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炎の溜り 2

 非常事態を告げる声に続いて、迷宮から魔物が溢れたと聞こえたのですぐに魔眼を使い迷宮の入口付近を確認してみる。

 すると迷宮へ続く階段から次々と魔物が地上へ出て来ており、階段を覆う増築途中の建物の破壊を始めていた。

 他にも大工が数人、砦へ走って逃げ込もうとしており、迷宮入口の警備をしていた筈の騎士や従士に討伐者達が必至に殿を務めている。

 外の様子を魔眼で確認しながら伝令の声に耳を傾けると、戦える者はどちらかの門の前に集合し、非戦闘員は決められた部屋へ退避するようにという砦主の指示を伝えて回っていた。

 そこまで伝令の指示を聞いて、ティアとファナの方を振り返ると二人とも頷いてくれたので、俺も頷き返して入ってきた門へと走った。


 二人を連れて門まで来ると、丁度大工たちが少し開いた門から砦の中へ逃げ込んだ所だった。

 続けてアトミランさんから指示を受け、鼓舞された15〜6人の部隊が砦の外へと打って出たので俺達も追随する。

 前を行くアトミランさんの部隊を後ろから見ると、殿を務めていた10位の部隊と合流して魔物と当たろうとしていると分かったので、俺達は迂回したり部隊の背後へ回ろうとする魔物の群れを潰す事にした。

 ティアとファナに声を掛けて一旦足を止めこれからの行動を告げて、どの魔物の群れに当たるかその動きを注視すると、未見の魔物がいたので並行して鑑定してみた。


フレイムウルフ Lv7

筋力 28

体力 21

知性 7

精神 14

敏捷 35

感性 14

アビリティ

フレイムスキン

スキル

1個


フレイムゴースト Lv8

筋力 8

体力 8

知性 48

精神 32

敏捷 12

感性 24

アビリティ

幽体

スキル

2個


 2種類の未見の魔物の片方は、炎の毛皮を纏った狼で、もう片方は人の上半身をかたどった浮遊する赤黒い瘴気の塊のようなヤツだった。

 おまけにフレイムゴーストは1,2体のカーズドエレメントを引き連れており、この三種類が5〜7匹の群れを作って行動していた。

 その魔物の群れたちは殿を追う群れ例外、迷宮の入口から放射状に広がろうとしているが、幸い移動速度の遅いフレイムゴーストに合わせて群れは動いているので、急げば拡散を防げそうだ。

 群れの動きを見極めると、近くをフレイムゴースト1にカーズドエレメント2とフレイムウルフ3の群れが単独で通るようなので、まずこれを試しに潰してみよう。

 立ち止まって俺の指示を待ってくれている二人に、目標の群れを指差して声を掛ける。

「ティア、ファナ、あの群れを試しに潰してみよう。まず俺とティアでカーズドエレメントへ仕掛けるから、ファナは狼を牽制してくれ。一撃放った後は、おれが人型の相手をするからティアは仕留めそこなっていたらカーズドエレメントへ止めを刺して、二人で狼を仕留めてくれ。俺も人型を仕留めたら援護に回るから。」

「分かりました、セイジ様。お手を煩わせる事無く、狼まで仕留めてご覧にいれます。お任せください。」

「そのとおり、まかせて、主様。」

 武器を構え自信に満ちた表情でそう返事を返してくれる二人に、分かったと頷き返して錬鎧装弾投槍を練り始める。

 ティアも精霊武技を準備してくれ、お互いの目標を決めて同時に攻撃するとカーズドエレメントを2匹とも仕留めることが出来た。

 続いて攻撃と同時に駆け出していたファナの背中を追い、こちらへ向かってくるフレイムウルフ達とファナが対峙すると、その横をすり抜けてフレイムゴーストへと向かう。

 距離を詰める俺にフレイゴーストはシャドウボールの魔術のような攻撃を撃ち込んでくるが、武技アーツ抵抗膜を使った盾で押しのけ剣の間合いに飛び込んだ。

 気纏と魔纏を試しに剣へ同時に使い、フレイムゴーストへ打ち込むと一撃で仕留めることが出来た。

 フレイムゴーストを倒した事を確認してファナの方へ眼を向けると、魔纏を付加されたティアの矢が1匹のフレイムウルフの額を貫き、ファナの左アッパーが飛び掛かって来たのだろう別の1匹の喉を潰している。

