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炎の溜り 10

 少し遅めに起きてギルドへ向かい中へ入ると、すぐに受付嬢に捕まってしまう。

 物資輸送をせっつかれるが、先に迷宮で狩った魔物の素材の換金を頼んだ。

 探索主体だったとはいえ5日分あったので、担当になった受付嬢の笑顔が少し引きつっていたが、昼までで構わないと伝えるとホッとした表情で換金の引き換え票を渡してくれた。

 換金の手続きが終わると最初に声を掛けてきた受付嬢に、ひきずられるようにして倉庫へ連れて行かれる。

 砦へ送って欲しいと言われるであろう人も3人倉庫の前で待っており、受付嬢にとにかく急いで欲しいと急かされた。

 待っていた人の一人がギルド所属だったのでその人にも手伝って貰って、俺とティアのポーチに荷物を詰め込んで、待っていた他の2人も連れて砦へ転移した。


 連れて来た人達とは砦に入った所で別れ、俺達は倉庫代わりの部屋に向かう。

 荷物を倉庫に出し終え完了証を貰い、ロンソンさんの様子を確信すると、アトミランさんと書類仕事をしていたので話をし執務室に向かう。

 執務室前に詰めていた警備の騎士に面会の希望を伝えると、すぐに中に通してくれた。

「息災のようだな、セイジ。」

 執務机に近づく俺にそう挨拶してくれたロンソンさんは、近くでよく見ると少しやつれているようなので、用件を伝え終えたらさっさと引き上げた方が良さそうだ。

「はい、何とか。ロンソン様の方はお忙しそうなので、用件だけ話します。実はここの迷宮の20層で、魔物の封じられた巨大な結晶を見つけました。恐らく封印結晶だと思います。20層で戦った魔物の強さから封印された魔物を十分討てると思うので、戦ってみようと考えています。負けるつもりはありませんが、封印中の魔物を外に実体化させると、それが解けるまで迷宮内の魔物の出現数が急増すると、以前読んだギルドの資料にあったので今日は注意喚起を促しに来ました。」

 話の冒頭部分を聞いて驚きの顔を浮かべたロンソンさんだが、最後には少しの呆れ顔に変わっていた。

「セイジには驚かされてばかりだな。封印迷宮から浄化迷宮への移行は、こちらにとっても望ましい。セイジ達の勝利を願う。後は討伐終了後いつでもいいから報告にきてくれ。」

「分かりました、ロンソン様。」

 返事をしながらロンソンさんに一礼し、退室しようとすると

「ロンソン様、討伐へ同行を強くお勧めします。」

 話かけてきたアトミランさんの方に、俺もロンソンさんも目を向ける。

「あなたは俺にセイジ達の功績を横取りしろというのか?」

 問いかけるロンソンさんの語気は荒いが、アトミランさんは淡々と答えた。

「結果だけを他者が見ればそうなるでしょうが、この者達を守る事につながると私は考えます。この砦には今あの方がいます。ギルドに所属していないフリーの討伐者が大きな功績をあげれば、あの方の事です、どんな手段を行使しても功績を自分のものにしようとなさるでしょう。ですが功績を挙げた者の中にロンソン様がいれば、容易な手出しは不可能となるでしょう。それでも功績のただ乗りが気にやまれるのでしたら、ロンソン様が十分な報酬を払えばいいではありませんか。」

 アトミランさんの提案を聞き終えると、ロンソンさんは渋い表情のまま黙ってしまう。

 話に出てくるあの方というのは恐らくバハシルの事で、あの人からの干渉を引き受けてくれるならこちらとしても有り難い。

 幻獣化の為魔核石は譲れないが、後の功績はロンソンさんに被せてしまった方が俺にとっては都合が良いだろうから、こちらからもロンソンさんの同行を促そう。 

「こちらとしては、封じられた魔物の倒した後、その魔核石について俺達の所有を認めてくれれば他に問題はありません。あの方というのがどなたか分かりませんが、同行して頂く事で厄介事に巻き込まれずに済むなら、かえってこちらからお願いしたいくらいですね。」

 ロンソンさんは暫く渋い表情のまま黙っていたが、絞り出すような声でよろしく頼むと俺に告げた。

 俺の方は勿論快諾し、そこからはアトミランさんも交えて非常時の取り決めや出発の日時を相談する。

 俺とロンソンさんのパーティーは協力当然するが、撤退の判断などは個別に行い自己責任で行動すると取り決め、魔核石と追加の報酬を貰う代わりに外向きにはロンソンさん主導の討伐と広報する事になった。

 ロンソンさん達の準備の都合上迷宮へは明後日の朝になり、緊急事態に備えて地図の写しが欲しいとアトミランさんが要請してきた。

 写しを取るのは構わないが、流石にタダという訳にはいかないので、1層につき1万ヘルクと出発前に地図を返却するよう条件を付けるが、即座に快諾されてしまう。

 ポーチから出した地図の束と15万ヘルクの金貨が入った袋を交換し、ロンソンさんへ一礼して執務室を後にした。


 丁度良い時間だったので砦の食堂に入り昼食を頼む。

 食事をしながら明後日までの予定を話し合い、明日は完全休養日にして今日中に迷宮遠征の準備を終わらせると決めた。

 食後ミラルテのギルドへ転移し、ティアには対魔法障壁と祓魔結界を、ファナには一閃とティアも使っている弓の武技アーツ裂空のアーツブックを読むよう頼んでミルネ教会へ連れて行った。

 俺はギルドで物資輸送の完了証を換金すると、屋台や食料品店で携帯食や保存食を補充し、武器屋で弓と弩の矢も補充してからミルネ教会に向かう。

 俺も一閃の上位技に当たりプラーナの消費は上がるが切断力も大幅に向上する武技アーツ、剛一閃のアーツブックを読んで宿へ引き上げた。

 そのまま翌日の昼近くまで寝て過ごし、昼食は大目に買い溜めた携帯食で済ます。

 午後は遮音結界を張った部屋の中で、ティアとファナを夕方近くまでじっくりでも激しく空っぽになるまで楽しませて貰い、二人を連れて銭湯へ行き一風呂浴びた。


 心身ともにリフレッシュ出来たからか日の出前には目が覚め、ゆっくり身支度を整えて宿を出る。

 転移で迷宮前に移動すると早かったようで、夜勤明けだろう警備の騎士や討伐者がいるだけだった。

 暫く待つとロンソンさんを先頭に、アトミランさん以下10名ほどの騎士が迷宮前までやってくる。

 約束通りアトミランさんから地図を返して貰い、取り決め通りロンソンさんを先頭にして迷宮へ入った。



お読み頂き有難う御座います。

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