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湧き出した魔境 15

 脇腹の激痛を堪え何とか顔を上げてミスリルベアーを探すと奴も地面に倒れ伏していた。

 奴の生死は不明だが動きそうにないし、少し距離が開いたので治療をする時間は取れそうだ。

 発動していたアビリティを切って奴に視線を向けたままポーチからライフポーションを取り出す。

 傷の具合を確認する為脇腹に視線を移すと鎧の無い場所を狙われたようで服が破れ傷がむき出しになっていた。

 それでも出血は少ないように見えるのでポーションを半分傷にかけ、体を起こして残りを飲んでいるとティアが視界に飛び込んで来た。

「大丈夫ですか、セイジ様。」

 ティアの声は悲鳴に近く、目じりに涙も浮かべているので早く安心させるため一気にポーションをあおった。

「なんとかね、でもプラーナとマナが枯渇寸前だからティアが治癒法術をかけてくれるか?」

「分かりました、傷をお見せください。」

 俺の横にしゃがみ込んで傷に手を当てティアが治癒法術を使い始めてくれたので、ポーチからプラーナポーションの取り出し飲み始まる。

 プラーナポーションを飲んでいるとミスリルベアーが毛皮と魔核石に変わったのでほっとすると同時にレベルが上がった時の力が漲る感覚がした。

 

 マナポーションも飲み干した所で大勢の人の気配がしたのでそちらを振り向くとファナとゴッチさんを先頭に20人近くの討伐者がこちらに向かってきた。

 不安げな表情のファナが傍まで来てくれる。

「怪我は大丈夫?」

「もう大分いいよ。ライフポーションを飲んだしティアの治癒法術が効いてるから。」

「そう、よかった。」

「それならあとどれ位で君は戦闘が可能になるかな?」

 声のした方に視線を向けると不安げな表情が幾分和らいだファナの向こうにゴッチさんがいた。

 ティアとファナがゴッチさんに非難の視線を向けるのを手で押さえて答える。

「もう少し休んで治療すれば下級のオーク位となら問題なく戦えるようになりますよ。ただ今戦ったような大物とは暫く無理ですね。」

「そうか、治療が済み次第戦列に復帰してくれ。」

「了解ですが、周辺の掃討は殆ど済んでいるんじゃないですか?」

「本隊から新たな命令が来たんだ。周辺掃討の部隊を糾合してオークの群れへの包囲攻撃に加われと。遠目からだが君とあのメタルベアーの変異種との戦闘は見た。あれほどの魔物を仕留められる討伐者を休ませておける余裕が我々には無いんだ。無理を強いる事になるが治療を急いでくれ。」

 ゴッチさんはそれだけ言って援護に来てくれた人たちの声を掛けてここから去っていった。


 もう少し脇腹が痛むのでファナに周囲を警戒して貰いながらティアの治癒法術を受ける。

 ただ治療が終わるのを待っているのも時間の無駄なので魔眼で本隊の戦況を確認する事にした。

 主戦場に魔眼を向けると一進一退の攻防が続いているが前線を支える本隊の戦士の数が目に見えて減っているように感じる。

 こういう状況なら周辺の掃討部隊に本隊の援護をするよう命令が来るのも頷けた。

 脇腹に多少違和感が残るくらいまでティアに治癒法術をかけて貰いもう一度ティアと一緒にプラーナポーションとマナポーションを飲み干す。

 ミスリルベアーの魔核石と毛皮をポーチに仕舞い、ゴッチさんの匂いを追えるファナに先導して貰い合流する為出発した。

 

 魔眼で時折戦場の様子を確認しながら移動し、もうすぐゴッチさんの元につくという所で周辺掃討の部隊がオークの群れへの攻撃を開始した。

 後方から二手に分かれ周辺掃討部隊が仕掛けたのでオーク達も対応の為に分散し本隊に当たるオークの数が目に見えて減少した。

 この好機を逃さぬように本隊が戦線を維持しながら隊列を組み替えようとするのを確かめた所で丁度ゴッチさんの元に着いた。

 

 合流した俺達にゴッチさんはすぐ担当する場所を指示してくれたのでその場所に向かう。

 指示された場所ではオークナイトが指揮する30匹程の群れと掃討部隊の討伐者達が戦っていたのでそのまま参戦した。

 拮抗しているように見えた戦闘は俺達が参戦した事で討伐者側に傾き、何人かの怪我人が出たがオークの群れを全滅させる事が出来た。

 次の群れがこちらに向かって来るが接敵まで少し間がありそうなので本隊の様子を魔眼で確認してみると、10人程のパーティーがオークカーズロードの元に斬り込んでいた。

 どんな人達が斬り込んだのか鑑定しようとした時オークカーズロードが一際大きく吼え俺達の周りにも新たなオークが生成された。

 すぐさま迎撃に移りオークの数を減らしているとオークカーズロードがいた方から勝ち鬨が上がる。

 目の前にいたオークソルジャーを斬り伏せそちらに魔眼を向けてみると、7人に減った斬り込んだ人達の足元にオークカーズロードが瘴気を噴き出しながら倒れ伏していた。

 

 そこからは事態が一気に好転し、連携が悪くなり追加もされなくなったオーク達を各個撃破して行き、夕方までには瘴気泉周辺のオークを一掃し各自素材を回収して陣を張った場所まで後退して一夜を明かした。

 翌日シェイド辺境伯の私軍とダレン、ミラルテ両ギルド所属の討伐者の一部が瘴気泉を枯らす為の儀式魔法の為に残り、後は全部隊ダレンの街に撤収する事になった。

 ダメもとでゴッチさんに転移法術で先に帰還していいか打診してみると、逆にどうしても残って欲しいと頼まれてしまう。

 理由を聞いてみると被害が予想よりひどく緊急事態に備えて腕の立つ討伐者にはどうしても残って欲しいそうだ。

 ミスリルベアーの討伐に特別報酬を出してくれると確約もしてくれたのでこのまま隊に残って歩いて帰る事にした。


 瘴気泉を出発してからの2日間、小規模な魔物の群れの散発的な襲撃以外特に問題なく移動出来て、夕方ごろ空気の感じが魔境のものから通常のものに変わった。

 そこから1日魔物の襲撃さえなくなり夕方ごろダレンの街に着く事が出来た。

 門を潜りダレンの街の中に入ると部隊は解散となり、オーク討伐の参加証とゴッチさんの口利きでミスリルベアーの討伐証を受け取ってその場を後にした。

 どこにも寄らずそのままアルバン魔法薬店まで帰って来ると、アルバンさん達が総出で出迎えてくれた。

 無事の帰還を祝福してくれ、離れで装備を脱ぐとささやかな宴会になった。

 宴会はアゼル君が眠るまで続き、お開きになって離れに戻ると緊張の糸が切れてしまい生活魔術で身を清めただけでティアに手を出す事無くベッドに沈んだ。


お読み頂き有難う御座います。

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