表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/126

追跡 5

 どうやら宿に戻ってから半日以上眠ったようで目が覚めたのは日の出前だった。

 眠気も綺麗に飛んでいたので大分早いが身支度を始めると、ティア達も自分のベッドから起き出してきた。

 生活魔術で全員清浄化してから装備を身に着け食堂へ下りる。

 宿の女将には早すぎると小言を言われたが、それでも早めに朝食を出してくれた。

 食後宿を出たがミルネ教会へ行くにはまだ早すぎたので暇つぶしにギルドへ顔を出す。

 王都へ向かう予定は変わっていないが、ルディア経由はリスクが高そうなので海路を使うためにクイルへの護衛依頼を探してみた。

 幾つか目ぼしい依頼を見つけたが、すぐにミラルテを離れるわけではないので確認だけしてギルドを出た。


 大分日が昇って来ていたのでギルドから道路を挟んで斜向かいにあるミルネ教会に入り掃除をしていた修道女に声を掛ける。

 俺達が訪ねて来る事は教会内に周知されていたようですぐに応接室への案内を申し出てくれた。

 通された応接室には誰もおらず、案内をしてくれた修道女がデルス司祭を呼んでくると言って一礼して去る。

 昨日と同じように俺が座りファナ達が俺の後ろに立って暫く待っているとデルス司祭が応接室に入ってきた。

 挨拶をすると丁寧に答えてくれ、足早に俺の向かい座るとすぐに口を開いた。

「早速だが昨日の話の続きをさせて欲しい。引き渡してくれた犯人達からの聞き取りで君達の話の裏付けが取れた。犯人たちの所有権を引き渡してくれた時点で救出の報酬と併せて白金貨を1枚払わせて貰う。諸々の報酬はこれで納得してくれないだろうか?」

「それで十分です。犯人たちの所有権は誰に引き渡せばいいですか?」

 俺の返答を聞いてデルス司祭は厳しめだった表情を一瞬緩めたがすぐに引き締める。

「警備の者を予定しているがその前に君達に依頼を頼みたい、どうだろうか?」

「急ぎの用はありませんが、引き受けるかどうかは依頼内容を聞いてからにさせて下さい。」

「勿論それで構わない。では依頼の内容だが、わたしとアリア達に犯人の内、騎士の方をシェイドのある場所まで連れて行って欲しい。転移も使い出来るだけ早く目的地へ着けるようお願いしたい。」

「神聖法術の事は詳しくないのですが、アリア嬢達三人はまだ俺に従属状態ですよね。それの解除が先なんじゃないですか?」

「君の言う通りだが、このシェイド行きはその法術の解除に関係している。だから君にも同行して欲しい。」

「そういう事なら断れませんね。依頼はお引き受けしますけど、幾つか確認させて下さい。俺達はシェイドまでの詳しい道を知らないので、道案内をどうするか。ミラルテをいつ立つのか。後報酬はどうなりますか?」

「それならシェイドまでの道は私が知っているから問題ない。出発は今日中で頼む。勿論アリア達にも今準備をさせている。報酬については込み入った事情があるのでシェイドでの用件が終わってから相談させてほしい。それでも最低金貨5枚は約束しよう。」

「今日出発ですか。だったら俺達もすぐに準備を始めます。先に犯人達の所有権を引き渡しておきたいので、犯人達と引き渡す人を集めてください。」

「分かった、ついてきてくれ。」

 デルス司祭がソファーから立ち上がり、俺達も後について応接室を出た。

 ミルネ教会内にある警備員の詰所のような場所に案内され、捕らえられている犯人達と一人の警備員を紹介される。

 首領格の方の所有権を紹介された警備員に渡し、騎士の方も渡そうとするとデルス司祭に止められる。

 シェイドでの用件が済むまでは俺に所有権を持っていてほしいそうなので了解しシェイド行きの準備のためミルネ教会を後にした。


 一旦宿屋に戻り女将に遠出する事を告げてまた宿屋を出る。

 アリア嬢達の救出で消耗した矢や携帯食に保存食を補給してミルネ教会に戻ると、門の所にいた警備に中庭へ通された。

 そこにはすでにデルス司祭やルスラドの他にアリア嬢達もそろっており、アリア嬢以外の2人の修道女は貴族の子女のような格好をしている。

 彼女達の足元にはそこそこの荷物もあって取り敢えず俺達のポーチに預かった。

 デルス司祭が警備員や神官達へ自分がいない間の指示を与え終わるのを待って、目立たないよう中庭から転移での移動を始めた。


 魔眼の視界を気付かれないよう肉眼で目視出る距離を保って、デルス司祭が指定する街道上を転移していく。

 途中で昼食を取ったり2〜3度目測を誤って商隊とニアミスしてしまい相手を驚かせてしまったが、大まかに歩きで1週間程の距離をポーションでプラーナとマナを回復しながら十数回に分けて転移した。

