表情に気がついたのか話しかけるのを戸惑っている。
血まみれの人間が倒れているのに気にも留めない、真顔の鷹志、慣れているから仕方がない、しかしそれを初めて見る警官からは異様な高校生にしか見えなかった。
鷹志「帰るか、結局飯もろくに食えなかったしな。」
綾乃「あの人が心配じゃないの?」
鷹志「心配だからってできることなんてないだろ?今から集中治療室にとび入るよりも祈ってやる方が彼女も治りやすいってもんさ。」
そそくさと帰る2人。
その背中に警官たちは興味も向けなかった。




