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追跡 4

 気絶させたゼス教団の騎士を完全に無力化するため、隷属制約を騎士に向けて発動すると特段の抵抗なく成功するが、


神聖法術(ゼス神)スキルを取得した

法術アーツ従属による祝福を取得した

法術アーツ従属による祝福は神聖法術(ゼス神)に格納されます


そうアナウンスが頭に響きこの騎士が奴隷になっただけではなく、アリア嬢達も俺の従属化に入った感触がする。

 恐らくこの騎士を奴隷化した事で芋づる式にアリア嬢達も従属化し、擬似的に法術とアーツを使っていると俺のアビリティが認識してスキルとアーツを取得出来たのだろう。

 ただ下手に使うといろいろ疑念を持たれかねないのでこのスキルとアーツは封印だろうな。

 一応持ち物も確認すると今回の誘拐の軍資金だと思われる白金貨を3枚持っていたので没収しておいた。

 次は盗賊の首領格を奴隷しようとグロムに声を掛けるとすぐに部屋の中に戻ってきた。

 グロムに宙づりにされている首領格は抵抗を諦めたようで体の力を抜いてただ悔しそうな表情を浮かべている。

 敗者をなぶる趣味は無いのでこちらもさっさと奴隷化を済ませ解放してやり、腕の火傷を治癒法術で応急処置しているとファナ達が部屋に踏み込んできた。

 全員所々に返り血を浴びているが怪我はしていないようで一安心すると、ティア達も御無事でよかったと表情を緩めてくれる。

 首領格の治療をティアに変わって貰い、俺は全員の汚れを生活魔術で落とした。

 火傷の応急処置が終わると首領格に先頭を歩かせ、グンには気絶している騎士を背に乗せて首領格の後ろに続いて貰いアリア嬢達の元に向かった。


 アリア嬢達の部屋の出入り口に展開していた結界は健在で、解除してから部屋に入る。

 彼女達を驚かせないよう俺が先頭で部屋に入ったが、盗賊の首領格とグンに背負われた騎士が続いたのでどうしても驚かせてしまった。

 アリア嬢はそうでもなかったが他の2人が脅えてしまったので制約法術で言動を縛っているから大丈夫と言って何とか宥めた。

 アリア嬢達と合流したのでさっさとこんな場所から移動したいが、盗賊達の死体のそのままにいておく訳にもいかないので、治療をして騎士を起こし俺と首領格の三人で遺体の始末の準備を始めた。

 リゼラ達とアリア嬢達は洞窟の外に出て貰い、出入り口付近に遺体を集めていく。

 騎士はぶつぶつと小言で文句を言いながら、首領格は悔しそうな表情をしてはいるが無言で遺体を一か所へ集めていった。

 俺も遺体を運びながら打ち漏らしがいないか洞窟内を確認していく。

 一通り洞窟内を見回ったがアリア嬢達の誘拐に専心していたようで野営道具と食料しか見つからず、手をつける気にならなかったので放っておいた。

 遺体の移動が終わると全員洞窟を出て俺が火魔術で焼き払い、もう一度生活魔術で全員を清浄化して洞窟を離れた。


 一応襲撃を警戒して見晴らしのいい街道へ転移で移動する。

 このまま転移でミラルテのミルネ教会まで戻ってもよかったが、深夜いきなり転移で現れると余計な騒ぎを起こすかもしれないので朝まで待つ事にした。

 かなり疲労していたアリア嬢達の介抱はティア達に任せ、俺は少し距離を取って首領格と騎士へ尋問を始める。

 まず首領格の方へ話を聞くと元々彼らはゼス教団の直轄地で活動していた盗賊団だったようだ。

 ゼス教団に捕縛され処刑を待つ身だった所を、教団の暗部への取り立てを報酬にこの騎士からアリア嬢達の誘拐を依頼されようで他には何も知らなかった。

 手を貸していた商人の事も訪ねてみると、ゼス教団の直轄地で盗賊をしていた頃盗品を流していた商会に手伝わせたようだ。


 騎士の方はルスラドという名前で、ゼス教団からシェイド辺境伯家への外交使節団の一員だと名乗った。

 アリア嬢を狙った理由は滞在していたシェイドの街で知り合ったバルラーン王国の騎士から聞かされある情報に端を発するらしい。

 その情報はミラルテもミルネ教会に聖女がいるというものだった。

 最初は半信半疑だったがそれでも一応使節団に随行していた教団の暗部に調べさせると、事実だと確認できてある程度の詳細情報まで分かる。

 使節団首脳部は手に入れた情報を教団上層部へ伝えようと決め、この時点でルスラドは聖女を自分に従属させ聖女の主として勇者のように教団内で伸し上ろうと思いつく。

 東ヴァルノムへ転移で戻る伝令についてゼス教団の直轄地へ帰還し、実行役となる盗賊を雇ってミラルテへと送り出し自分はダレンで待つ事にしたようだ。

 アリア嬢だけでなく他の修道女までさらったのは、暮らしている部屋までは特定できたが個人までは無理だったかららしい。

 話に勇者の事が出て来たのでそれについても質問しながらゼス教団内で俺がどういう扱いになっているか探ってみる。

 どうやらゼス教団も片桐君を担いでバルラーンへの使節団派遣を計画しているらしく、教団の直轄地から王都への最短コースにはミラルテがあり勇者である片桐君に聖女を先に従属化されないよう、ルスラドはアリア嬢達の誘拐を強行したみたいだ。

