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炎の溜り 7

 ミラルテのギルドにある訓練場の隅に無事転移すると、ギルドの中を抜けてミルネ教会に足を運び、中庭で掃除をしていたアリア嬢に声を掛けた。

「アリアさん、またアーツブックの閲覧をお願い出来ますか?」

「ええ、いいですよ。少し待って下さいね。」

こちらの頼みに答えて掃除道具を片付けるアリア嬢を手伝って、一緒に図書館へ向かう。隣を歩くアリア嬢が俺を見上げてきた。

「今日は、どのアーツブックを閲覧されますか?」

「弓に弩それから弓術のアーツブックをまずお願いします。」

「弓術も、ですか?」

 そう聞き返してくるアリア嬢は、困惑した表情に浮かべている。

 統合スキルをアーツブックで覚えるには、何かあるかもしれないのでここで聞いておこう。

「不味いですかね?」

「統合スキルを覚えさせようとする事自体は、素晴らしいと思います。ですが統合スキルのラーニングアーツは、きちんとスキルを格納していないと上書きの為の熟練度の蓄積が始まらないと言われています。格納するスキルがラーニングアーツのままだと、ただプラーナとマナを無駄に消費するだけになると思いますから、格納するスキルをラーニングアーツから上書きした後で、統合スキルのアーツブックを読ませた方が良いと思いますよ。」

 確かにアリア嬢の言うとおりだが、助言に従い且つおかしいと決定的に気付かせない為には、アーツブックを読む間隔を数か月空ける必要がある。

 他のミルネ教会で読むという手もあるだろうが迂遠だし、気鎧術や魔装術のスキルを覚えて貰う必要もある。

 無駄があろうとも機会がある時にアーツブックを読むという姿勢にしておいた方が、俺のアビリティの効果を誤魔化す事になるだろう。

「助言有難う御座います。それでも弓術のアーツブックも持っていてください。スキルへの上書きが終わった時に、すぐに統合スキルのアーツブックが読める環境にいるか分かりませんし、多少のプラーナとマナの浪費なら問題ない位、俺達はレベルを上げていますから。」

 俺の返答を聞いてもアリア嬢は困惑の表情を浮かべたままだったが、図書館へ着くと弓と弩に加えて弓術のアーツブックも用意してくれた。


 ティアに弩のファナに弓のアーツブックを読むように指示して、追加で幻獣関係のアーツブックを持って来て欲しいとアリア嬢に頼んでみるが、資料はあるがアーツブックは無いと謝られてしまう。

 幻獣関係のスキルは俺のアビリティの効果に期待する事にして、調べておいた別のアーツブックを持って来てくれるようアリア嬢に頼む。

 弓スキルを既に持っているティアへ追加して障壁法術のアーツブックを、俺には属性ピラーという魔術アーツと、コリレスでは保留にしていた気力浸透波とそれのマナ版に当たる魔力浸透波というアーツブックを頼んだ。

 速読スキルレベルの関係上ファナが読み終わるのを待つ事になったが、その間に迷っていたティアへのBPを使った精霊使役術スキルの取得を指示し、空が完全に暗くなる前にアリア嬢へ礼を言って宿へ引き上げた。


