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紅帝のメガネ
その国の王は勤勉であった。机にしがみついて内
政の書類に毎日目を通した。
眠ることもなく、ただひたすらに仕事をした。
王は言う。「私は寝ている暇があるならこの国の
為に身を粉にして働きたいのだよ」と。
王の従者たちは彼に付き従う喜びに歓喜した。
痩せ細り、机から動くことも出来なくなった王は
メガネを外して休む。誰一人いない廃墟で勤勉な
王は眠りにつく。
誰もそこには居なかった。勤勉に働いた王が見た
従者も国民も仕事も書類もインクも…何もかもな
かった。メガネに映る世界は全て幻だった…。