 他には恐らくプロパガンダだろう片桐君の実績を憎々しげに話したり、関連して教団を裏切ったと聞かされているのだろう千葉さんを卑下する言葉が出てくるが、俺に関するような話は一切出てこない。

 名乗ってはいないが顔を見られてもここまで特に変わった反応は無いので、教団は表立って俺の事は探していないようだ。


 大体の事は分かったので尋問を終え、朝日が昇るまでアリア嬢達とは距離を置いて二人を監視した。

 朝食として2人にも携帯食や水を分けてやり、全員の食事が終わると集まって転移による移動を始めた。

 奴隷とした2人やアリア嬢達をあまり人目にさらしたくないので、三回目の転移でミラルテのミルネ教会の中庭へ直接移動すると教会の警備だろう槍と鎧を着こんだ者達に囲まれてしまう。

 その内の一人が厳しい表情で口を開いた。

「貴様ら何者だ。何用で転移してきた。」

 誰何されたので名乗ろうとしたらアリア嬢が前に出てくれる。

「武器を納めてください。この方達は私達を救出し人目につかないよう配慮して直接ここへ転移してくれたのです。」

 アリア嬢の姿を見た警備の者達は一瞬驚きの表情を浮かべるがすぐに歓喜し2〜3人を残し別れて教会内へ知らせに走っていった。

 残った警備の者がいろいろアリア嬢に質問しているが先に俺達の用件へ対応して貰おう。

「すまないが、誘拐犯の主犯格を2名生け捕りにして連れて来たので引き渡したい。」

 アリア嬢へ話かけていた警備達が驚きを浮かべ一斉に声を掛けた俺の方を向く。

「本当か!」

「ああ、この男二人だ。俺の制約法術で言動を縛ってあるが一応自害されないよう注意してくれ。」

「分かった。注意しよう。確かに引き受けた。」

 表情を引き締めた警備達にルスラドと首領格を引き渡すと後ろから押し出すように連れて行った。

 引き渡し二人と警備達が中庭から出ていくのを見ていると、一人の修道女が神官や修道女が生活している建物から出て来てアリア嬢へ話かけてきた。

「アリア様、デルス司祭がお話しを伺いたいと仰っているのでおいで下さい。そちらの救出して頂いた皆様も御同道下さい。」

 アリア嬢は柔らかく頷いているし、下手に断って誘拐犯の一味と思われるのも不味いので大人しく同道しよう。

 こちらへと言って先導してくれる伝言役の修道女について中庭を離れた。

 以前も訪れた応接室に通されるとすでにデルス司祭が座っていて、俺とアリア嬢達がソファーに座りリゼラ達は俺の後ろに立った。

 僅かの沈黙の後深々と座り込んでいたデルス司祭は体を起こして俺達に頭を下げた。

「アリア達を助けてくれて感謝します。本当にありがとう。後日きちんと報酬を払わせて頂くが、先に今回の事件の経緯を分かっている範囲でいいから教えてくれないかな?」

「司祭様。そういう事ならわたしの方から先にお話しします。」

 俺に考える時間をくれるようにアリア嬢が先に喋り出してくれる。

 所々途切れてはいるが俺が魔眼で見たのと変わりのない救出が始まる前までの事を時系列通りにデルス司祭へ話した。

 真剣な表情で話を聞いていたデルス司祭はアリア嬢の話が終わると視線で俺に話を促して来るが、魔眼の事は話せないので先に断りを入れておこう。

 匿名の情報源から得た情報を元に動いたと匂わすのが無難だろうな。

「救出の経緯を話す前に一つ断らせて貰います。申し訳ありませんがアリア嬢達をどうやって見つけたかはお話出来ません。他の方へ伝えられない事情があるのでご了承ください。」

俺の前置きにデルス司祭は厳しい表情になるが一つ息を吐いて首を振った。

「仕方ないな。話せる範囲の事だけでいいから、話して貰えるか。」

「分かりました。誘拐犯達が根城にしていた洞窟を見つけた時点からお話しします。」

 洞窟内のアリア嬢達の位置確認は気配探知で行った事にして、後は事実をそのまま話した。

 勿論首領格とルスラドから聞き出した誘拐に関する事も全てデルス司祭に話すと、こめかみを押さえ絞り出すような声でデルス司祭は話始める。

「すまないが引き渡してくれたという犯人達から直接確認を取らせてくれ。今日中に尋問を終わらせるので明日また訪ねて来て欲しい。報酬の話はその時にしよう。」

「そういう事なら、今日はこれで失礼します。」

「すまないな。後アリア達の事、本当にありがとう。」

 デルス司祭が差し出してくれた手を取って握手を交わしアリア嬢達に挨拶をして応接室を辞した。

 ミルネ教会を出ると宿屋に引き上げ部屋に戻ると結界を展開して装備を脱ぐ。

 徹夜をしたせいで本当に疲れたので一人でベッドに倒れ込んだ。




お読み頂き有難う御座います。

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