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迷宮の底 6

 火と土の精霊武装を解除し剣はそのままで一息つき壁が動き終わるのを待つ。

 すると今倒したミスリルゴーレムさえすっぽり収まる規模の水晶が安置された部屋が壁の向うに現れた。

 仕掛けがある壁を鑑定して得ていた情報通り守護者を倒して部屋の瘴気濃度を下げた事で仕掛けが動いたようだ。

 一応繋がった部屋の中に魔物がいない事を確認して剣を鞘に納め、まずはミスリルゴーレムから出来た二つのミスリル塊の小山に手をつける事にした。

 上半身から出来た小山に近づき魔核石のポーチに仕舞って水晶のような物を手にとり取り敢えず鑑定してみた。


封魔法結晶


 どうやらこれは以前にも見た、人が作ろうとすると2桁や3桁の魔核石を錬成して作り出す帰還結晶のように魔術や法術を込めて何度も使えたり、魔道具の核に成ったりする物のようだ。

 その上これは込められる術の規模が大きく充填できるプラーナとマナもかなりの量になるようで何の術も込められていないのに10万ヘルク以上の価値があるようだ。

 術の込め方は分からないがそれは調べればいいし、出来る人に対価を払って頼んでもいいのだからこれは売らずに取っておく事にしよう。

 そう決めて封魔法結晶をポーチに仕舞い、ティアのポーチに下半身から出来たミスリル塊を仕舞うようティアとファナに指示して、俺は上半身からできたミスリル塊を自分のポーチに仕舞っていく。

 先に仕舞い終わったティアとファナの手も借りて俺のポーチにミスリル塊を仕舞い終わると、繋がった部屋へ行く事にした。


 開いた壁を潜り隣の部屋に入ると嫌でも巨大な結晶が目に付く。

 続いて部屋の中を見渡すと前に見た通り床に巨大な水晶と同じような質感をしている大小さまざまなサイズの岩が転がっていた。

 拳大の物からラグビーボールに近いサイズの物まで大きさは様々で一つ手に取って鑑定してみると前に見た通り封魔法結晶だった。

 床に落ちている同質感の物は皆封魔法結晶のようでギルドに何か言われるかとも思ったが取り敢えず全部俺のポーチの中に回収する事にした。

 ティアとファナにも手伝ってもらい封魔法結晶を集め終わると巨大な水晶に近づいてみる。

 間近で再度鑑定してみるとかつてこの中に魔物を封じこめ迷宮を作り今はこの迷宮を御している制御結晶と鑑定出来た。

 鑑定の情報では触っても害は無いと出ているので結晶に触れてみるとその部分がいきなり膨張を始めた。

 とっさに手を引き様子を見守っていると膨張した部分はラグビーボール大になると結晶の表面から剥がれてしまう。

 落としては不味いと空中で受け止め鑑定してみると封魔法結晶だった。

 この部屋の床に封魔法結晶が幾つも転がっていた理由がわかったので手の中にある物もポーチに仕舞い迷宮に手を加える気はないので巨大な結晶から離れた。


 念の為魔眼で下や最外周のさらに外を調べてみても何も見つからないのでここがこの迷宮の最下層なんだろう。

 そうなるとこの迷宮でこれ以上レベルを上げるのはかなり時間が掛かる事になりより早く強くなるには迷宮を移る必要があるだろう。

 一方ミスリルゴーレムを筆頭にこの迷宮では稼げる魔物をほどほどのリスクで狩る事も出来る。

 強さとお金はこの世界で自由に生きる為、共に重要なものだと思うが今の場合どちらを優先するべきだろうか?

 ランクDになり素性がばれない限り不意に徴兵されて自由を奪われる事は無くなったのだから徴兵の無いこの街から他の街への移動にそれほど気を使う必要は無いだろう。

 俺自身としては強さ優先でいいと思うがそれ程こだわりがある訳ではないのでここはティアやファナの希望も聞いてみるべきだろう。

 アルバン魔法薬店でするには少しはばかられる話だし、丁度魔物も出そうにないのでここで話し合う事にした。

 