 最後の転移を終えるとミラルテを規模で遥かに上回るシェイドだろう城塞都市が目の前に現れ、そこからは歩きで門へ近づいて行く。

 門まで続いている街への入場待ちの列には並ばず、門の警備をしている兵の責任者へデルス司祭が身分を明かすとすんなりと街の中へ通してくれた。

 そのまま人ごみの中をかき分けるようにしてデルス司祭を先頭に街の中心部へ向かって行く。

 街の真ん中にあるこの街で一番だと思える規模の御屋敷の隣にある一回り小さいがそれでも大きな御屋敷の前に着くと、二人いた門衛にデルス司祭が名乗った。

 門衛は二人とも驚きの表情を浮かべ、一人が御屋敷に駆け込むとすぐに執事のような男と連れだって戻ってくる。

 執事はデルス司祭へ一礼すると、俺達一行全員を屋敷の中の招いてくれた。

 執事の先導でエントランスから応接室へ通される。

 デルス司祭やアリア嬢達には座って休んで貰い、俺達は部屋の隅にルスラドを立たせて監視をしながら待った。

 暫くすると案内をしてくれて執事さんがデルス司祭を呼びに来て一緒に応接室を出ていく。

 ルスラドの監視はティア達に任せてデルス司祭の姿を応接室から魔眼で追っていくと、執事さんは小さめの応接室の扉を開けその中へとデルス司祭を促した。

 先に部屋の中へ魔眼を向けると以前迷宮で見かけたトガンさんがソファーに座っており、デルス司祭が向かいに座ると重苦しい声で話し始めた。

「よくここを訪ねてくれた、デルス司祭。誘拐に関する続報を直接聞きに来たのだと思うが、残念ながら今の所伝えるべき続報がない。私の不徳の致すところだ。」

「その事ですが、実はとある討伐者達が誘拐犯どもを討伐し、攫われた娘達を救出してくれたのです。加えて首謀者も生け捕りにして届けてくれ、いろいろ情報を聞き出せました。」

 デルス司祭の話にトガンさんは驚きの表情を浮かべて身を乗り出す。

「その話、詳しく聞かせてくれ。」

「勿論です。」

 そこからデルス司祭は俺もルスラドから聞き出した事をトガンさんへ話していく。

 真剣な表情で話を聞いていたトガンさんだったが、ゼス教団へ情報を流した騎士の話になると一瞬顔を歪めるがすぐに真剣な表情へ戻る。

 全てを話しデルス司祭が以上ですと締めくくるとトガンさんは間をおかず喋りだす。

「デルス司祭を疑う訳ではないが、一つ確認したい。聖女の情報を漏らした騎士がいるという話は本当なのだろうか?」

「尋問を担当した者からはそう報告を受けています。お疑いなら生け捕りにした誘拐犯達の首領を連行しているのでお調べください。」

「それは助かる。話の通りなら神聖法術を解除する魔法破壊法術の使い手が必要となるな。今夜中にこの町一番の使い手を手配するので今日はこの屋敷に泊まっていかれよ。」

「ご配慮感謝します。」

「では早速で悪いが、犯人を引き渡して貰えるだろうか?」

「勿論です。通していただいた応接室で同行者に見張らせているのでご一緒下さい。」

 トガンさんは後ろにいた執事さんへ頷き、執事さんはデルス司祭を伴ってその部屋を出た。

 俺達がいる応接室に戻ってきたデルス司祭の指示で一緒に居た執事さんにルスラドの所有権を渡す。

 アリア嬢達の従属対象も執事さんに移るかと思ったがそれはそのままだった。

 デルス司祭が約束の報酬を払ってくれ、ルスラドの身柄も引き渡すとそこからはデルス司祭やアリア嬢達と共に屋敷の人達か歓待してくる。

 夕食の後ポーチに預かっていた荷物を返し頼んで用意して貰った4人部屋でティア達と休ませて貰った。


お読み頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