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始まりの日 4

 開いている門から大通りを見通せる位置まで歩いてくると、確かに門を出て1分も歩けば付きそうな場所に扉のマークが彫られた看板を掲げる三回建ての石造りの建物が見えた。

 大通りの両脇にある料理の屋台の前やこちらに歩いてくる武装をした幾つかの集団とすれ違いながら迷宮ギルドだと思われる建物に歩いていく。

 着いた建物の扉は両開きだったので押し開いて中に入った。


 中に入って目にした建物内の様子は、正面の幾つかの受付カウンターに人が待機していて、此方から見て左の壁には掲示板に幾つもの紙が張り出されている。

 右手の奥は食堂か酒場のようで何組か食事をしていて、その奥に上への階段とさらに奥への廊下があった。

 左手の掲示板に張られた紙を見てみると、何かの採取や討伐に街道の護衛といった依頼が見た事無いはずの文字で書かれていて、しかしそれを読むことが出来た。

 少し練習すれば書く事も出来ると思う。

 読み書きの習得は必須だろうからそれを少ない労力で身に着けられそうなのは朗報だ。

 視線を正面に戻し、受付には美男子と美女が居たので迷わず美女の前に進んだ。一応この女性も鑑定してみる。


アレイネ なし


 名前以外の情報がないのはあの石に触っていない純粋な事務要員だからだろう。

「迷宮ギルドコリレス支部にようこそ、どのような御用件でしょうか?」

「登録と初心者への訓練を受けたいんですけど。」

「分かりました。まず覚醒石の事はご存知ですか?」

「クラスやBPをくれる石には昨日ゼス教団で触らせて貰いましたけど、それの事ですか?」

「その石の事です。なら覚醒石の事は飛ばして登録についてから説明させて貰いますね。」

「お願いします。」

「わかりました。登録にはまずお名前とご自身の血をギルドライセンスカード、以降はただカードと言わせて貰いますがそれに登録してもらいます。後登録料として5000ヘルクをギルドに借金して頂きます。」

「この場で5000ヘルク払って借金は無し、それではダメなんですか?」

「はい、借金はして頂きます。この借金は迷宮で手に入れた物品の当ギルドへの売却代金もしくはギルドからの依頼の成功報酬でのみ返済可能になります。返済期間はありませんが三か月返済が滞る場合はギルドの借金奴隷になって頂きます。」

 具体的に迷宮からどんな物が手に入るか誰からも聞いていないが、ここではスルーして後で調べるか教団の騎士にでも聞こう。

「どうしてそんな決まりがあるんですか?」

「それはカードの取得のみを目的とした登録を排除する為ですね。カードはこの大陸にある殆どの国で身分証として通用しますし、国やギルドが管理する迷宮への入場許可証でもあります。ギルドへの預金残高の証明書でもあり、迷宮内でカードを持つ者に襲われた時に相手のカード情報を記録し変色させる機能もありますから。当ギルドは迷宮内で魔物を倒すことを第一義としています。魔物と戦わずカードの恩恵だけ受けようと人材は必要としていないので」

「なるほど、カードにそれほどの機能が在るなら、納得ですね。」

「では先ほどの条件で当ギルドに登録なさいますか?」

「お願いします。」

 俺の返事に頷いて暫く待ってほしいと言うとアレイネさんは目隠しをしている受付の奥に引っ込んだ。

 しばらく待つと黒いプレートを持って戻ってきた。

「こちらがお渡しするカードになります。まずカードに登録するお名前を聞かせてください。カードは身分証にもなるので偽名は避けた方がいいですよ。」

「セイジでお願いします。自署が要りますか?」

「魔道具で書き込むので必要ありませんよ。」

 そう言いながら続けていたプテートへの作業が終わるとアレイネさんはプレートとナイフを差し出してきた。

「では少しでいいのでプレートに血を付けてください。」

 受け取ったプレートをカウンターの上に置き、ナイフで左手に傷をつけプレートに血を落とすと、その血はプレートに吸い込まれるように消えた。

 これで良いのかとアレイネさんの方を向くと小さな瓶を持っていた。

「登録はそれでお仕舞いです。カードを紛失した場合の再発行は10000ヘルクになりますので気を付けてください。もう少し説明するのでカードは出したままにしてください。後これは魔法薬です。傷を治すので手を出してください。」

 ナイフを返し左手を出すとアレイネさんは傷口に瓶の中身を数滴落とす。

 水滴が傷口に吸い込まれるように無くなり傷跡なく元通りになった。

「カードについて説明するので手に持って字が書いてある方を見てください。文字はお読みになれますか?」

「読むだけなら何とか。」

「分かりました。では上から名前、セイジ、次にクラス、戦士、それから−5000ヘルクに90という数字、最後にランクGとなっているのはお分かりになりますね。」

「何とか分かります。」

「では説明を、一番上は登録して頂いた名前ですね。次のクラスは今セイジさんが設定しているクラスが表示されます。先ほどカードに付けて頂いた血でセイジさんと繋がりが出来ているのでクラスを変更してもそれに合わせて表示が変わります。先の事になると思いますが二番目以降に設定したクラスは表示出来ません。予めご理解ください。」

 俺の場合は直ぐに二番目以降を設定出るかもしれないので返って都合がいいかもしれない。

「クラス表示の下にある−5000ヘルクと90という数字は先ほど話した借金の額と少しでも返済しなければ奴隷になるまでの日数です。借金を完済していただくと0になり、さらに預金をして頂けたならここに残高が表示されます。」

 奴隷にされるのは勘弁して欲しいのでさっさとこれも返済しよう。

「最後のランクGは当ギルドのセイジさんへの能力評価になります。上からS、A、B、C、D、E、F、Gの八ランクあり、迷宮で手に入れた物品の売却額と依頼達成により支払われた報酬の合計が基準に達すると上がりますが、Dから上は合わせて試験に合格する必要があります。ランクが上がるほど当ギルドからの優遇措置が増えるので頑張ってください。ここまでで何かご質問はありますか?」

「一つだけあります。迷宮でカードを持つ者に襲われたら具体的にどうなるんですか?」

「お互いのカードの裏に同じ模様が浮かび上がり襲った方のカードが赤く変色します。まだ質問はありますか?」

「いえ、もうありません。」

「分かりました。もし疑問に思う事が出来たら気軽に職員へ相談してください。登録に関しては以上になります。次は初心者訓練でしたね。セイジさんから見て右手にある酒場の奥に通路が在りますよね。そこに上への階段とさらに奥への通路が在って奥への通路を進むと訓練場が在ります。そこに居る銀の腕章をつけた者はギルド職員であり同時に腕利きの討伐者でもあります。身に着けている装備で得意としている武器は分かると思うのでセイジさんが鍛えてほしいと思う人に訓練を頼んでみてください。頑張ってくださいね。」

 俺が頷くとアレイネさんは微笑んでくれた。

 カードを金が入れてある袋に入れて剣帯に固定し、単純だとは思うがお蔭で気分よく訓練場に向かう事が出来た。


お読み頂き有難う御座います。

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