迷宮の底 5
ファナに起こして貰い身支度を整えて店の方に顔を出す。
店のダイニングでアルバンさん達と朝食を取り、離れで装備を身につけてギルドに向かった。
ギルドに入るともう弛緩した雰囲気は無く、少し荒々しいが活気があるいつもに戻っていた。
そんな雰囲気の中、手すきの受付嬢に話かけ昨日狩った上位種の素材を証拠に11層へ下りる階段を見つけたと報告する。
受付嬢はカウンターの上に出した素材を確認すると待っていて欲しいと言って一礼をして事務所に入っていった。
暫く待たされるかと思ったが2〜3分すると銀の腕章をした4人の討伐者達と一緒に話かけた受付嬢が出て来た。
情報提供の報酬は実際に階段を確認してからだと出て来た討伐者の一人が説明してくれたので、受付嬢にカウンターに出した素材の換金の用意を頼んで早速迷宮へ向かった。
ギルドの討伐者達を連れて迷宮に入り螺旋階段に着くと下を目指す。
10層まで下りるとポーチから地図を取り出し、道順を確認してから隠し階段のある部屋への最短ルートを歩き始めた。
ルート上で遭遇するメタルベアーは俺達で倒して素材を回収し進んで行く。
隠し階段のある部屋に着き今日もアイアンゴーレムは出現しないのでさっさとポーチから満充填の帰還結晶を取り出す。
すると部屋の仕掛けが反応して隠し通路が現れ、同行していたギルドの討伐者達が驚きの声を上げた。
これで報酬を払ってくれるか問いかけてみると一応先を確認したいと言われギルドの討伐者達と連れだって通路に入り階段を下りていく。
11層に着き周囲を確認して自分たちで手近な魔物の群れを潰すとギルドの討伐者達は納得してくれ、転移法術で地上に戻るから一緒に来るかと聞かれたのでお願いした。
地上に転移しギルドに戻ると俺達に待っていてくれと言って討伐者達はカウンター奥の事務所に入っていった。
今度は10分ほど待つと先程対応してくれた受付嬢が事務所から出て来て報酬のお金を渡してくれる。
情報提供料の10万ヘルク白金貨に加え朝換金を頼んだ素材分の金貨に銀貨と銅貨がある事を確認してポーチに仕舞うと、情報更新の為カードの提出を要請される。
今回の報酬はすべてファナのカードに累積してくれるよう頼み受付嬢にファナのカードを渡すと快諾してくれる。
更新が終わると受付嬢はファナのランクがこれでFになったと言ってカードを返してくれた。
受付嬢から11層について何も言って来ないのでこちらから何か規制があるか聞いてみると11層への下り方を無闇に広めない以外特にないと肩透かしな答えが返ってくる。
もう一度迷宮に潜るには微妙な時間だったので受付嬢に礼を言ってギルドを後にした。
次の日の朝防具屋でメタルベアーの毛皮製の防具一式ティアとファナの分を受け取ってからは11層の探索を中心に迷宮へ潜った。
ファナの空間認識能力と嗅覚に聴覚が俺の予想より遥かによく、地図も無く俺の魔眼での補助なしでも迷う事は無かった。
出てくる魔物の群れも10層から上に出てくる魔物の上位種だったがレベル20を超える事は無かったので問題なく狩れた。
その上アルバン魔法薬店に帰ってからは俺が試しに書いてみて取得出来た地図作成スキルと併せてその日歩いた道を地図に起こしていき3日で11層の地図を仕上げる事が出来た。
ファナが慣れ俺のスキルレベルが上がったお蔭で12層から14層までは2日ずつでその階層の地図を仕上げていく事が出来、15層も中心部分を除いて1日で地図を仕上げる事が出来た。
地図作成スキルを取得した。
今日は自然に目覚めいつものように食事をし身支度を整えてアルバン魔法薬店を出る。
ギルドを素通りして迷宮に入り螺旋階段を使って1層から一気に10層まで下りた。
だいぶ密度は下がったがそれでも何回か遭遇するメタルベターを狩りながら10層を進んで行く。
4日前アイアンゴーレムが現れたので少し警戒して隠し階段のある部屋に入るが特に何も起こらない。なので淡々と仕掛けを作動させて11層に向かった。
11層に下りてからはファナと作った地図を見ながら下層への階段に向かう最短ルートを歩いて行く。
