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炎の溜り 13

 声がしたバハシルの後方に目を向けると、全身鎧を身に着けいかにも武人という風貌した壮年の男性がいた。

 他にも10人程の騎士がおり、アトミランさんもその中にいる。

 ロンソンさんとバハシルも壮年の武人の方に顔を向けており、バハシルは顔を青くしロンソンさんはホッとしていた。

 皆の視線が集まる中、壮年の武人がもう一度息を吸い込み吼えた。

「聞こえなかったのか!双方武器を仕舞え!」

 その声に弾かれるように全員が慌てて剣を鞘に戻したので、俺も腕を固めていた騎士をバハシルの方に突き出した。

 双方が武器を仕舞いすぐに直立不動の姿勢を取ると、壮年の武人がゆっくり近づいてくる。

 俺も姿勢を正して壮年の武人を鑑定してみると、トガン・シェイドという現辺境伯の実弟で辺境伯家全体の目付け役に付いている人だった。

 この場にいる騎士達の態度に納得して待っていると、トガンさんはロンソンさんとバハシルの間に立ち両方を一別して口を開いた。

「そこの討伐者がこの場に来てからの一部始終を私は全て見聞きした。それを基に裁定を下すが、その前に双方何か申し開きがあるなら述べよ。」

 ロンソンさんはありませんと言って頭を下げたが、バハシルは青い表情のまま言い訳を探しているようで、何か閃いたのかトガンさんに食って掛かった。

「そうだ叔父上、私はロンソン達に嵌められたのです。私の元へ意図的にこの迷宮の地図情報を流し妨害を誘ったんです。ですから・・・」

「世迷言は大概にしろ!バハシル!確かにアトミランが地図情報を流したと認めておるが、それはお前にもチャンスを与えるためで、無法を働いたのはお前の意思であろうが!しかもあの手際の良さ入念に打ち合わせをしての事であろう。先の迷宮氾濫の件への関与を含めて処分は御当主と協議をして決めるが、それまでの間わしがお前の身柄を拘束する。これは目付け役としての決定である。」

 言い訳の途中でトガンさんに一喝されてしまい、拘禁を言い渡されたバハシルは呆然としてしまう。

 その間にトガンさんは連れてきた騎士達に指示を出し、バハシルやその配下の武装解除を行い拘束すると、複数の帰還結晶を使ってこの場から消えた。


 一人帰還せず残ったアトミランさんが、ロンソンさんの前まで来て一礼する。

 渋い表情になったロンソンさんが口を開いた。

「アトミラン卿、経緯の説明を求める。」

「はい、先ほどトガン様が言っていた通り、セイジたちから借りた地図の情報を不自然にならないようバハシル様側に流しました。そして迷宮氾濫の調査ためこちらに来られていたトガン様に、ロンソン様を追って迷宮に入ったバハシル様の行動を報告した所同行を命じられたので随伴いたしました。後はご覧の通りです。」

「何故そのような事を?」

「ロンソン様。潜在的な脅威というものは、排除できるタイミングが着たら確実に排除しておくべきなのです。それはご自身の為だけではなく、付き従う部下の為でもあるとご記憶ください。」

 アトミランさんの返答を聞いてロンソンさんの表情はますます険しくなってしまう。

 だが丁度会話が途切れたので、俺達は渡す物を渡してさっさと撤収させて貰おう。

「ロンソン様、改めてこれが先程渡しそびれた物です。」

 一旦ポーチに仕舞った制御プレートを取り出してロンソンさんに差し出すと、アトミランさんに向けていた険しい表情を緩めてプレートを受け取ってくれた。

「セイジ達は見事に役目を果たしてくれたのに、こちらの揉め事に巻き込んですまなかった。」

「いえ、お気になさらず。これで俺達は転移で脱出しますが、何人か連れて出ましょうか?」

「いや、気を使わなくていい。間違いないと思うが、このプレートで結晶を制御できるか確認してから我々は脱出する。明日砦に顔を出してくれ約束の報酬を払おう。」

「分かりました。俺達はこれで失礼します。」

 俺達が一礼するとロンソンさん達は結晶ある部屋へと向かい、それを見送って迷宮をでた。

 ミラルテのギルドに転移すると、三人で依頼票に目を通していく。

 ここでの目的を達した以上王都を目指すべきで、ルディアへ向かう商隊護衛の依頼を探した。

 運よく2日後出発するギルドの商隊護衛の依頼があったので引き受けて宿へ引き上げ、半日溜まっていたものが空っぽになるまでティアとファナにつきあって貰った


 翌朝砦へ転移し、ロンソンさんの執務室を訪ねるとアトミランさんから一枚の証書をわたされた。

 内容に目を通すと、封印された魔物の討伐時にロンソンさんの護衛をした報酬として、ギルドから300万ヘルク支払うと明記されていた。

「どういう事ですか?」

「今回の討伐にギルドを噛ませてやる為に、セイジ達はギルドから派遣された護衛ということにさせて貰った。勝手に交渉して悪かったが、その分報酬を上乗せしたのでそれで納得して欲しい。」

「俺達の方は構いませんよ。ギルドを通してくれた方がランクアップのための実績にもなりますから、返って有り難いくらいですよ。」

「そうか。後一つ忠告がある。バハシル様の縁者が、状況の逆転を狙ってお前達を取り込もうとするかもしれない。卑劣な手段に訴える可能性もあるので十分注意するように。」

「助言有難う御座います。そういう事なら明日ミラルテを出るので、まだ街に留まっているという噂でも流しておいてください。」

「分かった、手配しておこう。道中の無事を祈る。」

 アトミランさんへ一礼するとロンソンさんが立ち上がった。

「セイジ、此度も世話になった。そなた達の息災を祈る。」

「ロンソン様こそお元気で」

 ロンソンさんへも一礼して執務室を後にした。

 ミラルテへ転移で戻りギルドで証書を換金すると、迷宮で消費した消耗品を補充していく。

 護衛の準備が整うと宿に引き上げ早めに休み、翌日ルディアへの商隊の護衛としてミラルテを出発した。


お読み頂き有難う御座います。

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