殺し屋とビジネスマン
念願のロシア人を出すことができました。
キャラクター紹介
畝傍鷹志、成り行きで殺し屋になることを選んだ高校生、一度失った人間らしい心を取り戻しつつある。
TAKASHI、かつてベトナム戦争で最強と言われた元傭兵、枝吉に裏切られた過去を持つ。
東城綾乃、國虎に全てを蹂躙された悲劇のヒロイン、最近明るくなって来た。
枝吉唐ノ助、TAKASHIと共にベトナムで戦った英雄、TAKASHIを裏切った過去を持つ。
伊勢日向、主者の命令により鷹志の命を狙うが返り討ちにされた、今ではいいお友達。
ライジェフ・ガルベスカ、ロシアンマフィアのグロズニィの大幹部。主者をよく思わないという理由だけで主者を裏切った元ソ連兵。
ソブロフ伍長、ライジェフの側近のような存在。敵味方関係なく敬意を示す紳士的な行動をする。いいやつ。
鷹志「なに!?綾乃が拉致られた!?」
日向『すまない、俺がちゃんと見ていれば。』
鷹志「詫びはいい、それよりも奴らが向かったのはどこだ!!」
日向『18キロ先の廃工場だ、おそらく奴は1人じゃ無い、廃工場には他にもいるはずだ。』
鷹志「今すぐ帰る、日向はサツが捜査に来たら適当にごまかしといてくれ。」
日向『任せろ。』
廃工場〜
綾乃は廃工場のど真ん中で椅子に座らされて縄で拘束されていた。
綾乃「あんた一体誰なのよ。」
???「紹介が遅れたね、私はライジェフ、ライジェフ・ガルベスカと言うケチな商売をしているものだ。」
綾乃「ケチ?ケチってなによ。」
ライジェフ「う〜ん、麻薬や銃火器の密輸とか、まっ言ってしまえば大人の商売ってやつさ。」
ライジェフ・ガルベスカはロシアンマフィアの一つ、グロズニィの大幹部だ。
主な商売は麻薬や銃火器の密輸、さらには廃棄される予定の軍艦を譲り受けて発展途上国に売り渡したりもしている。
組織の中でも冷静で常に作戦を考える。
14歳の頃にソ連の予備兵として活動していた。
ソ連が崩壊するまでの間、絶対的忠義のもと、アフガンなどに出撃しては多大なる参加を残していた。
空挺師団出身で隠密作戦や強襲に長けた人材だ。
綾乃「あんたたちが何故私を囮にして鷹志を捕まえようとしてるの!!」
ライジェフ「我々も雇われてるんだよ、どんな手を使ってでも鷹志を始末しろってね。」
綾乃「誰かに命令されたってこと?まさか…」
ライジェフ「それ以上は言わない方がいい、我々は彼らの情報を詳しく知るものも始末しなければならないんだ。」
綾乃はそう言われて黙り込むがライジェフたちを雇ったのが何者なのかおおよそわかっていた。
鷹志と日向の会話に出て来た単語、『主者』たちに違いないと。
綾乃はとっさに逃げる方法、あるいは鷹志や日向、TAKASHIに居場所を正確に伝える方法を考えた。
廃工場のグロズニィの見張りは約10人、綾乃を監視しているのはライジェフと作家の宅配人を含める5人、15〜20人の見張りがいる。
綾乃「く、なんとかしないと。」
ライジェフ「逃げようなんて考えるなよ?」
綾乃の考えはライジェフにすでにバレていた。
ライジェフ「そういえばあんた、國虎邸にいたやつだろ?國虎の旦那から聞いたよ。」
どうやらライジェフには國虎との面識があるようだ。
ライジェフ「借金返せない親父のために懸命に働いてたんだよな、でも心も病んだはずだがここまで回復していたとはな。少し鷹志に興味が湧いて来た。」
綾乃「あの豚と面識があるの?」
ライジェフ「俺の事務所から武器を買ってくれるお得意様さ、彼は自国をも転覆させるほどの兵力を有していたと言うのにあっけなく死んだようだね。」
ライジェフはやけに詳しかった。
それも國虎のことだけでなく他の人間のこともだ。