魔術アーツ属性ピラーを取得した

武技アーツ気力浸透波を取得した

武技アーツ魔力浸透波を取得した

魔術アーツ属性ピラーは元素魔術スキルに格納されます

武技アーツ気力浸透波は気鎧術スキルに格納されます

武技アーツ魔力浸透波は魔装術スキルに格納されます


 次の日、宿から直接迷宮前に転移して、カーズドエレメントを狩りながら貰った地図を参考にまだ地図の無い6層を目指す。

 まだ覚えて欲しいスキルはあったがアーツブックの読破は、防具への付与の為に迷宮へ潜れない日に回す事にした。

 迷宮へ入り最初に下層へのルート上で遭遇したカーズドエレメントとフレイムゴーストの群れへ、試しに魔術アーツウォーターピラーを撃ち込む。

 魔物の群れの足元に全体を覆う水円が出現すると、その水円を底辺とする円柱が迷宮の天井まで立ち上った。

 その円柱は中のものをかき混ぜながら暫く存在し、水が霧散した後には濡れた魔核石と素材が残っているだけだった。

 レベル差があるお蔭だろうが威力は十分だし、発動が少し遅い気がするがそれは不意を突くか底面を広くとれば問題ないだろうから、この魔術アーツ属性ピラーは使えそうだ。

 邪霊の灰を濡らしてしまったが気にしない事にして、他の素材と一緒にすべて回収して移動を再開した。


 次の戦闘からは属性ピラーは封印して、弓と弩を交互に使って貰いながらティアとファナにも参加して貰う。

 ダレンの迷宮より一層辺りの面積が大分狭いお蔭ですぐ6層に着き、大体3分の1程6層を探索した所で宿の女将に用意して貰った昼食を広げた。

 ここまでの戦闘でティアとファナは弓術スキルまで上書きが済んでいたので、弓の交換はもう必要ないと伝えると、二人ともちゃんと実感があるようで納得顔で頷いてくれる。

 昼食後の片付けや、二人が装備を調整する間の暇な時間を使い、魔眼で迷宮の規模を確かめてみる。

 どんどん下層へ視線を向けていくと、どうやら20層が最下層のようでダレンの迷宮と同じように中央部に大きな結晶があった。

 ただダレンと違うのは、その結晶の中に見えにくいが人型の魔物が封じ込められている事だ。

 詳しく鑑定してみたかったが、装備の調整が終わった二人が声を掛けてきてくれたので迷宮の探索に戻った。

 それから夕方まで魔物を狩りながら6層を探索し終えて地図を仕上げ、7層も3分の1ほど探索が終了した。


 7層の探索し終えた部分の地図を仕上げると、フレイムウルフの魔核石を取り出して幻獣化を試してみる。

 フレイムウルフを選んだのはこの迷宮に出る魔物の中で、汎用性が一番高いと判断したからだ。

 ミルネ教会で読んだ資料に書いてあった通りに、魔核石へプラーナとマナを注ぎ込んでみるが、魔核石に多少靄がかかっただけでプラーナとマナは霧散してしまう。

 プラーナとマナを無駄にしたが、代わりに幻獣創造強化スキルというのを取得出来たので、そのスキルを使いながらもう一度挑戦する。

 スキルを取得したお蔭か魔核石にプラーナとマナを込めていくと質感が変化していき、水晶のような透明感が出て来ると魔核石はふわりと手を離れた。

 空中を漂うその石から込めたプラーナとマナが放出され、それが体を形作って一匹のフレイムウルフが俺の足元に現れた。

 能力を鑑定してみるとレベルや基礎成長値に取得しているスキルはこの層に出る魔物と同じくらいだったが、魔物のフレイムウルフが持っているのを見たことが無い浄気膜というスキルを持っていた。

 試しに使わせてみると念話で指示でき、フレイムウルフは瘴気とはまた別のオーラのようなものを纏って、気鎧と魔装衣を並列使用しているような感じになった。

 鑑定で見るスキルの説明も、鎧装に近いものを纏うとなっているので間違いないだろう。

 スキルの使用を止めさせ幻獣化も解除すると、実体化していたフレイムウルフの体は霧散し、変質した魔核石が手元に戻って来ると同時に、幻獣操演スキルと幻獣使役術スキルを取得した。


幻獣創造強化スキルを取得した

幻獣操演スキルを取得した

幻獣使役術スキルを取得した

幻獣創造強化スキル、幻獣操演スキルは幻獣使役術スキルに格納されます


 実際試してみて本当に使えそうなので、ファナにもBPを使って俺が取得したのと同じ、幻獣系の3つのスキルを覚えるよう指示する。

 ファナのスキル取得を待って、俺と同じように魔核石からフレイムウルフを幻獣化させると、能力値はほぼ同等だが浄気膜のスキルを持っていない個体が実体化した。

 ファナの持つアビリティやクラスを考えると、同等の個体が実体化したなら能力値が俺のより高くないと不味いので、試しに操演権を俺に移譲して貰うと能力値がガクッと下がった。

 確認する為俺が創造した個体のもう一度実体化し操演権をファナに渡すと、グッと能力値が上がる。

 スキルレベルは同じ1なので幻獣化の時、行使する者の能力値が馬鹿に出来ないレベルで影響するのは確定だろう。

 そうなると幻獣の創造や強化は俺が担当し、俺が必要なとき以外はファナに幻獣たちを普段使いして貰えば良いが、ファナが実体化した能力の劣る個体が問題になる。

 処分するかとも考えたが、資料には一度幻獣化に成功すると、成長をリセットする代わりに再創造出来るとあったので試してみる。

 ファナの許可を得て俺が再創造してみると、外見は少し違うが能力的には俺が先に幻獣化した個体とほぼ同等の個体が実体化した。

 上手く行ったのでほっとし、ただの魔核石と区別するため幻獣化した物を幻核石と呼ぶことにし、幻核石は二つともファナに渡した。

 幻獣の強化を試すのは後日に回し、転移でミラルテのギルドへ帰還し宿へ戻った。


 それからの6日間は迷宮の地図作りとカーズドエレメント狩りに費やした。

 他の事に手を出さず専心したお蔭か、6日目転移で迷宮を出る時までに12層までの地図が完成し、全ての防具への付与に必要な量以上の邪霊の灰を集めることが出来た。


お読み頂き有難う御座います。

本年もよろしくお願いします。

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