お見通し
鷹志は雨の中で不良達に襲われていた同い年くらいの女の子を助けて家に連れて帰った。
「ここに寝かせとけば大丈夫だろう。」
鷹志はその女の子を自分の部屋のベッドに寝かせて自分はリビングのテレビで深夜番組を見ていた。
鷹志は何でもかんでも面倒臭がるため、女性とのコミュニケーション能力が極端に低い(コミュ障)。
鷹志は女性と話したくないがために今日も連れ帰ってきた女の子を自分の部屋でできるだけ顔を合わせずに治療する。
「はぁ、あのドグサレ不良どものせいでこうなったんだ。」
鷹志はブツブツ言いながらもたまに自分の部屋にいって女の子の容態を見る。
次の日は学校休みで鷹志は部活もしてないので暇で仕方ない、というより高校に行かなくてもよくなった。
しかし今回は例の件で忙しくなる。
寝首を刈られないために鷹志は今夜は寝ないと決めていた。
「まさか、死んでんじゃねえのか?」
鷹志はあまりにも動かない女の子を見てそう思い、心臓が動いているか再三確認した。
胸に少し手を当てて生きていることを確認した瞬間…
女の子「なに…してるの?」
「うわぁぁ!!」
鷹志はいきなり声をかけられてビックリするほどの声をあげた。
「し、ししし、下心があったわけじゃない!!こここ、これは生きてるか確かめるための…」
女の子「変態!!」
ベチンっ!!
女の子のビンタが鷹志を襲った。
それもヤバイほど強烈なやつだ。
鷹志はそれを喰らってその場に倒れた。
「おれ、違うのに…」
鷹志はその後ちゃんとした説明をして、やっと女の子は理解した。
「〜というわけだ。」
女の子「…そうだったんですね、私、助けてくれた人に暴力振るうなんて…」
「気にしてないよ、お…俺も生きてるか確認するだけなら手首の脈を見る方法だってあったのに先走っちまって…」
お互いの緊張はほぐれた。
「俺は畝傍鷹志、一身上の都合で高校にはいってないが年齢は高校生と同じくらいだ。(本当の年齢を教えたらそこからつけ込まれるかもしれない。)」
女の子「私は東城綾乃よ。綾乃って呼んでね。」
鷹志は初めてこんなに長時間女性と喋ったものだから少し緊張している。
「ところで、あんな夜中になにしてたんだ?この辺はガラの悪いのがわんさか湧いてくるのに。」
綾乃「私はもともと國虎邸で生活していました。」
(ん?國虎邸?たしか…)
綾乃「私の両親は國虎から多額の借金を抱えていてその借金を返済し終わるまで私は國虎邸で生活する予定でした。」
(國虎邸って〜…)
綾乃「しかし両親は他界、私は國虎が死ぬまで暴力を振るわれるような生活を強いられることになりました。」
「DVって感じのやつだな。」
綾乃「しかし今夜、とある襲撃を受けました。」
(その襲撃って、まさか…)
綾乃「國虎やそのボディガード達は今日の侵入者をTAKASHIと呼んでいました。」
鷹志はついつい『TAKASHIかーい』と叫びそうになった。
「へ、へぇそうなんだ…それは災難だったね。少しお茶入れてくるよ。」
鷹志はその場から離れようとした。
(言えない、TAKASHIから殺しを教わったなんて言えない…)
鷹志は部屋を出てから深呼吸してまた考えた。
(TAKASHIの襲撃で家を失ったってことは…自然に俺の家に住むことになる。ヤバイ!!俺が殺し屋だとすぐバレる。)
鷹志は焦りつつお茶を入れてきて綾乃に差し出した。
「悪いな、安物しかないから…」
綾乃「気にしないわ?美味しければ値段なんて関係ないもの。」
「そ、そうだよな。」
鷹志は焦りを若干隠せた。
しかし次の瞬間、鷹志の心臓は止まりかけた。
綾乃「そういえば私を襲った男の人たちは?」
(ぎくっ!!ヤバい、殺しちまったぞおい!)
「あ、ああ、俺が忠告したらトンズラしやがったんだ。」
綾乃「???」
綾乃は信じていない。
真っ黒な髪にセミロングの髪の毛、その中にある綺麗な瞳は鷹志を見抜いていた。
綾乃「そう、殺したのね?」
( ゜д゜)
鷹志の表情は上の通りに硬直した。
「な、なんで…」
綾乃「硝煙の臭いがするわ。」
(くそ!!有り得ねえ!!)
鷹志の嘘はその一瞬でバレた。
人を殺したこと、それと直結して4人を相手できる力があるということを…




