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影の森 10

 ファナとリゼラにファナが実体化したグンとネイが隊列を組んで横穴の中に踏み込む。

 新しいビッグカーズドエレメントが実体化した瞬間にファナの大剣が両断し、リゼラが槍で貫いてしとめ、グンとネイが爪や牙で引き裂いて行く。

 モグラ叩きに近い感じで、横穴のあちこちで不意に実体化するビッグカーズドエレメントを仕留めていってくれる。

 ファナ達は術を使う隙を与えずビッグカーズドエレメントを倒していてくれるが、横穴に踏み込んで30分程立つと流石に動きが鈍ってくるので一旦退避を指示した。

 横穴からファナ達が飛び出すと、ティアと俺が実体化したグロムがビッグカーズドエレメントへの攻撃を引き継ぐ。

 横穴の外からビッグカーズドエレメントを錬鎧装矢弾を使った弓や、ティアの召喚した各種の精霊が撃ち出す各属性の槍が貫き、グロムが投げ込む溶岩球が打ち砕いた。

 

 瘴気泉が湧き始めた直後は1分位に5〜6体だったビッグカーズドエレメントの実体化頻度も、夜が明けた頃からは5分位で5〜6体位に下がりだいぶ楽になっている。

 ティアとグロムの担当になって30分。今度は俺の担当の時間になるので手持ち最後のマナポーションを飲みほし、魔術アーツファイアーピラーの準備に入ると聞き耳スキルが複数の足音を拾った。

 地形的に視線が通らないので魔眼を向けると、武装した30人程の影エルフがこちらに小走りで向かっていてその中にパトールの姿もあった。

 無事依頼を果たせそうだが、影エルフ達が着く前に幻獣は幻核石に戻しておこう。

 横穴一杯に範囲を設定してファイアーピラーを発動しグロムの実体化を解きながら休んでいるファナへ指示を出す。

「ファナ、グンとネイを幻核石に戻せ。」

 ファナは頷いてすぐにグンとネイの実体化を解いてくれ、1回目のファイアーピラーの終わりに重ねるようにして2回目のファイアーピラーを発動した所で、影エルフ達が俺達の前に姿を現した。

 ほとんどの影エルフ達が俺達を見て驚いたように動きを止めるが、パトールは気にした様子もなく俺の前まで進んできた。

「よく依頼を果たしてくれた。感謝する。」

「そっちこそ言っていた期間より大分早く来てくれたな、正直どんなに早くても日が沈む前に来てくれるとは思ってなかった。」

 パトールへ返事を返すと2回目のファイアーピラーの勢いが弱まって来たので、3回目の準備に入ろうとしたらパトールに止められた。

「ここからは我々が引き継ぐ。依頼はこれで完了だ。ここから引き揚げて休んでくれ。」

「分かった。今度はそっちの武運を祈るよ。」

 パトールは頷いて影エルフ達の元まで戻り、瘴気泉の抑えを引き継ぐと周りに発破を掛けた。


 横穴を埋め尽くしていたファイアーピラーの炎が完全に消えると、10名程の影エルフ達が横穴へ踏み込む。

 影エルフの一人が黒い球体の割れた場所に胡座で座り何かの詠唱を始め、残りの影エルフ達は座った者の周りに円陣を組んだ。

 するとビッグカーズドエレメントの実体化が止まったので、瘴気泉の事は任せてしまえば良さそうだ。

 他にも5人の影エルフが俺達の前を通りすぎ魔境の奥を目指していく。

 恐らく精霊の場の現状を確認しに向かったのだろう。


 俺達の役目は終わったようなので、パトール達の邪魔にならないようにティア、ファナ、リゼラに声を掛け、横穴から離れていく。

 三人共見た目では大きな傷や怪我等は無いが、一応鑑定眼で調べてみる。

 三人共流石に疲労状態だが見た目通り怪我は無いようで、リゼラがレベル30に、ティアとファナはレベル33になっていた。

 ついでに俺も自身を鑑定してみるとレベルが33まで上がっていたが、あれだけの数のビッグカーズドエレメントを狩ったんだから当然か。

 横穴から十分距離を取ってリゼラと向き合った。

「これでリゼラからの依頼は完了だな。」

「ええ、これでわたしは完全にセイ様の奴隷よ。それでわたしはどうなるの?」

「リゼラもティアやファナと同じように扱うつもりだ。具体的に言うと俺のパーティーメンバー兼愛人だな。よろしく頼む。」

「分かったわ。男の人の相手はした事無いけど、夜のお勤めも討伐者の仕事も頑張るから末永く可愛がってね?」

「ああ、約束する。みんな手放すつもりは無いよ。」

 俺の返事にリゼラだけじゃなくティアやファナも柔らかな笑顔になってくれた。

 丁度昼時なのでそこからはみんなで昼食にするが、野営道具が全滅しているので携帯食をかじり水で腹に流し込む。

 食後は影エルフの里へ引き上げる前に一か所寄り道するため転移で移動した。


 捕捉眼で再度見つけた中年の騎士から少し離れた森に転移し、俺が風精霊を召喚して迷いの森の効果を打ち消してファナに話かける。

「あの中年の騎士が行った転移の反応を追ってみたんだけど、ここから匂いで後を追えるか?」

 ファナはしっかりと頷いてくれると周囲をぐるっと見回し、確信に満ちた表情で振り返った。

「見つけた。すぐそこに居る。付いてきて。」

 ファナの答えにリゼラやティアと主に頷いて、先導してくれるファナの後ろをついて行く。

 5分も歩くと中年の騎士の姿を捉え、さらに近づくと向こうも俺達に気付いた。

 憔悴した表情を恐怖にゆがめ剣を抜き中年の騎士が襲い掛かってくるが、剣を打ち込んでくる腕を取り簡単に組み伏せれた。

 魔道具を使うなどの妙な真似をさせないため縛り上げたいが丁度いいロープが手元に無かったので、バインドアイビイの真似をして召喚した植物の精霊が生みだした蔦で縛り上げ座らせた。

