炎の溜り 8
デジレさんと約束した1週間が過ぎたので今日は防具をつけず、武器だけ佩びて宿を出た。
真っ直ぐデジレさんの工房へと向かい扉を叩くと、まだ朝だったので扉を開けてくれたデジレさんは不機嫌だったが、俺達だと分かると表情を和らげて中へ入れてくれる。
勧めてくれる椅子に全員座るとデジレさんから話を切り出した。
「ポーチを受け取りに来たんだろ。金は問題ないんだろうけどよ、邪霊の灰は集まったか?」
「十分な量を集める事が出来たと思いますけど、確認をお願いします。」
ポーチから邪霊の灰を詰めた壺を取り出して、デジレさんに手渡す。壺の蓋を開けて中を確認したデジレさんは、ニヤリとして俺の方に視線を向けた。
「確かに、十分な量がありそうだ。すぐ付与に掛かってやる。ポーチの後金と付与の前金に付与を掛ける防具を置いて行け。明日の朝までには付与を仕上げておいてやる。後金を持って取りに来い。」
「デジレさん、払いの事ですけど、魔核石でもいいですか?」
「なんだ?魔核石は幾らでも欲しいが、ギルドへ売らずに取ってあるのか?取り敢えず見せてみろ。」
デジレさんへ頷き返してポーチから魔核石の入った袋を取り出して中を見せると、デジレさんは呆気にとられた表情になった。
「200以上あるじゃねぇか。邪霊の灰と一緒に集めたやつか?」
「そうです。デジレさんには今回無理を言いましたから、単にお金を払うより魔核石を融通する方が喜ばれるかと思って売らずに持って来たんですけど、お金と魔核石の物納、どっちがいいですか?」
「・・・ポーチの後金はこの魔核石の物納でいい。付与の前金分だけ2万払ってくれ。」
「異存無いです。」
魔核石をデジレさんにそのまま渡し金貨も2枚手渡すと、デジレさんも新しいポーチを引き渡してくれ使い方も教えてくれた。
魔核石充填式の新しいポーチをファナに渡し、ポーチに入れて持ってきていた防具をデジレさんに託して工房を出た。
大通りに出ていた屋台で昼食を買い、ミルネ教会へ向かう。
アリア嬢を探してアーツブックの閲覧を頼むと笑顔で引き受けてくれた。
図書館へ歩きながら、ティアとファナへ読んで貰うアーツブックを指示していく。
気配探知と瘴気探知に加え危機感知と感覚強化術を、他にも気鎧術と魔装術に錬気弾と錬魔弾のアーツブックを読むよう頼んだ。
俺の指示を聞いたティアとファナの表情が曇り、話を聞いていたアリア嬢から厳しい表情で一日ではそんな量のアーツブックは読めないと、苦言を呈されてしまう。
説明が足りなかったと詫び、今上げたアーツブックは次に迷宮へ入るまでに覚えて欲しいもので、日をまたいでも構わないと告げた。
ティアとファナはほっとしてくれ、アリア嬢も怒りを納めて図書館に着くとアーツブックを取りに行ってくれる。
言葉足らずで勘違いをさせ、ばつが悪かったので残りの素材をギルドで換金してくると二人に声を掛けてミルネ教会を出た。
ギルドに入り手すきの受付嬢に声を掛けて素材の換金を頼んで待っていると、よく物資輸送の手続きをしてくれていた別の受付嬢に腕を取られた。
引っ張られるように歩きながら事情説明を求めると、砦へ運ぶ物資がギルドの倉庫から溢れそうになっているので、少しでもいいから運んでほしいと拝み倒されてしまう。
かなり困っている様子なので、一回だけ引き受け馬車一台分ほどの荷物を砦に運んで、輸送代と素材の代金を受け取ってギルドを出た。
ミルネ教会に戻ると昼を過ぎており、丁度アーツブックを読み終えていたティアとファナが少し心配そうに何かあったのか聞いてきた。
ギルドに頼まれて砦へ物資を運んだことを告げると安心してくれ、少し遅い昼食を三人で取った。
二人は気合を入れ直してアーツブックの読破を再開してくれ、俺も火炎攻撃に対抗するスキルやアーツが無いかアリア嬢に聞いてみる。
少し悩んだ後アリア嬢は幾つかのアーツを上げてくれた。
教えて貰った物の中からいくつか選び、俺が調べた覚えたいアーツもあるので一緒に覚えてしまおう。
アリア嬢に頼んで俺がおぼえたかった氷結魔術と雷撃魔術のアーツブックを持って来てもらい、2冊とも読み終えてティアとファナを確認すると二人とも6冊目を読んでいた。
外を見ると空が赤くなり始めているので、この時間から1冊アーツブックを読むと宿の夕食に間に合わないだろう。
それでもただ待っているのは時間の無駄なので、教会の中庭で新しく覚えた魔術を試させて貰う。
アリア嬢に許可取って実際試してみると、統合スキルのお蔭か氷結や雷撃の属性刃や属性ピラーなどを問題なく発動出来た。
魔術の手応えを確認し終わると二人もアーツブックを読み終わっており、アリア嬢に礼を言って宿に引き上げた。
氷結魔術スキルを取得した
雷撃魔術スキルを取得した
氷結魔術スキル、雷撃魔術スキルは元素魔術スキルに格納させます
翌朝デジレさんの工房を訪ね、後金を払って防具を受け取ると、ミルネ教会に向かう。
アリア嬢に二人への続きのアーツブックを持って来てもらい、俺には進めて貰ったアーツブックのうちの二つを選んで持って来て欲しいと頼んだ。
昼までの間にティアとファナは全てのアーツブックを読み終えてくれ、俺も勧められた魔術アーツ属性ウォールと法術アーツ対魔法障壁を習得し終えた。
予定していたアーツブックを読み終えたので、アリア嬢への口止めとお礼の意味を込めて前回と同じ額の寄付を申し出る。アリア嬢は困ったような笑顔をしたが受け取ってくれ、礼を言ってミルネ教会を後にした。
魔術アーツ属性ウォールを取得した
法術アーツ対魔法障壁を取得した
魔術アーツ属性ウォールは元素魔術スキルに格納されます
法術アーツ対魔法障壁は障壁法術スキルに格納されます
通りに出ていた屋台で昼食を取りながら、今後の予定を二人に話す。
流石に12層以降は日帰りでの探索は難しいので、迷宮内で野営をしてさらに深層の探索をしようと話すと、二人とも同意してくれる。
昼食後、準備の為武器屋で弓と弩の矢を十分補充し、屋台や食料品店で携帯食や保存食も補充すると早めに宿へ引き上げた。
ここ最近の疲れをとろうと明日の朝までゆっくりしようと思ったが、じっくり二人を楽しんでしまい少しでも疲れをとる為風呂に入ってさっぱりしてこの日は眠った。
朝起きて装備を身に着け朝食を食べると、宿から直接迷宮の前に転移する。
警備の騎士や討伐者にカードを見せて迷宮へ入ろうとすると横から男が声を掛けてきた。
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