ライジェフ「TAKASHIはベトナム戦争で最強の傭兵だったんだよね。畝傍鷹志は盤上亜里沙に両親を殺されたことをきっかけにこちらの世界に迷い込んだ、復讐が完了してからは人としての心がなくなりかけたが東城綾乃との出会いで回復。それと関係を持つのが伊勢日向、彼もまた利用されていただけの道具だ。鷹志に復讐したがっていたのは虎之助、兄さんを鷹志に殺されたことを根に持って復讐を計画するが予想以上の成長を遂げた鷹志の前に完敗、ニュースでは死亡扱いだが本当はどうなったか誰も知らない。」
綾乃「な、なんでそんな昨日のことまで知ってるの。」
ライジェフ「ロシアンマフィアを舐めないでもらおう、そうだよな伍長。」
宅配人「はっ!そのとうりでありますライジェフ少佐。」
返事をしたのはさっきの宅配人だった。
彼もソ連出身の元軍人のようだ。
ライジェフ「紹介しておこう、ソブロフ伍長だ。」
ソブロフ「さっきのことを詫びたい、いくら作戦とはいえ手荒すぎた。」
ソブロフは綾乃に紳士のように振る舞う。
ライジェフ「さぁて、談笑は終わりにしよう同志諸君、お客が来たようだ。」
綾乃「え?」
綾乃は鷹志が来たと思いあたりを見回す、しかしグロズニィのメンバー以外には誰もいない。
ライジェフ「素直に出てきなよ。」
ライジェフはコートのポケットからピストルを出して廃工場の天井に向けて撃った。
バキュンバキュン!!!
少し高い銃声がなる。
???「トカレフTTか、随分とマニアックなものを使ってるな。」
影から出て来たのは鷹志だった。
ソブロフ「そんな馬鹿な、早すぎる。」
鷹志「悪いが俺も殺し屋してるんでね、こう言うての対処法は勉強済みだ。」
グロズニィのメンバーが持っていたAK74を鷹志の方に向ける。
ソブロフ「ライジェフ少佐、発砲許可を!!」
ライジェフ「同志伍長、発砲は認めない。」
ライジェフはみんなの武装を一時解除するように命令してから鷹志に歩み寄った。
ライジェフ「ほうほう、成る程、確かに月日をかけずに殺し屋としての才能を開花させただけある。」
鷹志「何見てるんだよズベ公。」
鷹志は綾乃をさらわれたことに腹を立てていた。
ライジェフ「そう腹をたてるなよ、まるで発情期の雌犬みたいだ。」
鷹志「そうかよ、でも何かをブチ込まれるのは俺じゃねえ、手前だよ。」
ライジェフ「いい冗談だ、さて、本題に入ろう。」
ライジェフは淡々と話を始めた。
ライジェフ「我々は君をある組織からからしてくれと命じられたんだよ。」
鷹志「『主者』だな?」
ライジェフ「ご名答、だが我々は殺し屋じゃない、あくまでもビジネスマンのつもりだ。我々は彼らに腹を立てている、奴らは我々を一つのこまと勘違いしているからだ。」
鷹志「何が言いたいんだ。」
ライジェフ「君の連れを見ていると気が変わったんだよ、國虎に人間以下の扱いをされて折れていた心が君と共に生活するうちに回復していったようだからね。」
鷹志「?」
ライジェフ「ようは君を殺す予定だったのを変更するんだよ。君には生きてもらう、それに奴らはあまり好きじゃないんだよ。」
鷹志「なんで?」
ライジェフ「奴らのやり方は見ていて腹がたつ。あいつらも我々に仕事を依頼したのが運の尽きだな、殺し屋からして名声と信頼は絶対なのだろうが、我々は殺し屋じゃあない。我々はビジネスマンだ。ビジネスマンからすれば殺し屋としての名声や信頼はクソの役にも立たないからね。」
鷹志「つまりは俺に対する敵意はないってことか?」
ライジェフ「そういうことだ。それと俺の事務所をこの近辺に移すことにするよ。」
鷹志「なんでだよ。」
ライジェフ「少しでも力のある知り合いの近くにいれば互いに暴走は防げるだろうからね。本国にまだ100人近く残ってるんだよ。1ヶ月以内にこっちに全員つくようにするよ。」
鷹志「お前、奴らを裏切るのか?」
ライジェフ「我々のような法に反することを生業とする人間は基本クズだ、その中で我々はせめて他人に敬意を示し、人間としての思想を持つ、それが我々の考えだからな。」
どうやらライジェフは雇われたにもかかわらずその雇い主の主者を裏切るようだ。
鷹志はなんとも言えない人物が街に増えたことを少しだけ危惧していた。




