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追跡 2

 ミラルテからダレン方向を見た魔眼による視界の端に転移すると、魔眼でアリア嬢達を移送する商隊と実行犯達の行動を視界の外に出るまで確認しまた転移する。

 その作業を数回繰り返し街中を視界に収めるダレン近郊まで来ると、まず実行犯達が行動を変えた。

 街道を外れ森の中に入るとそのまま森の奥を目指していく。

 どこへ行くか気になるがどちらへ向かったか大まかな方向の確認だけして、アリア嬢達の移送する商隊の動向を先に確認しておこう。

 アリア嬢達を移送する商隊の方へ魔眼の視界を集中すると、商隊は何事もなく街道を進み続けそのままダレンの街へ入る。

 そこで商隊は一時解散となったようでアリア嬢達を移送する馬車は、入った門に程近い一軒の宿屋へ入った。

 馬車の持ち主だろう商人はその宿屋の酒場で一人の男と落ち合い、商品を持ってきたとだけ告げると馬車の元へ戻る。

 声を掛けられた男は宿の中から10人程の男を引き連れて馬車の元へ向かった。

 馬車に積まれた箱の中で手足を縛られ猿轡を噛まされていたアリア嬢達は、拘束を解かれるが馬車を囲む男達へ引き渡されてしまう。

 男達は騒げば声を聴いた周りも殺すと彼女達を脅して宿屋を出る。

 彼女達を前後左右挟み込んで移動しミラルテ方面の門からダレンの外へ出た。


 男達と彼女達は暫く無言で街道を歩き、ダレンから見えなくなる場所まで来ると街道を外れて森の中に入る。

 進んで行く方向が誘拐の実行犯達と似通っているので、この方向にアジトのようなものありそうだ。

 そのままこの一行を魔眼で追っていくと、森に入って2〜3km程の地点にある洞窟に入っていったので過去視を止める。

 そのまま洞窟の今状況を確認するため内部へ視線を向けて捕捉眼を使ってみると、誘拐の実行犯やアリア嬢達の姿を捉えられ、他にも合わせて30人程の男達が複数の部屋に別れてたむろしている。

 アリア嬢達は牢のような部屋に押し込まれているが、見張りはいないので忍び込んで助け出せそうだし、男達は鑑定眼で実力を調べてどう対処するか決めればいいだろう。

 転移で洞窟に近づくと気づかれる可能性も出てくるから、ここからは歩きで洞窟へ近づくのが妥当だろう。

 手がかりを見つけたから行こうと三人に声を掛けて森へ足を踏み入れた。


 暫く森の中を歩いてアリア嬢達や男達が通った獣道に出たので、確認の意味でファナにアリア嬢の匂いがするか確かめて貰う。

 歩きながら暫く周囲の匂いを確かめたファナが、間違いなく1日以内にアリア嬢がここを通ったと断言してくれた。

 俺の魔眼は詳しく明かしていないので、ファナの追認がティアやリゼラの半信半疑を多少は解消してくれるだろう。

 森の中を進み洞窟が見えてくると、入口が見通せる茂みに全員身を隠した。

「俺の特殊能力で調べた限りだと、あの洞窟にアリア嬢達が盗賊だろう男達によって監禁されている筈なんだが、ファナ、匂いはどうだ?」

「アリアの匂いはあの洞窟の入り口に続いてる。間違いない。」

「ファナも確かめたならアリア嬢達があの洞窟にいるのは確定でいいな。取り敢えず夜まであの洞窟を交替で見張ろう。その間に俺が特殊能力で洞窟内を調べてアリア嬢達の救出計画を練るから、盗賊達が寝静まるのを待って仕掛けよう。誰かが出てくるようなら隠れてやり過ごすけど、もしアリア嬢達を伴っていたらこちらから奇襲をかけて救出しよう。」

 三人共頷いてくれると、ティアが自分のポーチから水筒を取り出した。

「セイジ様、長丁場になると思いますから時間がある内に食事にしてはいかがですか?」

「丁度昼時だし、そうしようか。」

 俺もポーチから水筒や保存食を取り出して皆に配り、硬い保存食をかじっては水で流し込んだ。


 昼食を終えると入口の監視は三人に任せて、俺は中の調査に専心する。

 洞窟内の人の配置は初見で大体把握していたので、今度は男達個別の能力を鑑定していく。

 誘拐の実行犯達や首領と思われる男は、平均レベル15程とレベル24なのでそこそこの強さはあるが他はレベル10に届かず、全員低レベルの隠密行動と武器スキルしか持っていないので盗賊達の制圧は容易だろう。

 ただ一人だけレベル30で神聖法術というスキルを持つゼス教団の騎士がいて、こいつはアリア嬢達三人を従属による祝福という神聖法術で支配下に置いていた。

 鑑定によるとこの従属による祝福という神聖法術は、術者に生殺与奪を委ねて従属する事で能力値やスキルを大幅に強化するというもので、被従属側からの要請で初めて発動条件を満たすと見える。

 恐らく彼女達を脅して要請させ法術を発動したのだろう。

 厄介な事に従属による祝福の解除方法を鑑定出来ないので、ゼス教団の騎士は生け捕りにして解除方法を吐かせないといけないようだ。

 ついでに首領ぐらいは捉えていろいろ情報を喋って貰うとしよう。

 洞窟内の男達やアリア嬢達の位置関係を考えると、救出作戦はまずティア達に入口から襲撃して注意をひきつけて貰い、俺は人質に取られないよう転移でアリア嬢達の元へ移動して安全を確保し、後は外と内から挟撃すればいいだろう。


 盗賊達の鑑定が終わり大まかな救出策を決めても、夕方までまだ間があった。

 洞窟内にも動きはないのでこの時間を利用して幻獣の強化を試しておこう。

 ファナから幻核石を受け取り、三人に入口の監視を任せて洞窟から距離を取っていく。

 洞窟内からは死角になるように十分離れてグン、ネイ、グロムを実体化し、影エルフの里周辺で手に入れたマンイーター、バインドアイビイ、風と雷のカーズドエレメントにビッグカーズドエレメントの魔核石を与えていく。

 残念ながらグロムに変化は起きなかったが、グンとネイは風と雷の魔術スキルを取得しレベルも26まで上がったその上で、エレメントウルフという上位種に変化した。

 2体は体格がまた大きくなり背中を覆っていた黒い炎は消えたが全身を見事な銀色の毛皮がつつんでいる。

 2体は得意そうにその毛皮に炎や闇だけでなく風や雷も纏って見せせくれた。

 残念そうなグロムを労い、グンとネイ撫でてやってから三体とも幻核石に戻しファナ達の元へ戻った。

 グンとネイをファナに返して変化を説明し、俺も入口の監視に加わって考えた救出策を三人に説明する。

 特に不満や疑問点はないようで皆納得して頷いてくれた。

 そこからは洞窟の入口の監視に専念するが、特に何も起こらず日が暮れていった。




お読み頂き有難う御座います。

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