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甘き欺瞞

作者: 風雨


 本当は、最初からすきだったのだとおもう。

 私は中学も高校もなんとなく嫌われていて、特に中学なんて少しの嫌いが少しずつ集まってすぐにいじめになっちゃったりして、高校ではもう少しかしこく立ち回っていじめられはしなかったけど女友達はいなかったし部室にしかいばしょなかったしで、大学に入って同じ学科でいろいろ教えてくれた周くんのことすぐにいいなって感じた。

 周くんのことがすきなんだって同じサークルに入ってた周くんの友達のりゅーちんに話したらいろいろ相談に乗ってくれて、周くんは基本的にラインしてても唐突に無視するし話しかけて機嫌が悪かったら返事は死ねだし面白いけどなんだか傷つくこともおおかったけど、一番きつかったのが周くんとりゅーちんとわたしの友達のミサと四人で帰ってるときに周くんに好きな子がいるっていうのをナチュラルに周くん本人の口からきいたこと。それがきつくて、パパに迎えにきてもらって、車の中でひとしきり泣いてから家に帰って残った三人でご飯をたべてるのを知ってどうにもならないくらいうらやましくなってみんなと話したくてテレビ電話して、そしたらなんだかよってぱらってるのか夜型の元気なのか変なテンションの周くんがいて

「周くんすきだよー」

っていったらむこうも

「おれもすきだよー」

っていってくれて周くんたちが解散するまでずっとすきすきいいあって最高に幸せで大学きてよかったとおもったしそのときの彼氏と別れて周くんと付き合うなんてうかれた想像もしたけど、周くんたちのご飯が終わってみんなが解散して周くんと二人通話したままになったら周くんが電話越しでとつぜん無言になってわたしもなに話したらいいかわからなくなっちゃっていきなり電話がおわってそれでまた泣いて泣いてるときにケータイの電池がきれたってウソなのかほんとなのかたぶんウソなんだろう言い訳が送られてきてでもそれで少し周くんと話せて泣きながらニヤニヤした。

 そんなことをりゅーちんにラインしてたら夜が更けて朝になってたりして、けっきょく昼は周くん夜はりょーちんみたいなサイクルができてて、そのことでミサには嫌われたりしたけど、もう女の子に嫌われるのは慣れっこだったので大して気にもしないでりょーちんと周くんに

「ミサがまた小言いってきたー」

なんて愚痴って笑ってバカにしてた。だってミサだってミサの友達のリンちゃんに私のこと愚痴ってたとおもうし私のこと仲間外れにしてミサとリンちゃんで仲良くしてたし、なにより二人が私のことのけものにするのってリンちゃんもミサもそれぞれりゅーちんか周くんのどっちかが気になってたんだろうなっていうのをりゅーちんと周くんが

「こんなことがあってさー」

なんていうから知ってしまってたし。

 そんなこんなで私が周くんにアプローチしてへこんでりゅーちんにそれを話してなんて流れができあがってたけど、夏を前にあまりに鉄壁で頑なでピュアに好きな人のことにしか興味がない周くんに心が折れてしまってそのとき気になっていた同じサークルの先輩がふわっと優しくして海までつれて行ってくれたものだからあっさり付き合うことになってりゅーちんにだけはそのことラインで海から連絡したらなぜだか次の日大学にいったらみんなそのことを知ってて特にミサとリンちゃんには

「ありえない!」

ってなじられた。周くんは大爆笑してた。ちょっぴり、これでよかったのかななんておもった。

 まあでも先輩は本当になんというか笑顔がかわいくてそれがみたくて頑張ってみたりしたけど束縛激しくてりゅーちんからのライン通知をみてイライラしたり周くんと同じ授業をうけて隣同士で座ってたりすると既読無視したりで彼氏としてみるならてんでダメな人だった。とおもう。周くんはそんな先輩と私の関係を最高に面白がって私のことをちやほらするようになって正直私もそれをにくからずおもっていてそれで彼氏とケンカしたりして後期はメンタルも単位もボロボロだった。リンちゃんとミサは男三人にちやほやされる形になっていた私に愛想をつかして関係が薄くなっていた。

 学年が一つ上がって、先輩は就活で、私は専門科目で忙しくなると自然消滅に近い形で恋人関係は終わった。そんなに悲しくなってない。なんておもってたけどやっぱりつらくて悲しくて学校はしばらくいかなくてりゅーちんにずっとラインしてた。周くんはなんだかんだ文句いいつつ私の出席を代返したり演習のレジュメの手伝いをしてくれてて久しぶりに大学に顔をだしたときに

「しっかりしろ」

ってぺしりと頭を叩かれた。けどそのおかげで私の成績はおもってたよりひどくはなかった。落ち込んでる私を元気づけようとりゅーちんが私の脇腹をくすぐってわらわせて、周くんが便乗して私を押さえつけて、そうかとおもえばりゅーちんが特別くすぐったがりな周くんを押し倒してくすぐって周くんをマジギレさせたりしてそれをみて私はハラハラしながらも楽しんだりしていた。

 りゅーちんのことも周くんのことも同じように大事に思ってた。

 三人で星を見に行ったとき、夜空を見上げていると、世界で三人だけのような気がした。

 でも、どっちか選べっていわれたらりゅーちんを選ぶだろうなって、星を見ながら考えた。星の悠久をみていると、どうにもこのままじゃすぐに死んでしまうような気がしてきて、周くんとバイバイしたあと帰り道りゅーちんと自転車に二人乗りしてその背中に

「付き合ってるみたい」

ってささやいた。りゅーちんは最初はなにもいわなかったけど、私の家の前で

「真剣に考えるから」

って私の目を見ていった。

 次の日大学で、いつも通り周くんが私を笑わせようと唐突に好きな子への愛を叫んだり、気持ち悪い古典のエピソードを話したり、けどりゅーちんは部室のソファーにじっと座って、私のほうをみてくれなくて、丸裸で槍でも突きつけられてるように不安になって、バイトなんて行きたくなくてもう死んでしまいたいくらいだったけど原付でアルバイト先までいって働いた。休憩時間になってケータイをみたら付き合おうなんてきてて、このために大学にきたんだなっておもった。

 心の底から幸せで、りゅーちんと周くんの仲の良さに勝てないなんて疎外感もなくなって、本当に、ただただ口の端からとろけてしまうような甘い日だった。周くんのことがちょっとだけ心配で、けどピュアで頑なで、目の前にあるスマホを

「どこいった?」

なんて探すのをみて、大丈夫かなっておもった。あとから周くんはりゅーちんに私が告白したのを知っていたのを、その二時間後には知っていたなんてゲロられて、本当に周くんも優しくて、そんな優しい二人に囲まれて、私はただただ幸せです。


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