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影の森 2

 門を潜って見えてきた影エルフの里は、ツリーハウスや木造の家が迷路のように立ち並んでいた。

 その迷路を進んで行く門衛について行くと、一件の平屋に案内される。

 その家の使用人らしき影エルフの女性に顔つなぎをして貰い、応接室のような部屋に通された。

 その部屋で暫く待っていると、美青年としか言いようのない影エルフが部屋に入ってきて、俺達の向かいに腰を下ろした。

「待たせたな、この里の外渉を任されているダビアムという。前置きは無しに本題に入ろう。お前達にとっては繰り返しになると思うが、改めて用件を言ってくれ。」

 部屋に入ってきた時点で鑑定を始めたので、このエルフの御仁が長老で3百数十歳だと驚かずに納得できたが、エルフの神秘を見た気がした。

「分かりました。俺はセイジと言いこのパーティーのリーダーです。精霊の場の位置情報を知りたくて、この里を訪ねさせて貰いました。少額ではありますが対価を払う用意もあります。情報を教えて頂けませんか?」

「精霊の場の情報に対価は必要ない。契約者の増加は場の活性化につながるからな。故に興味本位や情報の転売目的ではなく、精霊と契約できる実力者だと我らに示して貰う。それが情報提供の条件だ。異存があるなら速やかに里を出ていくがいい。」

「異存はありません。条件の詳細をお教えください。」

「よかろう。この里の周囲に精霊の場が2か所ある。そこで精霊と契約して見せて貰おう。確認のためこちらから立会人を一人出す。その者に精霊の場を内包する魔境の外縁まで案内させるが、精霊の場への先導は行わないし、魔物の排除は自力で行って貰う。どちらかの精霊の場で契約に成功すれば、この里より遠隔地にある精霊の場の情報を教えよう。何か質問はあるか?」

「まず確認なんですが、その条件だと俺達に精霊と契約する力だけじゃなくて、魔境での探索能力や魔物相手の戦闘力もあると示せって事ですね?」

 俺の問いかけを聞いて、部屋に入ってからずっと値踏みするような表情だったダビアムさんが、少し関心したような表情をしてくれた。

「その通りだ。遠隔地の精霊の場は大まかな場所を教える事はできるが、人手を出す事などできないので詳細な場所は自分で見つけて貰うしかない。それを人海戦術でやられてしまうと精霊の場があれる原因となる恐れがあるので、君があげた二つの能力も立会人に調べさせている。」

「もう一つ質問します。立会人の安全は俺達が保障しなければいけませんか?」

「その必要は無い。立会人は魔境を単騎で移動できる実力のある者から選ばれる。足手まといになる事は無い筈だ。それにもし立会人に何かあっても、君達に非が無ければ罪に問う事は無い。まあ調査が済むまで里に留まって貰う事にはなるだろうがな。」

 面倒を嫌うなら、立会人にも最低限の注意を払えという事だろう。

「答えてくれて有り難うございます。もう質問はありませんが、代わりにお願いがあります。今日中に立会人と引き合わせて貰えますか?あとこの里の宿を紹介して下さい。」

「いいだろう。この里に専従の宿屋は無いが、代わりに外来者用の貸家が幾つか有るので後で案内させよう、好きな家を借りろ。食料などの消耗品はこの里で買えるし、魔物の素材を立会人経由で買い取っているので好きに自活してくれ。では立会人の元へ案内する、ついて来い。」

 立ち上がり先を行くダビアムさんに続いて俺達もついてくと、ダビアムさんの家を出て門衛に案内して貰った道を逆に辿っていく。

 

 門の近くまで戻ってくると待っていろとダビアムさんに命じられ、兵士の詰所のような場所に入っていく彼を見送った。

 暫く待っていると、ティアやファナ並に美形でスタイルが良く、槍と革鎧で武装した女影エルフを連れてダビアムさんが詰所から出てくる。


リゼラ Lv 18

クラス 精霊戦士

筋力 117

耐力 54

知性 117

精神 72

敏捷 94

感性 54

アビリティ

影エルフの貴種

精霊を纏う者

多重増幅

スキル

4個


 詰所から俺達の前に歩いてくる数歩で一気にリゼラ嬢を鑑定して、口を開きかけたダビアムさんへ意識を戻す。

「紹介する。君達の立会人を担当するリゼラだ。後の話はこの者としてくれ。」

 続けてリゼラ嬢に後は頼むと言い置いてダビアムさんは元来た道を戻っていった。

「俺はセイジ、後ろのエルフはティアと言い、獣人はファナと言います。よろしくお願いします。リゼラさん」

 自己紹介しながら俺から近づき、手を差しだした。

「リゼラでいいし、敬語も必要ないわ。私が1,2歳年上だと思うけど同年代だろうから気楽にいきましょう。セイジ。」

 俺の手を取って握手をしてくれたリゼラに頷いて手を離した。

「それでセイジ達はどうしたいの?」

「まず寝床を確保したいんだ。借家がある場所へ案内してくれ。」

「それならあの辺りにある同じ形をした建物がみんなそうよ。全部同じ造りだからどれを選んでも同じよ。1泊銀貨1枚で、里を出る時清算して貰うから。」

 リゼラが指差した先には、詰所脇に立つ数件の戸建ての平屋があった。

「随分門に近いんだな。」

「それは緊急時の兵舎兼ねてるからね。それでどれにする?」

「内装に違いが無いんなら、門に一番近いあれにするよ。」

「分かったわ、じゃあ今使われていないか確認しておきましょ。」

 リゼラを先頭に俺が指さした家へ向かう。

 戸口の前に立って俺達へ振り返り、大丈夫と言って中に入ったリゼラに続いて俺達も足を踏み入れた。

 家の中を確認すると、流石に風呂は無いが炊事場があり部屋も複数あるそこそこの家だった。

「リゼラ、どうして中を見ないで誰も使ってないって分かったんだ?」

「ああ、それは誰かが使っている時は、使用中って札を戸口に下げる決まりなの。セイジ達も他の使用中の家には、勝手に入らないでね。後この家は緊急時、里へ接収されるから鍵をかけちゃいけない事になってるの、だから荷物の管理は気を付けてね。後役目がら私もこの家に泊まるからよろしくね。」

「そう言う事なら、部屋割りを決めておこう。」

 出口に一番近い部屋をリゼラに使って貰い、鍵代わりに結界を使うので俺達三人は一番大きな一部屋を一緒に使う事にした。

 部屋を確認し終え転移の目印となる魔核石を居間に設置すると、リゼラの方から話かけてきた。

「それで次はどうするの?今日はもう休む?」

「それを決めるためにも、精霊の場がある二つの魔境ついて教えてくれないか?」

「ええいいわよ。一つ目はこの里から北に1時間位行った場所から始まる魔境で、全て森よ。植物の精霊と契約できる精霊の場があるわ。もう一つはこの里から東に1日ほど森を歩いた場所から始まる魔境で、複雑な谷の地形をしているの。そこの精霊の場では風の精霊と実力があれば雷の精霊とも契約できるわ。出てくる魔物や地形の詳細は、教えられないの。私が話せるのはこんな所ね。」

「有り難う、情報の提供感謝するよ。そういう事なら近い方の魔境へ案内してくれないか?夕方までの間に出てくる魔物の把握くらいは、やっておきたいんだ。」

「分かったわ、行きましょう。」

 出口へ向かうリゼラを追って、俺達も借家を出た。


お読み頂き有難う御座います。

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