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湧き出した魔境 12

 最後のオークを斬り倒し装備を剣帯に納めて、すぐに怪我をした里の人達の治療に治癒法術を使いたかったがプラーナとマナの消費が激しかったので死蔵していたプラーナポーションとマナポーションを使う事にした。

 丁度2本とも飲み干した所でティアとファナが近くに来てくれたのでティアにはプラーナとマナを俺と同じように回復して治癒法術を使うように指示し、ファナには手持ちのライフポーションを全て渡し遠慮なく使うよう指示した。

 二人が頷いて離れると俺も万象の鑑定眼で容態を確認しながら治療は致命傷を治すくらいの最低限に留め、その代り数をこなす事を重視して治癒法術を使っていった。

 

 ポーションで回復した分のプラーナとマナを使い切りもう少しで枯渇しそうな所で何とか応急処置が終わりティアとファナも一緒に壊された塀の近くで見張りがてら休んでいると、一人共を連れたテーベイさんがやって来た。

「セイジ殿、此度の里への助勢に加え怪我人の治療に魔法薬の提供、本当に感謝する。」

「気にしなくて良いですよ、大した事は出来ませんでしたから。」

「そんな事は無い。セイジ殿達がいち早く群れのリーダー格とその取り巻きを排除してくれていなかったら、被害はさらに酷くなっていた筈だ。この状況では暫く無理だが、必ず礼をさせて貰う。」

 如何答えるべきか悩んでいると、ファナの耳がピクリと動き急に俺を見上げてくる。

「セイジ、何か近づいてくる。」

 ファナのその言葉に動けるものは一斉に武器へ手を伸ばすが、木立の向こうに見え隠れするものが人影だと分かると多少は警戒が緩み、近づいて来た人達がダレンのギルドからの救援だと告げられると安堵が広がり、念の為魔眼で確認すると間違いなかった。

 

 ギルドからの救援部隊には戦闘役の人だけじゃなくて、回復役の人もいるようで最低限の手当てしか出来ていなかった人達にも手厚い治療が加えられていく。

 戦闘の終了に間に合わなかったとはいえ、どうしてこんなに早くギルドから救援部隊が来たのか分かるかと思いテーベイさんとギルドの責任者さんとの会話を聞き耳スキルで拾っていると大体の事情が理解できた。

 そもそも里にオークの群れの襲撃を警告したのが件の瘴気泉から別れたこの群れを監視していたギルドの討伐者そうで警告後すぐさまダレンの街に向かったそうだから、救援が早いのにも納得がいった。

 

 ギルドからの応援もありもう里の事は大丈夫そうなので倒したオークの素材を回収させて貰う事にする。

 ティアとファナには里で手伝いをするように告げ、何かの足しになるかもしれないので里周辺の素材には手を付けずオークカーズナイトを倒した周辺の素材を回収していると、オークカーズナイトを倒した場所に魔核石と1本の大剣が落ちていたので大剣の方を鑑定してみた。


鋼鉄の大剣

付与 筋力増幅


 大剣は使った事は無いが今の剣が壊れた時の予備に良さそうでこれもポーチに仕舞っていると後ろから声を掛けられた。

「少し話をしていいか?」

「はい?ああ、ゴッチさんですか、脅かさないで下さいよ。」

「いや、悪い、ただ里の人達に襲撃してきたオークの群れのリーダー格はセイジ達だけで倒したって聞いてな。確認したかったんだ。間違いないんだな?」

「ええ、オークカーズナイトとその取り巻きを倒したのは俺達で間違いありません。」

「そうか、ならダレンのギルドとして正式に要請する。今回のオーク討伐に参加してほしい。もし断るならギルドから何らかの処罰があると思ってくれ。」

「・・・返事をする前に質問をしてもいいですか?」

「ああ、分かる事なら何でも話そう。」

「それなら遠慮なく聞かせて貰います。今の要請は俺達にオーク討伐の先陣に立てって事ですか?」

「いや、オーク討伐の先陣には保有する戦力や顔を立てる意味も込めてシェイド辺境伯の私軍が立つ事になっている。その両脇をダレン、ミラルテの両ギルド所属の討伐者を中心に二つの街の有力者小飼の討伐者を集めた部隊が固めてオークの群れに挑み、呼び集めたフリーの討伐者パーティーで戦場周辺の魔物を狩って討伐の邪魔をさせないという作戦になっている。君達の場合は瘴気泉を発見し群れの幹部級個体を仕留めている事を踏まえると手柄を偏らせないという配慮から、十中八九戦場周辺の魔物掃討に回って貰う事になると思う。」