 そのファナの体勢を隙だらけだと思ったのだろう最後の1匹が襲いかかるが、強力な気纏の付加されたファナの大剣が最後の1匹を一刀両断にした。

 ティア、ファナ共に怪我は無いようだし、試しに使ってみた気纏と魔纏の同時使用も実際に魔物へ打ち込んだ手応えから判断すると、擬似的な魔法武技として使えそうな感じなのでこれは鎧装纏とでも名付けておこう。

 倒した魔物の素材を回収して合流し、見事だったとティアとファナに伝えると、二人とも笑顔で返事をしてくれた。

 その笑顔を見て思わず抱きしめたくなるが、装備を着ているし今は戦闘中なのでグッと我慢し、その鬱憤を晴らす為次の魔物の群れへ向かった。


 続けて3つ程魔物の群れを狩り、足を止めて周囲の様子を確認する。

 迷宮への入口から魔物の群れが出てくるペースは、1分間に1つ群れ位が外へ出てくる位に落ち着いている。

 一方アトミランさんが指揮する部隊は40人以上に増えていで、恐らく俺達が通ったのと別の門から出た部隊も合流したんだろう。

 人が増えた所為かは分からないが、次々魔物の群れが寄って来ていて迷宮の入口には取り付けないでいた。

 他にも俺達のように遊撃として戦っている個別のパーティーもいるが、魔物の拡散を遅らせるだけで手一杯のようだ。

 確認した周囲の状況からどこへ手助けに行けばいいか考えていると、魔物と接敵せず迷宮の入口へ辿り着けるルートを見つけてしまった。

 正直あまり目立ちたくはないが、このまま消耗戦を続けているといずれこちらが押し負ける可能性があると思う。

 そうなって敗戦の責任を連帯で被せられるよりはましだと、自身へ言い聞かせて二人について来るよう指示し、迷宮入口へ3人で向かった。

 魔物の群れと当たる事無く入り口付近まで来ると足を止め、最大威力のウォーターボールを今並列使用できる限界の7個同時に作り出す。

 ティアにも同じような水の精霊術を限界の数まで並列発動させ、俺の魔術と併せて一斉に迷宮の入口へと撃ち込んだ。

 炸裂した水の魔術と精霊術の余波が入口から噴き出して水柱を作り、その勢いが弱まると同時に俺とファナで入口へ取りつく。

 ファナに魔物が出てこないか警戒して貰い、俺は一気に入口の扉を閉めてファナと一緒にティアが待機している場所まで戻った。

 魔物の群れが近づいてこないか警戒しながら2〜3分入口の様子を確認し、魔物は出てこないようなので一息つく。

 そのまま周囲を確認するとアトミランさんが良く通る声で追撃し殲滅せよと指揮下の人達を鼓舞しているので俺達も戦闘へ復帰した。


 迷宮の入口を早く閉じる事が出来た影響か戦闘その物も早く終結したが、その後の迷宮周辺の安全確認に時間が掛かった。

 迷宮周辺を虱潰しに探索する事になり、俺達も備蓄の携帯食で歩きながら昼食を取りつつ探索を続けた。

 夕方になりアトミランさん指揮下とギルド所属、両方の斥候達が最後の安全確認をしながら探索の終了を告げに来た。

 一度砦の方へ戻るようにという指示もつけ加えてあったので従うと、よくこの砦で顔を合わせるギルドの人に声を掛けられ、後日報酬と引き換えれるという参戦の証明書を貰った。

 ついでにミラルテの街までの伝令を頼まれてしまい、この人を連れてミラルテの街へ転移する。

 ギルドの訓練場に転移すると連れてきた人とその場で別れ、そのままギルドを出た。

 宿に戻り夕食を取って部屋で鎧だけ脱ぐと、半日以上森の中を走り回って気持ち悪いので、以前ここの女将にあるにはあるが使用料が高いと言われて行かなかった、銭湯のような浴場へ行ってみる事にした。

 教えて貰った場所へ行くと、管理をしている者に使用料は三人で900ヘルクだと言われる。

 確かに高いと感じるがギルドの指名依頼で儲けているので入る事にし、遠慮しているティアとファナを促して男湯と女湯に別れた。

 4,5日ぶりの風呂だったので長湯してしまい、待たせる事になったティアとファナに謝って宿へ引き上げる。

 部屋に戻ると鍵をかけ結界を張ると、暫くぶりにさっぱりしたので、そのままベッドで横になり二人を抱き寄せて眠りに落ちた。


お読み頂き有難う御座います。

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