ルート上で遭遇するゴブリンやオークにウルフやアントなどの上位種の群れを3人で連携して手早く片付けて下層への階段を目指した。
昼休憩を途中に挟みながら11層から15層まで下り15層の未踏破部分に差し掛かった。
未踏破の区画に入るのでファナを先頭に少し慎重に進んで行く。
15層の地図の空白部分を埋めるように探索していき、最後に地図上や魔眼で見ても丁度中央にある大きな部屋の前についた。
瘴気探知スキルで部屋の中から守護者出現の前兆を感じる以上本来なら避けるべきだろうが、今日は魔眼で鑑定した通りになるか守護者を出現させて倒してみよう。
その為先頭をファナと替わって貰って部屋の中に入り、最後尾のティアに扉を閉めて貰うと部屋の中の瘴気が魔物を形作っていく。
現れた守護者はミスリルゴーレムでそれと分かった瞬間、9層でのボウガンを使う個体が頭を過ぎり慌てて鑑定した。
ミスリルゴーレム Lv21
筋力 246
体力 126
知性 21
精神 105
敏捷 21
感性 21
アビリティ
ミスリルボディ
剛力
スキル
3個
どうやらこの個体は恐らくボウガンを作れた理由のアビリティギミックボディを持っていないので、そこは少しホッとした。
だがその代り筋力を強化するアビリティと防御力を高めるスキルを持っているので油断は出来ないだろう。
鑑定が終わり頭部にコアを見つけそう気を引き締め直しているとミスリルゴーレムが体表に瘴気を纏い一歩踏み出した。
向こうとの間にまだ十分距離はあるがこちらも武器を構えティアとファナに指示を飛ばした。
「ティア、ファナの剣に火の精霊武装を掛け続けて後は精霊武技で攻撃してくれ。俺は正面を受け持つからファナは回り込んで隙を見つけて攻撃してくれ。回避防御優先で時間が掛かってもいいから安全第一でいくぞ。二人ともよろしく頼む。」
「任せて、主様。」
「セイジ様、十分お気を付け下さい。」
返事をしてくれる二人に頷き返すと、ファナはミスリルゴーレムを迂回するように駆け出しティアは火の精霊を呼び出した。
俺もダメ元で錬鎧装弾投槍を作り出しミスリルゴーレムの頭部にあるコア目掛けて撃ち出す。
ファナの横を追い抜いた錬鎧装弾投槍はミスリルゴーレムが盾としてかかげた腕を貫き頭部を捉えるが首をそらされた上体表の瘴気に抵抗されコアには当たらなかった。
続けて放たれたティアの矢もミスリルゴーレムの腕に防がれたので無理に遠距離からコアを狙うのは止め俺もゴーレムに向かって走り出した。
ファナを追おうとするミスリルゴーレムに真正面から飛び込んで行くと迎撃の為に瘴気を纏った拳が打ち下ろされてくる。
盾を土の精霊武装で強化し武技アーツ盾強打で瘴気を纏った拳と打ち合うと押し戻されてしまうがミスリルゴーレムの拳にもダメージを与え体勢を崩す事が出来た。
その隙を逃さず回り込んでいたファナが切り掛かり火精霊を纏った大剣がミスリルゴーレムの足に傷をつける。
だがミスリルゴ−レムもすぐさま腰を回転させ裏拳を放ち、ファナは慌てて距離を取って回避した。
ファナの方に顔を向けるミスリルゴーレムの頭部をティアが再び狙撃するが腕を盾にされ防がれてしまう。
だが鑑定してみると一連の攻撃でミスリルゴーレムの回復速度を上回るダメージを与えているようなのでコアの破壊に固執せずコアへの攻撃を囮にライフを削りきる事にした。
ティアの頭部への狙撃で体勢を崩し、俺とファナで挟み込んでミスリルゴーレムのライフを削っていく。
度重なるティアの狙撃で片方の腕が砕けた瞬間、ファナももう片方の腕を大剣で受け止め抑え込んでくれる。
その瞬間を逃さず火の精霊武装を俺自身で纏わせ魔術アーツ炎刃を追加した剣を両手で持ち、炎刃一閃をミスリルゴーレムの胴に放った。
赤い剣閃がミスリルゴーレムを上下に両断し上半身と下半身が別々に地面へ転がった。
地面に落ちたゴーレムの体が砕けて二つのミスリル塊の小山に替わり、その山の上に魔核石と拳大の水晶のような物が現れると部屋の壁の一部が音を立てて動き出した。
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