 早速敷物を結晶から少し離れた場所に広げ、二人に座るよう促して今の話をするとまずファナが口を開いた。

「主様、わたしはより強い魔物が出る迷宮に移った方が良いと思う。」

「強さ優先って事だな?」

「そう、強くなれば自然とお金は貯まると思うから早く強くなる事優先で良いと思う。」

 分かったとファナに答えてティアの方に視線を向けて答えを促すとティアも口を開いた。

「わたしはドワーフの職人を探してみてはどうかと思います、セイジ様。」

「あの毛皮を防具にするのを優先って事?」

「それもありますが先程手に入れたミスリルからも精強な武具が出来ると聞きます。より良い装備は命を守るだけではなく、強さやお金にも繋がると思います。」

 なるほどとティアに答えて考えを纏めてみる。

 二人ともこの迷宮から離れて他へ移る事に異論は無さそうなのでこれは決まりでいいだろう。

 より深い迷宮へ向かう事と装備更新という二人の意見は良さそうなのでこれらも共に採用しよう。

 どちらを優先するかについては装備を優先した方が良いんだろうがそれもドワーフの職人が何処にいるかによる。

 これは確度の高い迷宮やドワーフの情報を得てから決めた方が良さそうだ。

 そう考えを纏めて下げていた顔を上げ二人に向きなおった。

「二人の考えは分かった。俺もより強い魔物が出る迷宮に移る事やドワーフの職人を探してみる事、共に異存はないから二つともやろう。ただどちらについても確かな情報を持って無いからまずミラルテのミルネ教会で情報を貰ってからどちらを優先するか決めよう。アルバンさんやジャンナさんには今夜俺から話すから明日この街を立とう。これからもよろしく頼む二人とも。」

 俺の考えを聞いて頷いてくれる二人に頷き返して全員立ち上がった。


 敷物をポーチに仕舞いカードで時間を確認してみるともう夕方だったので今日は俺の転移法術で地上へ戻る事にした。

 地上へ転移しギルドでミスリルゴーレム以外の素材を換金して貰う時、一応問題にならないか一番小さな封魔法結晶をポーチから取り出して受付嬢に結晶が安置されている部屋でこれを見つけたと話してみる。

 見つけた封魔法結晶を全部よこせと言われるかとも思ったがそんな事は無く制御結晶を動かすカギはギルドに保管してあるので持って行って構わないと教えてくれた。

 内心ホッとしていると今度は受付嬢の方から結晶がある部屋までの地図情報を提供してくれないかと頼まれてしまう。

 もう必要なくなるかもしれないがそれでも手間をかけて調べたものなので、俺の中では吹っかけて1層につき1万ヘルクと言うとあっさり快諾されてしまった。

 少し釈然としない気持ちになったが手分けをして俺達の地図の写しを作り、情報料の5万ヘルクと素材の換金分の1万ヘルク程を受け取り受付嬢に礼を言ってギルドを出た。


 アルバン魔法薬店に戻り離れで装備を脱いで店の方に顔を出すと、夕食の準備をしている所だった。

 丁度アルバンさんとジャンナさんがダイニングに出て来てくれていたので今日ダレンの迷宮の結晶のある部屋に着きより強くなるため迷宮を移る事にしてここを出ていくと話すとアルバンさんがただ分かったと頷いてくれた。

 俺が持ち込んだ馬は三人では使い辛いしファナとティアは乗馬出来ないので魔法薬と交換でアルバンさん達に引き取って貰う事にして免税のプレートを手渡した。

 アルバンさんとの話が纏まると横にいたジャンナさんが送別会をするよと宣言して宴会が始まる。

 大体食事を平らげた所で酔っ払ったジャンナさんが強引に勧めてくる酒を断りきれず飲み干していくと宴会の記憶が途中で途切れた。

 気がつくと朝になっており離れのベッドで毛布だけ被って裸のまま寝ており同じく裸のティアとファナを抱き寄せていた。

 ベッドと毛布の惨状や目を覚ましたティアとファナのどこかぎこちない表情を見て深酒は辞めようと誓い俺達三人を含む部屋の中全てを生活魔術で清浄化した。

 身だしなみを整え店の方で朝食を取った後はキャミーちゃんも加えて離れの片付けをする。

 キャミーちゃんが合格を出してくれ店の方へ戻ると出発の為装備を身につけて裏庭へ出た。

 待っていてくれたアルバンさんに離れの鍵を返し代わりに約束の魔法薬を受け取ってポーチに仕舞う。

 アルバンさんが差し出してくれる手を取って握手を交わし、ジャンナさん、キャミーちゃん、アゼル君に別れを告げてアルバン魔法薬店の裏庭から転移した。


お読み頂き有難う御座います。

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