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湧き出した魔境 7

 門衛に挨拶をして獣人の里に入り借家に戻らずそのままテーベイさんの家に向かう。

 もう夕方だったが話をしたいと訪ねた俺達を快く家の中に入れてくれ、先日通された部屋でテーベイさんと向かい合った。

「急な訪問に答えて頂き有難う御座います、テーベイさん。」

「何、魔物の肉を里に納めてくれている討伐者の訪問にきちんと対応するのは当たり前の事だ。話の用件は薬草や物資運搬の件だろうか?」

「その通りですが他にも在って、実は、複数日掛けて魔境に入って調べたい事を見付けたのでその準備のために一旦ダレンの街に戻ろうと思います。なのでアルバン魔法薬店に運ぶ薬草を預かり、物資運搬の件がどうなったか伺いに来ました。」

「なるほど、まず薬草の件だが今は管理担当者の元にもう集めてある。ファナが担当者を知っているので出発前に訪ねて受け取ってくれ。次に物資の件だな。急な話だったが何とか要望品のリストを作ったので私が管理している里の金にアルバン殿達への薬草の売却代金を上乗せした金で出来るだけ買い集めて持って来て欲しい。頼めるだろうか?」

「薬草の件は問題ありません。ただ物資の方はアルバンさんやジャンナさんに頼んだり紹介して貰ったりして集める事になると思います。それで良いですか?」

「アルバン殿やジャンナ殿に仲介して貰う事に異論はない。返ってその方が有り難いくらいだ。」

「分かりました。アルバンさんとジャンナさんに仲介を頼んでみます。それでは要望品のリストを頂けますか?」

「リストを渡す事は出来るが、もしかしてすぐにダレンの街に戻るつもりか?夜の魔境移動は危険すぎないか?」

「黙っていて申し訳足ませんが俺達は転移法術が使えます。まだ周囲の瘴気が濃い場所を転移先に選べないのでこの里へは転移で移動出来ないんですが、ダレンの街の中へは問題なく転移出来ます。先日もダレンの街にはそうやって戻りましたから問題は無いと思います。」

「なるほど、それならダレンの街への移動に危険は無いだろうが、それでも出発は明日の朝まで待って欲しい。薬草の件や物資輸送の件にきちんと話が付いてからと思ってまだジャンナ殿達への礼状を認めていない。あしたの朝までには要望品のリストと共に用意を済ませておくのでそれまで待って欲しい。」

「そういう事なら仕方ないですね。あしたの朝ファナにこの家へ使いを頼みますから、その時にお金や礼状などの必要なのを渡してください。」

「分かった。明日の朝までに準備を済ませておこう。それと報酬については物資の輸送後に相談するという事で良いだろうか?」

「ファナを預けてくれているだけでこちらとしては十分なんですが、分かりました。では薬草を預かりに行こうと思いますので、これで失礼します。」

「よろしく頼む」

 

 テーベイさんの部屋を辞してそのまま家も出るともう辺りが暗くなりかけていたので、手分けをした方が良さそうだ。

「ティア、もうすぐ暗くなるから先に借家に帰って夕食の準備をしておいてくれ。俺とファナは薬草を受け取った後、ファナの取り分の魔物の肉を加工場に持って行ってから帰るよ。」

「お任せください、セイジ様。」

 ティアとテーベイさんの家の前で別れ、用事を済ませて借家に戻るとティアは夕食の準備を終わらせて待っていてくれた。

 三人で夕食を食べ片付けた後は、生活魔術で身を清め結界を展開してさっさと眠った。


 毛布の中で目が覚めてみると珍しくティア達より先に起きれたようで、ティアはまだ俺の左腕の中にいてファナもその向うまだ眠っているようだ。

 ティアの感触を楽しみながら二度寝したい誘惑に駆られるが、今日はやる事が多いし周囲も明るくなり始めているので二人も起こす事にした。

 二人の名前を呼ぶとティアは飛び起きてくれ、ファナもゆっくりとだが毛布の中から出て来てくれる。

「二人ともおはよう。俺とティアは朝食やダレンの街に向かう準備をしよう。ファナはその間にテーベイさんの所に行って、ジャンナさんに渡すものを預かって来てくれ。」

 二人は頷いてくれ、ファナが着替え始めたので寝室を慌てて出た。

 魔術で水を補充してポーチに荷物を仕舞いティアの料理の様子を見ていると、出来上がる直前に荷物を持ってファナが帰ってきた。

 三人で朝食を食べて片付けた後、魔境を移動する訳では無いが一応武器だけ身に着け荷物を持って借家を出た。

 もう隠す必要は無いので借家の前に三人集まって転移法術を発動させる。

 

