湧き出した魔境 9
「三人共無事に帰ってきたようだね。」
声がした方に振り向くと、前回と同じように転移出現の前兆を感じ取ってかジャンナさんは迎えの為に裏庭へ出ていてくれたようで後ろにはキャミーちゃんにアゼル君もいる。
「何とか、ですけどね。」
「皆怪我なく戻ってこれてるんだから十分じゃないか、夕食の用意をするから離れで装備を脱いで店の方に食べにきな。」
「待って下さい、ジャンナさん。今転移で逃げ帰って来る前に見た物をすぐにギルドへ報告に行こうと思います。ですから夕食はもう少し後にして下さい。」
「セイジ、あんたが逃げ帰るなんて言うほどのものを見たんだね?」
「そうです。」
「そういう事なら仕方ないね。夕食の用意はしておくから寄り道せずに早く帰ってきて、あたしにもその話を聞かせておくれよ。」
「分かりました。二人とも行こう。」
頷き返してくれるティアとファナを連れ魔術で灯りを作って、大分暗くなった大通りに出た。
大通りを歩きながらギルドへの報告を考える。
基本見たままを話せば問題ないだろうが、もし追尾捕捉用の魔術を使ったという所を下手に突っ込まれると魔眼の事を隠す為オークを追尾した手段を黙秘する事になって、ギルドに情報の慎重性に疑問を待たれるかもしれない。
そうならないようもう一つくらい追跡手段を偽装しておこう。
「ファナ、これから今日見た事をギルドに報告するんだけど、ギルドには俺の追尾捕捉用の魔術の事を秘密にしたいんだ。だから逃げたオークの追跡はオークに特殊な匂いを付けてその匂いをファナの鼻で追いかけたって事にしてくれないか?」
「構わない。実際今セイジが言った方法は里での狩りの方法の一つだし、もし頼まれてたら絶対上手くやり切れた。」
「ありがと、ファナ、じゃあオークはファナの嗅覚で追いかけたって事で話を合わせてくれ。」
「分かった。」
話が纏まった所で丁度ギルドが見えて来たのでそのまま中に入る。
ギルド内では既に討伐者達が酒盛りを始めていてた。
受付カウンターの方に目を移すと一人だけだが受付嬢が待機していてくれたので声を掛けた。
「今対応してくれますか?」
「はい大丈夫ですよ。」
「実は魔境で大変なものを見付けたので報告に来たんです。」
「大変なものですか?一応記録を取りながらお聞きしますので少しお待ちください。」
受付嬢が紙とペンを手元に用意したのを見て話始めた。
オークの行動に疑問を持ったとこらから始め、逃げるオークを追う手段については先ほどの話に置き換え、追いかけた先で瘴気泉と思しき場所とそこに陣取るかなりの上位個体を含むオークの大群を見付けた事を順に話した。
「話を確認させてください。あなた方は魔境でのオークの行動に疑問を持ち、逃げるオークをそこの獣人の女性の嗅覚で追跡して瘴気泉らしき場所とそこに陣取るかなりの規模のオークの群れを見付けた。これで間違いないですか?」
「間違いありません。」
「事実なら大変な事態なので確認の為、当ギルド所属の討伐者をあなた達が瘴気泉とオークの群れを発見した場所へ案内してください。」
「ファナ、もう一度あの場所に誘導出来るか?」
「問題ない。」
「分かった。それじゃあ、案内するのは構いませんけど、どれ位の報酬を支払ってくれるんですか?」
「あなた方に瘴気泉発見の報酬を払う為の確認作業という扱いになるので報酬はお支払出来ないと思います。」
「それなら仕方ないですね、ならそちら所属の討伐者を案内して確認が取れたら瘴気泉発見の報酬を払って頂けるんですね。」
「申し訳ありませんが、街の評議会との取り決めで強制呼集の報酬は素材の割増での買取り以外は実際に魔境が減衰したのを確認してからお支払するという事になっているので恐らくオークの群れを排除した後になると思います。」
「瘴気泉発見の報酬を払うつもりが無いって訳じゃ無いんですね?」
「そのような事は決してありません。」
「取り敢えずは信じる事にします。案内する討伐者は何時頃集まりますか?」
「魔道具で招集をかけ今夜中に集めますので、明日目的地まで遠征する準備を整えてギルドまでお越しください。」
「明日ですね、分かりました。後瘴気泉とオーク達を見付けるまでに狩った魔物の素材があるんでそれを換金して貰えますか。」
「代金の計算しますので魔物の素材をカウンターの上にお出しください。」
ポーチの中から素材を出して換金して貰い、お辞儀を返してくれる受付嬢の前を辞してそのままギルドも出る。
もう一度魔術で灯りを作って帰りアルバン魔法薬店に着くと先に離れに入って装備を脱いだ。
身軽になってから店の方に顔を出すとジャンナさんとキャミーちゃんが夕食の準備を終えアルバンさんも待っていてくれた。
「帰ってきたようだね。三人共腹が減ってるだろう?先に夕食をお食べ。で食べ終わったらギルドに話した事を私達にも聞かせておくれ。」
「じゃあ、先に頂きます。」
三人で食事をし食べ終わった後でギルドへしたのと同じ話をアルバンさんとジャンナさんに話した。
「瘴気泉とそこに陣取るオークの大群かい、大変な事になったね。ギルドが把握したって事はすぐに町中にこの話が広がるだろうから、また混乱が起きないか心配だね。」
「今の話に関連して、俺達は明日からギルドの討伐者をオーク達が陣取る瘴気泉に連れていく事になったのでまた3日以上魔境へ遠征に出る事になると思います。」
「そうかい、3人共怪我なく無事に帰って来るんだよ。」
「心配してくれて有難う御座います。ジャンナさん。きちんと気を付けますよ。」
その後しばらくジャンナさん達と雑談をして離れに引き上げた。
残しておいた魔核石でティアと風呂に入り、数日ぶりの上また後数日出来そうにないのでつい猛ってしまい、空になるまでティアに溺れさせて貰ってから一緒に眠った。
お読み頂き有難う御座います。




