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玉虫色の石
その男だったか、女だったか、老人だったか、若
者だったか、そんな人だったような影は綺麗な石
を拾った。いや、歪な石だったかもしれない。
影は石を気に入ったのでペンダントに加工しても
らった。装飾細工のお礼に銀貨を渡そうと手を出
したが、不思議そうな顔をして無視された。
影はペンダントを肌身離さず着けていた。
影は様々な土地を旅して様々な事件に巻き込まれ
たような気がしたが、夢だったかもしれない。
影は死を悟ると、孫だったと思われるその男だっ
たか、女だったか、人だったか…影に自分のペン
ダントを形見にあげた。その姿は老婆であった。