 一人増えた事で転移の負荷が如何増えるか心配だったが大した事は無く、無事アルバン魔法薬店の裏庭に転移出来き、転移終了後辺りを確認するとジャンナさんが店から出て待っていてくれたようだ。

「転移出現の前兆を感じたからもしやと思って見に来たけど、やっぱりあんた達だったねセイジ。」

「出迎えてくれて有り難う御座います、ジャンナさん。早速で悪いんですけど今時間を作って貰えますか?」

「朝食は済んでるしその片付けも終わってるから大丈夫だよ。」

「じゃあ、まず紹介させて下さい。ジャンナさんは知っているかもしれませんが、この子はファナといって魔境化している森の案内役兼索敵役として臨時にパーティーに参加して貰っています。他にテーベイさんからジャンナさん達への手紙を預かっているので受け取って貰えますか?」

「その子の事は覚えているよ。確かテーベイさんの娘の一人だね。それと手紙については店の中で読ませて貰おうかね。」

 そう言って歩き出すジャンナさんについて店の中に入り、ダイニングでファナが手紙を渡すとジャンナさんはすぐに封を切って読み始めたので読み終わるまで座って待たせて貰う事にした。

 椅子に座るとすぐにキャミーちゃんがお茶を持って来てくれ、それを飲み干す前にジャンナさんは手紙を読み終え口を開いた。

「薬草の買取を持ちかけたのは此方の方だし、物資の買い付けの仲介も問題ないよ。要望品も何時でもこの街で揃えられるものだしね。それでセイジ達の予定は如何なっているんだい?」

「ダレンの街で物資を補給したら数日掛けての魔境探索をするつもりですけど、急ぎませんから物資が集まるまで待ちますよ。」

「セイジ達に必要な物っていったら魔法薬の追加に食料やティアの矢の補充っていった所だね。丁度いいからセイジ達も買い付けについておいで、買った物をそのままポーチに仕舞えば手間がかからないし、要望品の中には食料と矢もあったからね、ついでにあんた達の分も確保すればいいよ。」

「それなら、預かっている薬草を全部出した後、ここ数日で狩った魔物の素材を全部俺のポーチの方に移してティアと先に買い付けに行ってください。俺はギルドで素材を換金してから合流しますよ。」

「確かにその方が合理的だし訪ねる店も教えるけどね、ちゃんと合流できるのかい?たぶんティアのポーチだけじゃ全部収めきれないよ?」

「大丈夫ですよ、ちゃんと合流できますから。」

「そうかい、なら早速薬草を出しておくれ。もたもたしてたら今日中に買い付けを終わらせる事が出来ないよ。」

 ジャンナさんに急かされて薬草を全部出して、魔物の素材を俺のポーチの方に入れ替える。

 

 訪れる予定の店を順に教えて貰い、念のためティアに永続の捕捉眼の目標設定をして一緒に店を出る。

 俺はギルドに向かい、ジャンナさんはティアとファナを連れて最初の店に向かった。

 訪れたギルドは朝方のおかげか空いていてすぐに素材を換金してくれた。

 思いの外素材の換金が早く済んだので教えて貰った順番が最初の方の店を魔眼で確認してみるがジャンナさん達の姿を見付けられず、仕方なく捕捉眼も加えて探してみると教えて貰った店の二軒隣の店でジャンナさん達を見付けた。

 思わず苦笑いがこぼれたがジャンナさんに合流し屋台で昼食を取りながら夕方までかかって獣人の里に持っていく物資を揃えた。

 買い付けを終えて店に戻るとキャミーちゃんが作ってくれた夕食をみんな一緒に食べた。ティアとファナが夕食の後片付けを手伝い終わると三人で離れに引きあげ、残しておいた魔核石で順番に風呂に入った。

 ファナには空いている寝室の一つを使ってもらい、数日ぶりにティアを抱いて眠った。


お読み頂き有難う御座います。

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