 目一杯の気鎧と魔装衣を展開して中年の騎士を威圧し、力を入れて喉を掴んで命じた。

「俺達が知りたい事を洗いざらい喋って貰うぞ。制約法術を使うから嘘がつけると思うなよ。」

 一応俺達に嘘が付けない制約法術をかけて喉から手を離すが、そこから中年の騎士は制約法術が必要ないくらい俺達の要求以上によく喋ってくれる。

 まずこいつは自身が王女の敵対勢力が送り込んだ監視役兼刺客だとあっさり認めた。

 次に王女が精霊との契約を求めた理由は、王位継承権を得るためのようだ。

 ライメント王国では精霊との契約が貴族家の当主の絶対条件だそうで、それは王家といえど例外ではないらしい。

 こいつがリゼラを奴隷として狙ったのも、精霊と契約できなかった自分が当主になる為精霊を使えるリゼラを奴隷として傍に置いて、契約が上手く行ったと装いたかったようだ。

 それから王女が一時毒で倒れたのもこいつのせいで、毒を持つ魔物の襲撃に便乗して毒を盛れば戦闘による死亡と偽装できると考えたかららしい。

 後は最初俺達と野営した夜に何もしてこなかったのは、王女が契約に失敗すればそちらの方が都合が良かったので見合わせ、次の日の夜に毒を撒いたのは、精霊との契約に成功した王女をどうしても国元に返す訳にはいかなかったと、中年の騎士は勝手に喋ってくれた。

 最後に黒い球体の事を問い詰めてみたが、こいつは何も知らないようで割ればそこに魔物が湧くとだけ教えられ、王女殺害の切り札として上役から渡されていた。


 ここまでの話で大体知っている事をしゃべり終えたようで、中年の騎士が命乞いしかしなくなったので取り敢えず首を絞めて気絶させる。

 俺が中年の騎士を担ぎ、目印が置いてあり目標にしやすい影エルフの里の借家へ向けて転移した。

 借家の居間に無事全員移動すると、中年の騎士を担いだまま三人を連れて外に出て里の中へ向かって歩いて行く。

 ダビアムさんの家の前まで来ると、一旦中年の騎士を地面に下ろしリゼラへ顔を向けた。

「ここで待ってるから、ダビアムさんを連れてきてくれないか?交渉したい事があるんだ。」

「分かったわ、少し待っててね。」

 返事をして頷いてくれたリゼラがダビアムさんの家の中へ消えた。

 待っている間に王女一行を魔眼で探してみると、ダビアムさんの家の一室に固まっていたので都合が良さそうだ。

 視線を戻し5分ほど待つとリゼラに先導され、俺の前までダビアムさんが出て来てくれた。

「出て来て下さり有難う御座います。」

「なに、君等が果たしてくれた依頼に比べればどうという事は無い。この里者達全員に変わって礼を言わせて貰う。」

「十分な報酬を受け取っていますから、お気になさらず。それでお呼び立てした本題なんですが、あの魔境に瘴気泉を発生させた奴を捕らえて来たので引き渡しに来ました。報酬として一つお願いを聞いて頂けませんか?」

 俺の話にダビアムさんは驚きの表情を浮かべ、俺達の足元で伸びている中年の騎士へ路傍の石を見るような冷たい視線を送ってから俺へ向き直った。

「我々に叶えられる事なら何でもしよう。言ってくれ。」

「じゃあお言葉に甘えて、あの貴族の一行に俺達の事は忘れて、誰にも口外しないように言い含めて頂けませんか。貴族の内輪揉めに巻き込まれるのなんて、真っ平御免なんで。」

「分かった。確かに請け負おう。だがそれ程心配する必要はないぞ。あの貴族も自らの配下に殺されそうになった事を言い触らすとは思えんからな。」

「そうだった良いんですけどね。じゃあこいつを引き渡します。」

 精霊召喚で維持していた蔦を消すと、ダビアムさんが植物の精霊を召喚してまた縛り上げた。

「確かに引き受けた。が、君達はこれからどうする?」

「今日はこの里で休ませて貰って、明日の朝ここを立つつもりです。色々便宜を図って頂き有難う御座います。」

「そうか、武運と息災を祈る、あとこの娘も事もよろしく頼む。」

 頷いてと握手を交わしダビアムさんの前を辞した。


 そこからはリゼラの案内で里を回って使い切った矢を補充し野営道具を新調して、備蓄してある薬草を分けて貰い消費したポーションを造って補充する。

 ついでに里の分のポーションを造ってほしいと頼まれたので快諾し、手間賃として金貨3枚を貰い借家代を清算した。

 借家に引き上げると少し早いが夕食を三人に作って貰い皆で平らげる。

 4人で寝室に入ると遮音の結界を展開し色々溜まっていたが疲れも溜まっていたので一人一回と決め、まずリゼラから押し倒した。

 一人ずつじっくり時間をかけねっとりと隅々まで楽しませて貰い、最後は少し荒々しく欲望を吐き出して心地いい疲労の中三人を抱き寄せて眠りに落ちた。



お読み頂き有難う御座います。

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