「いてもいなくても大差ない場所に配属されるだろう討伐者を、どうして処罰までちらつかせて参加させたいんですか?」

「確かにこちらの思惑通り討伐が進めば君達の出番は戦場周辺で魔物の群れを数個仕留める位で終わるだろう。だが戦場では何が起こるか分からない。魔境の中での魔物を相手なら特にそうだ。だから腕の立つ討伐者には不測の事態への保険の為に無理を言う事になっても出来るだけ討伐に参加して貰っているんだ。」

「なるほど、そういう事ですか。余程の事が無い限り楽な役回りで断れば処罰があるんなら参加しない訳にはいきませんね。」

「了承してくれて有り難う。出来るだけ早くダレンのギルドで討伐参加の手続きをしてくれ。」

「急げって事はもう討伐の準備が終わったんですか?」

「いやまだだ、だが援軍の先触れがもうダレンの街に着いていて、明日中には本隊も全て到着する予定だ。休息や編成の時間を考えると4日後か5日後にダレンの街から討伐隊が出発する事になると思う。討伐への参加手続きをした後はダレンの街で待機していて欲しい。」

「分かりました。まだこの里に済んでない用事があるのでそれを済ませたらダレンの街に戻る事にします。」

 頷いてくれるゴッチさんの前を辞して、里の方に向かう。

 今日持ってきた物資の事もあるがオーク討伐後は迷宮に魔物狩りの場所を移すつもりなのでファナの事も話す必要がある。

 その為テーベイさんを探していると、丁度ギルドに責任者との話し合いが終わった所のようなので近づいて話掛けた。

「テーベイさん、今少し時間を貰っていいですか?」

「セイジ殿か、構わないどの様な用件だろうか?」

「今日持ってきた物資の件とファナ嬢の事です。」

「今回も物資を持って来てくれていたか、この状況だとなお有り難い。物資を出す場所はすぐ作らせるがファナの事とはどういう事だろう?娘が何か粗相をしただろうか?」

「いえ、そうじゃありません。実はさっきギルドの人にオーク討伐への参加を要請されてそれを受けました。討伐の後は解放されると思う迷宮に魔物狩りの場所を移そうと思っているのでファナ嬢の身柄をお返ししようと思うんです。」

「なるほど、・・・そういう事ならオーク討伐が終わるまではファナを預かってくれないだろうか?」

「ギルドの人の話だと俺に危険な役回りは回ってこないだろうという話でしたが、何が起こるか分かりません。そういう場所に連れていく事になりますよ?」

「里がこの状況ではオーク討伐に人手を出す事は出来ないが、それでも討伐の結果を里の者に見届けさせたしファナも否とは言わないだろう。ファナが足手まといになるかもしれないが頼めないだろうか?」

「そういう事ならオーク討伐の終了までファナ嬢はお預かりします。討伐が終了しダレンの街に帰還したらこの里までファナを送りに来ますから。」

「こちらの意向を組んでくれて感謝する。それとファナの事をよろしく頼む。」

「分かりました。それじゃあ持ってきた物資を渡しますので出す場所の指示してください。」

 テーベイさんがすぐに周りにいた里の獣人達に指示を出して物資を出す場所を作ってくれたので、俺のポーチに仕舞っていた物資をその場所に出した。

 

 テーベイさんとは話したが付いたがファナの意思を確認しておきたいのでファナの元に向かって声を掛けた。

「ファナ、俺はこれからティアを連れてダレンに戻ってオークの討伐部隊に参加する事にしたが、ファナはどうする?里に残るか?」

「わたしはオーク達の最後を見届けたい。出来たら連れて行って欲しい。」

「分かった。俺はティアを探して来るからファナも手伝いを他の人に引き継いで合流してくれ。3人揃ったら転移法術でダレンの街へ移動する。」

 頷いてくれるファナを残して魔眼でティアを探してみるとすぐに見つかったのでそこに向かう。

 ティアに討伐参加への手続きの為ダレンへ帰る事を告げ手伝いの引き継ぎを待っているとファナが合流してくれた。

 ティアの手伝いの終わりを待って二人を連れ転移法術でダレンの街に帰還した。



お読み頂き有難う御座います。

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